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遺伝
今は某携帯電話会社でOLをしている亜紀さんの数年前の話。
亜紀さんの母親の友人に田上さんという女性がいた。
幼い頃から亜紀さんの母親と仲の良かった田上さんは、結婚して幸せな生活を送っていたが、若くして旦那を病気で亡くしてしまった。
その田上さんの旦那さんのお通夜に、亜紀さんは母親と一緒に出席した。
「参列というよりは、手伝いって感じだったな。うちのママすごく仲良かったからね。田上さんも私のことをよく可愛がってくれてたし」
亜紀さんはその時に、母親と田上さんの友達の井上さんという女性に初めて会った。
井上さんの噂は母から聞いたことがあった。彼女の職業は霊媒師だという。

初めて会った井上さんは、見た目には普通の主婦との違いは感じられなかった。
「私は霊媒師なんてインチキだと思ってたの」
亜紀さんはその日、井上さんと話をする機会に恵まれた。
アクセサリーの好きな亜紀さんは、その日も指輪を両手合わせて6個はめていた。
それを見て「ずいぶん指輪が好きなのね」と井上さんが話掛けてきた。
亜紀さんは、悪気はないが井上さんの能力を確かめてみたくなり、少し意地悪な質問をしてみた。
「でも私には指輪をくれるような相手がいませんから、今日のも1個以外は全部自分で買ったものなんです。井上さんならどの指輪がもらったものか分かりますか?」
井上さんは迷わず亜紀さんの左手の人差し指を差した。
「すっごい驚いたよ。だってそれだけお父さんにもらった指輪だったんだもん。左手の薬指に彼氏とお揃いで買ったペアリングをはめてたから、てっきりそれを指されると思ったんだけど」
井上さんは軽く微笑み「人からもらった物には、贈った人の念がつくのよ」と言った。
あっけにとられている亜紀さんに、井上さんは続けた。
「あなた、耳にピアスの穴を開けたいと思ってるでしょ。やめたほうがいいわね。あなたは身体に針を刺したり穴を開けたりするのはよくないタイプの人なの。運気が下がるわよ。悪いことは言わないからやめておきなさい」
亜紀さんはその日の昼休みに、ちょうど職場の同僚とピアスの穴を開けたいねというような話をしていた。
亜紀さんは井上さんの言葉に頷くしかなかった。
「驚くとか凄いってよりね、ぶっちゃけ薄気味悪いと思った。あの人はなんでもお見通しなんだなって」

次の日も仕事が終わった亜紀さんは、母親と一緒に田上さんの家へ出向いた。
「田上さん、旦那さんが死んじゃって元気なかったし、一人にしておくのも可哀想ってママが言うから私もついていったのね」
お通夜は昨夜無事に終わり、遺体は明日火葬場で焼かれることになっているようだった。
昨日のお通夜は近所の集会所のような所で行われたが、その日遺体は田上さんの家に戻ってきていた。
しばらくしてその遺体を一晩どこに置いておくかで、田上さんの旦那さんの両親が険悪な雰囲気になってしまった。
居間がない家だったので、キッチンに一晩遺体を置いておこうと言った田上さんの義父に対して、義母が「嫌よ、こんな所に置かれたらキモチワルイじゃない」と言ったのが原因だった。
亜紀さんもその言動には驚いた。
「だって自分の息子だよ? それを死んだからってキモチワルイなんて言えるかな? っていうかキモチワルイって思うこと自体おかしいよね」
義父はカンカンに怒って義母を怒鳴りつけた。
「お前は自分の言っていることが分かっているのか! 今度そんなことを言ったらうちの墓に入れないと思え!」
場は静まり返った。
少しうつむいた亜紀さんは、隣にいる子供がクスクス笑っているのに気付いた。
その子は昨夜の井上さんの息子で、当時5歳くらいだった。その日も来ていた井上さんは息子を連れて来ていた。
「どうしたの?何がおかしいの?」
亜紀さんが訊くと、その子はいたずらを成功させておかしくてしょうがない子供のような表情で口を開いた。
「だってあのおじちゃん、おばちゃんに向かってお墓に入れないなんて言ってるけど、先にお墓に入るのは自分なのに」
ぎょっとした亜紀さんは、井上さんに今子供が言った言葉の意味を尋ねてみた。
「本当は人の生死に関してはあまり口に出すものじゃないんだけど…… あの人3年後の桜の咲く時期に死ぬのよね」
井上さんは申し訳なさそうに言った。

