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経営者の心得
 普段から豪胆な高嶋さんが大阪にいた頃の話である。

 当時、高嶋さんは開業準備のため、資本元の会社が所有する建物の一部を使わせてもらっていた。
 2階建ての小さなその建物は、1階には機械工場とその事務所が収まり、事務所の端にある階段を上ると、廊下に沿って2つの部屋がある。
 その奥側の部屋はこの会社のバイクチーム用の作業場になっており、手前側の部屋が高嶋さんの事務所となっていた。

 その日、高嶋さんは夜通し1階の機械工場で黙々と作業をしていた。
 夜中の0時を過ぎた頃。
 突然、工場内にある電話の呼び出し音が鳴った。
 高嶋さんは作業の手を止め受話器を取ったのだが、何を言っても相手は無言である。
 悪戯かと思い、高嶋さんは舌打ちをしながら電話を切った。
 …と、その直後、再び電話が鳴った。
 電話機をよく見てみると、幾つか並んだ内線ランプの内の一つが点灯している。
 この内線ランプの点灯する位置で、相手がどこから掛けてきているかが解るようになっているのだが、今、点灯しているランプが示すのは2階の手前の部屋、高嶋さんの事務所であった。
(あれ? 俺、鍵閉めんかったっけ?) 
 そういえば今日は奥の部屋で、バイクチームの一人、安原が泊まりで作業していたはずだ。
 奥の部屋にも内線はあるはずだが、彼がわざわざ隣の部屋にまで行って掛けてきているのだろうか?
 そう思いながら、高嶋さんは再び受話器を取った。
 …無言である。
 舌打ちをしていると、今度は向こうから電話を切られてしまった。
 高嶋さんは受話器を置くと2階の奥の部屋に向かい、安原に確認を行ったのだが、彼は内線なんかしていないと言う。
 気にはなったものの、今は忙しい身である。
 高嶋さんは気にせず、作業を再開することにした。

 午前2時近くになった頃。
 またしても工場の電話が鳴った。
 見ると、やはり高嶋さんの事務所からである。
 顔をしかめながら受話器を取ると、先ほど同様、無言が少し続いた後、電話を切られてしまった。
(もう、あいつしかおらんやろ。)
 さすがに切れた高嶋さんは、再びバイクチームの部屋に怒鳴り込んだのだが、安原は知らないの一点張りである。
 安原の様子を見るに、どうも嘘を言っているようではなさそうだ。
 高嶋さんはバイクチームの部屋を出ると、自分の事務所の様子を確認する事にした。
 …入り口の扉にはやはり鍵が掛かっている。
 扉のガラス部分から室内を覗き込む。
 電気は消えており、見た感じ、中に誰かがいるような気配はない。
「おーい、なんか俺んとこから電話かかるでー?」
 廊下から安原に向けて声を掛けたところで、突然、室内で何かが光り始めた。
 よく見ると、高嶋さんのデスク上にある電話機のディスプレイ画面が緑色に発光しており、内線ランプと思われる赤い光も点灯している。
 と、それに応えるかのように、1階から電話の呼び出し音が聞こえてきた。
「うおっ、なんやこれ!?」
 高嶋さんが驚いていると、奥の部屋から出てきた安原が声を掛けてきた。
「ああ、こんなん、しょっちゅうやで。」
 安原の話では、夜になると建物が異常なほどミシミシと音を立てたり、知らないオッサンが工場内でぼーっと立っていたりと、色々な事が起こっているらしい。
「なんなら、社長に訊いてみ。」

 夜が明けて、高嶋さんは出社してきた社長を捉まえると、夜中にあった出来事を伝えた。
「高嶋君、そりゃあ起こるでー。これ、どこからなんぼで買うた思う? この工場の前の社長が首吊ってなぁ。そこからえらい安うで買い取ったんや。」
 社長はそう言いながら、工場内に何台も並べられた1台3000万円以上する機械を指差し、笑っていた。
「そんなん気にしとったら、いつまで経っても開業なんか出来へんで。心得ときや。」


