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泥夢
 美杉さんが以前勤めていた職場は、スポーツ施設や温泉ホテルなどの設計や調査などをしていた会社だった。
「…そんな理由で、利用直前に先方へ連絡を入れておくと、施設を無料で使用出来たり、割引特典があったりして、いろいろ重宝していたんですよ」
 彼女の仕事はあくまで事務オンリーであったが、そうして素人目から使用した施設の良かった部分、使いづらかった部分などの感想を聞くことで、施設の利用データーに反映出来るからと、いろいろ便宜を図って貰えたのである。
 そんな美杉さんがその年の冬に出掛けたのは、彼女の上司が設計を手掛けた、あるスキー場。
 長さ3キロを越えるという、長大なゲレンデが目玉となっている場所だった。
「本当なら、併設された宿泊施設なんかも割引優遇されるんだけど」
 仕事が忙しいご主人は彼女と違って、土、日の連休を取ることなど滅多に出来ない。
従って、スキー場の利用は、早朝出発の日帰りがほとんどだった。
シーズンには高速の渋滞がお約束なので、真夜中の三時に起き出し、四時に出発。
 道路が混まなければ、午前六時か七時にはスキー場に到着する。
 そうしてリフトのチケット売り場がオープンする午前八時あたりまで、スキー場併設の駐車場に車を止め、車内で取りあえずの仮眠を取る。
 このときもセオリー通り、駐車場に車を乗り入れると、運転してきたご主人とともに、座席を思い切り倒して、オープンまでの二時間をいつも通り仮眠に費やした。

 夢の中で、彼女は畦道を歩いていたという。
 正確には、畦道らしき場所。
 あたりの風景は茶色一色。
 道も、田も、周囲の高台も、全てが泥で覆われているのである。
 なぜ自分がこんな場所にいるのか、美杉さんには、まったく判らなかった。
(助けて、助けて!)
 か細い声に我に返ると、畦道のすぐ真下で、下半身汚泥に埋まった女が、道端の雑草に掴まって、必死に助けを求めている。
 慌てて側に駆け寄り、手を伸ばす。
 白とピンクの鮮やかなスキーウェアが、茶色い泥に塗れた。
 そのとき変だなと思ったのは、泥に塗れた女の髪の結い方や着物が、どこか古臭い。
 明治とか大正とか、そんなイメージだったという。
(どうしたの?これは一体、何があったっていうの?)
 美杉さんは渾身の力を込めて泥塗れの腕を引いたが、女の姿はずぶずぶと泥の中へ沈んで行く。
(子供が、子供たちが…!!)
 絡みあった指と指が解け、汚泥に沈む直前、女は断末魔の悲鳴を上げた。

 強い衝撃に彼女が目を覚ますと、運転席でご主人が険しい顔をしていた。
 隣で彼女がうなされていたので、大声で名前を呼んだり、肩を揺すぶって起こそうとしたのだがびくともしない。思わず掌で頬を叩いたのだという。
 あまりに生々しい夢の余韻に、美杉さんはその日スキーにまったく集中出来なかった。
「で、翌日出勤して、職場でその夢の件を話すと」
 上司の顔が露骨に曇った。
 そこはスキー場として整地されるまで、春先になると鉄砲水の被害がよく出た場所だそうなのである。
「あんな大きなゲレンデが取れるくらいだから、集落ごと泥水に呑み込まれた事もあったんじゃないかって」
 設備などは申し分無かったのだが、美杉さんは二度とそのスキー場に出掛ける事はなかったという。



07:09, Thursday, Feb 05, 2009 ¦ 固定リンク ¦ 講評(26) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(7) ¦ 携帯


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所謂「夢オチ」であり、根拠となり得るべき上司の話も噂の域を出ていない。前半の説明部分も、怪異と直接の関係がある訳ではないので不要と思われる。鉄砲水で集落が流されたかどうかも、所詮は体験者の憶測でしかなく、確証となり得るべき記録も確認されていない。「夢 .. ... 続きを読む