時が流れ3年後の4月、田上さんの義父は井上さん親子の予言通りガンで亡くなった。
葬式の時、ちょうど綺麗な桜が満開だった。
「その年のお正月にはまだ元気だったんだよ。それがその後急に末期ガンがみつかって、あっという間に亡くなっちゃったの」
霊能力なんてものはまったく信じていなかった亜紀さんも、さすがに井上さん親子の「力」に関しては信じないわけにはいかなくなってしまった。
「でも本当に怖いのは息子の方よね。まだ子供だから思った事をずばずば言うでしょう。あのクスクス笑う嬉しそうな表情は忘れられないわ」
それ以来亜紀さんは、井上さん親子に会うのが恐ろしくなってしまい、顔を合わせる機会がある場所にはなるべく出向かず避けるようにしている。



06:01, Friday, Feb 06, 2009 ¦ 固定リンク ¦ 講評(24) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(8) ¦ 携帯


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亜紀さんの母の幼馴染、田上さんのご主人が亡くなった。田上さんと母が大変仲が良かった事もあって、亜紀さん親子は手伝いも兼ねてお通夜に出席した。「随分指輪が好きなのね」母と田上さんの友人だという女性、井上さんに声を掛けられた。井上さんは見た目には普通 ... 続きを読む

受信: 01:51, Saturday, Apr 11, 2009

■講評

ずば抜けた霊媒師が、人としても素晴らしいとは限らない、
と言われました。
井上さんの息子さんがそうならない事を祈ります。
何か、色んな意味でイヤ〜な気持ちが残ります。

文章1 読後感1

名前: ほおづき ¦ 07:22, Friday, Feb 06, 2009 ×


 嫌な子供ですね。叱れよ親が!子供を甘やかす親が増えて困ったものです。
 その霊媒師の年齢は幾つくらい?服装は?見た目は普通の主婦と変わらなかったと記載があるだけですね。当然、喪服だったんでしょうが、霊媒師と言うからには何か服装に特徴でもなかったかしら?また着物で来た場合も想定できます。
 厳しいようですが霊媒師がメインの話ですので、当然、霊媒師の姿がのっぺらぼうではイメージが湧きません。容貌などは、その人と告発するようなものだし、なかなかサジ加減が難しいのですが、せめて髪型、年齢くらいは知りたい。これもまずいのかなぁ?3点減点します。

名前: くすだまん ¦ 10:12, Friday, Feb 06, 2009 ×


古くは『トリック』に出ていた霊能少年、最近では『相棒』に出ていた予言少年を思い出しました。このクソ坊主(失礼)親の躾がなっとらんです。 人の将来予言するより先に、御自分のお子様の行く末を案じられては如何でしょう。
と、ここまで人を嫌な気持ちにさせたので、この話は成功ではないでしょうか。
文章・1 構成・0 ネタ・0 恐怖・0

名前: 暗沌子 ¦ 14:00, Friday, Feb 06, 2009 ×


はい、まさにその息子さんが恐ろしい。もう5歳であるならば、その年齢なりの分別が付く頃であるのに、すでに能力者ゆえの他を見下す下地が出来ているんですね。息子をそんなふうにしたのもその母親ですし、身近にいて欲しくない母子です。

名前: ひ ¦ 15:39, Friday, Feb 06, 2009 ×


笑いながら言い当てたのはその子がまだ子供だったからだと思います。
5歳くらいではまだ分別もつかないでしょう。
年を重ねるうちにわかってくると思います。

私の知り合いにも人の死が判る人がいます。
その人は首の後ろを見ると判るんだとか…。
怖くて彼女には絶対に首は見せられません。

いろんな霊能者がいます。
お話を聞くのは大変楽しく、勉強になります。

名前: 桜子 ¦ 16:30, Friday, Feb 06, 2009 ×


登場人物と内容をもっと整理すべきの様な。
起こった出来事が沢山あって書くのは大変だったでしょうが、ごちゃごちゃとしてわかりにくいです。
出来事をただ順を追って書いてゆくだけでは<面白い>と言ってもらえる話にはならないのでは。

名前: ひぐらし ¦ 18:22, Friday, Feb 06, 2009 ×


やっぱりこれも躾の一つですかね…。
人と違う力があるなら、それ相応のルールはちゃんと教えておかないと…。
確かにこの子供、不気味ではあるのですが、人の死を予言するってのもよくある話なので、あまり新鮮味は感じませんでした。

文章:1 怪異:0

名前: PM ¦ 19:16, Friday, Feb 06, 2009 ×


文章 1
怪異 1
怖さ 0
衝撃 0

某霊媒師は子供の頃ご近所の災厄を予知・公言したら母親にひどく叱られたとのことですが、この坊っちゃんも同様にそういうことを口にしないように躾るべきですな。
しかもくすくす笑っているなんて、悪意がなくてもそら恐ろしい。


名前: くりちゃん ¦ 22:58, Friday, Feb 06, 2009 ×


何故か井上さん親子に対して怖さより嫌悪感を感じました。
話のポイントがお通夜と井上さんの息子さんの話と2つあると思うので、どちらか1つに絞ったほうが良かったように感じます。

名前: ゑな ¦ 23:27, Friday, Feb 06, 2009 ×


怖さよりも 後味の悪さだけが残ってしまいました。
すみません・・・

名前: SPダイスケ ¦ 23:46, Friday, Feb 06, 2009 ×


怪奇2 文章-1
すみません。読解力がなかったせいか、人間関係がわかりづらかったです。
体験者と霊媒師がどっちがどっち?って混乱してしましました。
話の焦点は霊感体質を受け継いだ息子さんという事ですね。
なんだかオーメンのダミアンを思い出してしまった。
いい子に育つとよいのですが…。

名前: じゅりんだ ¦ 00:09, Saturday, Feb 07, 2009 ×


文章0 怪異0 恐怖0
子供の言動も怖いが、それを注意もしない親はもっと怖い。
井上さんの霊能力にしろ、特にずば抜けたレベルのものでもなく、人間的な魅力も無い。
霊能力・人間性ともにもっと優れた人物が身近にいる人間にとっては、大して興味を惹かれない。

名前: スロトレ兄さん ¦ 14:13, Saturday, Feb 07, 2009 ×


井上さんはすごい人だと思う。
でもこの話で自分が一番怖く感じたのは子供のほう。
そちらに重点を置いて書いてもよかった気がします。
すこしいろいろ書きたいことを詰め込みすぎているいうな気がします。

名前: 黒蜜椿 ¦ 17:04, Sunday, Feb 08, 2009 ×


こういう陰湿な話もあっていいと思います。
しかし、井上さん親子はもっと霊能者としての
自覚を持つべきだよなー。
霊能力を持つにしても、品格や人格も兼ね備えて
ないとダメなんだな。

名前: こたつ ¦ 19:06, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


生きた人間のイヤなところと怪異が相まって後味の悪い怪談は好物です。
が、このお話は、イヤなところというよりは常識のなさや性格の悪さを強調しているように見えました。

「口に出すものではない」と前置きしつつ結局「あの人は死ぬ」と話す井上さん。
それってどうなの、と怖いとは別の意味で引きました。
そりゃあ子供もそんな風になっちまうわ、と思ったし、前述の「ずいぶん指輪が好きなのね」という言葉さえ「通夜にそんなに指輪を付けてきて…」という嫌味だったんじゃないかと思えてしまうほどに;