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■講評

 悲惨な出来事です。よく調べてありますが夢だけと言うのが厳しい。
 採点の対象にはしません。

名前: くすだまん ¦ 10:24, Thursday, Feb 05, 2009 ×


これと言ったマイナス点は無いのですが、
逆にこれと言ったプラスも無く…。
文章がお上手だったので、
読めてしまいましたが、この方の文で、
もっと怖いネタが読みたいよ、と言う気持ちを込めて。

文章1

名前: ほおづき ¦ 13:59, Thursday, Feb 05, 2009 ×


最後の上司の言葉も憶測で終わっており、全体を通しての現実味が薄いように感じられました。
文章は丁寧で読みやすかったです。 文章+1点

名前: SPダイスケ ¦ 14:14, Thursday, Feb 05, 2009 ×


文章 1
怪異 1
怖さ 0
衝撃 0

生々しい描写はよかったのだが、もう少し何かパンチの効くものが欲しい。平板な文章が損をしている。
導入部がちょっと長い。

名前: くりちゃん ¦ 15:00, Thursday, Feb 05, 2009 ×


土地に染みついた過去の記憶が夢に入り込んだのでしょうか。美杉さんが叩かれるまで目覚めなかったところを見ると、その念はかなり強いですね。そのスキー場は大丈夫なのかな。

名前: ひ ¦ 15:40, Thursday, Feb 05, 2009 ×


怪異にたどりつくまでの前半の文章はほとんどいらないと思います。
夢の内容はなかなかに凄いのですが、ただの夢でしょ、と言われればそれまでなのが難点でしょうか。

名前: ひぐらし ¦ 18:49, Thursday, Feb 05, 2009 ×


ごめんなさい。
なんか序盤、美杉さんの仕事とご主人の辺りがなかなか結びつかなかったり、そもそも前半自体があまり怪異に絡んでいなかったりと、構成面においてちょっと全体的な見直しが必要のような気がしました。

怪異自体も夢だけで終わってしまっているので、ちょっと全体的に弱い印象を受けました。

文章:-1 怪異:0

名前: PM ¦ 19:16, Thursday, Feb 05, 2009 ×


前半の説明がちょっと長いな〜と感じました。
夢の中の出来事は生々しく書かれていて引き込まれます。
怖い、というより憐れですね。
この土地の記憶が美杉さんにシンクロしてあんな夢を見せたのでしょうか。
夢といってもただの夢ではありませんね。
貴重な体験だと思います。

名前: 桜子 ¦ 22:07, Thursday, Feb 05, 2009 ×


怪異部分のくだりは好きなんですが、
前半の説明部分をもっと削れたのではないかと思います。
でも他のお話も読みたいと思う文章でした。

名前: ゑな ¦ 00:07, Friday, Feb 06, 2009 ×


文章が巧みな方だなと思います。だからこそ、饒舌になるのかもしれません。前半部、不要な情報が多いように思われました。ネタ自体は微妙な夢オチなので、尚の事、文章を練り上げられた方がよかったかも。
文章・0 構成・0 ネタ・1 恐怖・0

名前: 暗沌子 ¦ 13:20, Friday, Feb 06, 2009 ×


怪奇1 文章0
夢でなかったらもっと点数高かったかもしれません。
怪奇の内容はおもしろかったのですが、舞台はスキー場である必要はなかったかもしれませんね。

名前: じゅりんだ ¦ 22:55, Friday, Feb 06, 2009 ×


文章+1 怪異+1 恐怖0
わかりやすく読みやすい文章で、過不足なく書けている。
夢オチという部分では、確かに怪異であるという説得力に欠けるのは否めないが、かといってただの夢であると断ずるのは早計であろう。
夢と過去の惨事との間に横たわる何かを、確かに感じる。

名前: スロトレ兄さん ¦ 13:20, Saturday, Feb 07, 2009 ×


事実で裏づけのある話でその辺の説得力はあると思うのですが、起こったことが夢止まりなためこれを怪異と判断するのは難しい。
確かに怖い夢も、体験者が怖い思いをしたのだから「怖い話」であるとはおもうのですが・・・

名前: 黒蜜椿 ¦ 16:16, Sunday, Feb 08, 2009 ×


天災って抗いようがなくて、亡くなった方は本当に無念だろうと思います。
美杉さん以外にも同じような体験をしている人がいるかもしれませんね。
誰がどんなに手を伸ばしても、その女性を引き上げることはできないんだろうなと思うと悲しい。 +1

前半のスキー場へ到着するまでの部分は、三分の一くらいまで削ってしまっていいかも。要らない情報が多いです。 -1

名前: 眠 ¦ 16:39, Tuesday, Feb 10, 2009 ×


美杉さんの見た夢と、スキー場のある土地の過去の
出来事が本当に繋がりがあるのか、少々疑問ですが。
でも会社の業種や夢の生々しさがそれを補ってました。

名前: こたつ ¦ 17:53, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


前置きが少し長いですね。
怪異も夢で、因縁も憶測で終わってるので、もう少し具体的な現象なりがあったら面白く読めたかも。

名前: 六郎 ¦ 19:02, Thursday, Feb 12, 2009 ×


文章がうまく、夢の描写もスキー場になる前の土地の話もわかりやすかったのですが、これだけでは夢オチの範囲を出ていません。
マイナス評価にまではなりませんが、加点するのも難しいです。

文章 +1 ネタ −1

名前: へみ ¦ 15:29, Saturday, Feb 14, 2009 ×


因縁のある土地の記憶の話ですが、実際に鉄砲水に襲われていたことが、もう少し具体的でないと怪異が成り立たないように思います。
上司の方のお話がもう少し詳しかったら良かったのですが。

名前: キザラ ¦ 17:05, Saturday, Feb 21, 2009 ×


-4 この人は、妄想を見たんじゃないかな?

名前: ジャック ¦ 02:02, Sunday, Mar 01, 2009 ×


文章・・・-1
希少度・・・0

こういう夢の話って判断が難しいんですよねぇ。
最後に明らかになるその土地の過去も、この作品の場合どうにも曖昧で、その時に見た夢の回答になりきれていないように思います。

ただ体験された美杉さんは夢の意味をそう取っているんでしょうし、体験者の判断は尊重すべきだと思います。
ただ作品として見た場合、この書き方ではやっぱり疑問を感じざるを得ませんでした。
特に物語の核心ともなり得る上司の証言を台詞一言でさらっと流してしまったのは痛い。
そこのところをもっと掘り下げないと読み手には夢に意味があったことは伝わらないんじゃないでしょうか。

名前: 鹿太郎 ¦ 15:39, Sunday, Mar 01, 2009 ×


文章はお上手だと思います。
私も美杉さんと同じように日帰りスキーをしますので状況はよくわかりました。
疲れていると怖い夢を見ることはどうしても多いですよね。
過去に本当に合った出来事なのかもしれませんが、夢で終わってしまっていたので、怪異が弱く感じてしまいました。
夢の中でスキーウエアーが泥に汚れていたのだから、本当に汚れていたらもっと真実味があったかもしれません。

名前: わんぴー ¦ 10:29, Wednesday, Mar 04, 2009 ×


描写は丁寧なのだが、「さもありなん」といった体験談になってしまったのが残念。スキー旅のセオリーにあれほど言及する必要はなかったのではないか。

名前: 魔音 ¦ 18:01, Thursday, Mar 12, 2009 ×


美鈴さんは、スキー場がオープンする前、車で仮眠していると、ゲレンデだった
場所が、昔集落ごと泥水に%uE5909Eみこまれた事実に違いないから。

名前: ジャック ¦ 01:35, Friday, Apr 10, 2009 ×


美鈴さんは、スキー場がオープンする前、車で仮眠している時、ゲレンデにした
場所が、昔集落ごと泥水に呑み込まれた事実を見たに違いないから。

名前: ジャック ¦ 01:39, Friday, Apr 10, 2009 ×


夢ネタはもっと現実とリンクしていないと弱いですね。

名前: 悪夢狂乱丸 ¦ 17:43, Sunday, Apr 12, 2009 ×


ごめんなさい、「ん?」と思う箇所があり、何度も読み返してしまいました。
衝撃的な出来事であったとは思うのですが、文章が少しバラバラで伝わりにくい感じがしました。

名前: 緋咲 ¦ 04:09, Wednesday, Apr 15, 2009 ×


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