井上さん親子のイヤな感じが存分に表現されていることが、私には怖さとは別の方向に作用してしまいました。 ±0

名前: 眠 ¦ 03:41, Thursday, Feb 12, 2009 ×


登場人物が多く、若干読み疲れてしまいます。
親子は霊能者としての力はすごいと思いますが、配慮に欠ける点があり、読んでいてあまり気分のいいものではありません。
子供のくすくす笑う場面は気味の悪さが出ていていい感じなのですが、もう少し読者に伝えたいことを整理して書けば、さらに良い作品になっていたかもしれません。

名前: へみ ¦ 17:17, Saturday, Feb 14, 2009 ×


霊能親子が何となく不快にとらえられていますが、「何でもお見通し」の恐怖感を持つ人物の視点から見ているので、こうなっちゃったのかなあと思いました。
お通夜の次の夜も親子共々ちゃんと義理堅く訪問しているわけで、社会通念上変なことをやっているわけではありません。子供の粗相は仕方のないことなのかもしれないですし。
人の死を予言されるのは気味が悪いでしょうが、もしそうであってもそういうのが分かる人自体を怪異のキモとするのには違和感があります。


名前: キザラ ¦ 23:21, Saturday, Feb 21, 2009 ×


−4 たまたま予感が当っただけのこと

名前: ジャック ¦ 02:17, Sunday, Mar 01, 2009 ×


能力が遺伝してしまうのは悲しい事でもあるんですね。
人の死が判ってしまうなんて。
まだ5歳だから理解できていないかもしれませんが、大きくなるにつれ悩みも増えることでしょう。
いい子に育ってくれることを祈ります。
前半の話と後半の話は別にした方が良かったかもしれませんね。


名前: わんぴー ¦ 21:16, Wednesday, Mar 04, 2009 ×


文章・・・0
希少度・・・0

世の中には未来の出来事や、その人が知らないはずのことをピタリと言い当てる能力を持った人がいます。
それが神秘の力なのか、コールド・リーディングなどの技術なのか、それともペテンなのかは判りませんが、言い当てられることに何の不思議もないと思います。
この作品は、言い当てられたことに対して畏怖してしまった女性の体験が綴られています。
ただそれを怪談と言ってしまっていいのかどうか。
ただの騙された人の話とも取れなくもないのです。
やはり霊能者の不思議な言動だけでは怪談としては厳しいと思います。
鼻からエクトプラズムでも出してくれたらまた違ってくるでしょうけど。

文章については少々回りくどい部分もありますし、表現として「おや?」と思うところもあったので、この点数です。

名前: 鹿太郎 ¦ 02:22, Friday, Mar 06, 2009 ×


井上さん(母)の逸話より、弔いの席に関わる井上(息子)の話の方がインパクトがあるので、前半のウェイトをもっと絞った方が良い気がします。

まだ“モラル”に縛られていない子供+超能力=“後味の悪さ”の型にはまりすぎていて、あまりショックを受けませんでした。

名前: 魔音 ¦ 00:23, Friday, Mar 13, 2009 ×


田上さんの義父の死は、井上さん親子の予言が、たまたま偶然3年後の桜の咲く季節4月であたっていただけのことだから。

名前: ジャック ¦ 01:08, Thursday, Apr 09, 2009 ×


霊能者の方のお話は本当に勉強になりますよね。
私が知るそういう生業の方は、逆に死者についてはあまり語ろうとしない印象がありますが、井上さんも亡くなったご主人に対しては何もコメントしなかったのでしょうか。
お子さんは成長するにつれて分別がついてくるでしょうが、子供の素直さは大人にとって残酷な時がありますね。

名前: 緋咲 ¦ 10:26, Sunday, Apr 19, 2009 ×


この子供は普段からそういったことを口に出してると思うのですが、放置しているのでしょう。そのうち、周囲から嫌がられ迫害を受けるかも。その時この子供はもっと怖ろしい人間になるのではと思うと、本当に怖い。

名前: 悪夢狂乱丸 ¦ 16:47, Sunday, Apr 26, 2009 ×


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