 あれから約20年。
 現在も高嶋さんの事業は順調である。




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■講評

確かに。そういう人じゃなきゃ、社長になんかなれない。

最後の社長に、一点。

名前: ほおづき ¦ 07:35, Friday, Feb 06, 2009 ×


 この不況に商売繁盛は何よりです。
 記載に洩れがあるとは思いませんでした。

名前: くすだまん ¦ 10:26, Friday, Feb 06, 2009 ×


工場がミシミシ言ったり、知らないおじさんがいたのは又聞きとすると、実際に体験されたのは電話の怪だけですかね?だとすると弱いかなと思います。
文章・0 構成・0 ネタ・0 恐怖・0

名前: 暗沌子 ¦ 15:01, Friday, Feb 06, 2009 ×


幽霊や怪異の二つや三つ屁でもないと思えなければ、一人前の経営者には到底なれない、ということですね。わりとよくある怪異内容だったので。

名前: ひ ¦ 15:48, Friday, Feb 06, 2009 ×


商魂たくましいとはこのことでんがな。
さすが大坂人でおます。
格安機械には首吊った経営者もオマケでついてきたんですね。
なんだか落語みたいなお話。
怖くはないんだけど楽しく読めました。


名前: 桜子 ¦ 15:51, Friday, Feb 06, 2009 ×


イライラさせられる怪異?
毎日そんな事が続いたらノイローゼになるでしょうね。

名前: ひぐらし ¦ 18:47, Friday, Feb 06, 2009 ×


丁寧な文章なのは良いのですが、それが逆に読者に落ち着きを与え、怖さを弱くしてしまっているように思えます。
怖いというより、勉強になりました。って感じの話でしたね。

文章:1 怪異:0

名前: PM ¦ 19:37, Friday, Feb 06, 2009 ×


文章 1
怪異 0
怖さ 0
衝撃 1

何に衝撃を感じたかというと、勿論お化けにも強気の社長さんにです。「安原」さんも「知らないオッサン」がいてもそんなに気にしていないようだし…
確かに凶器を持った押し込み強盗よりも、無害ですがね。
こういう社長さんに大阪弁で喋られると、もう、勝てません<笑

名前: くりちゃん ¦ 23:19, Friday, Feb 06, 2009 ×


舌打ちをされて、無言時間を短縮したんだとしたら
死んだ後も気を使うのは気の毒というか何というか・・・
いろんな意味で生きてる人間の方が強いですね。

名前: ゑな ¦ 00:12, Saturday, Feb 07, 2009 ×


怪奇1 文章0
社長さんの図太さに拍手!これぐらいでないとね。
幽霊より強いのは生身の人間ということか…。

名前: じゅりんだ ¦ 00:32, Saturday, Feb 07, 2009 ×


いろいろな事が起こっているらしい、をもっと掘り下げてみた方がよかったように思います。
電話の件だけではちょっと弱い気がします。

名前: SPダイスケ ¦ 00:45, Saturday, Feb 07, 2009 ×


文章0 怪異+1 恐怖0
やや説明過多な感があるし、怪異も弱いが、十分楽しめた。
この不況の中、確かにこのくらい図太くないと生き残っていけないかも知れない。
会社自体が雰囲気がよさそうで、思わずここに勤めたくなった。

名前: スロトレ兄さん ¦ 15:03, Saturday, Feb 07, 2009 ×


それなりの裏づけもあり、真実味はあっていいのだが怪異が弱い。
いろいろ起こっているのなら少しその辺をプラスしてもよかったかも。
なんかノリが軽いです。関西弁は好きですがこの話ではそれが軽さを強調したかも。
文章はうまいなぁと感じました。

名前: 黒蜜椿 ¦ 18:58, Monday, Feb 09, 2009 ×


社長さんの方が、なんだか別の意味でかなり怖い
ような(笑) 褒め言葉ですよ!
その後、高嶋さんは開業されて事業が順調という
ことは、高嶋さんにもその社長並みのたくましさが
あったってことなんですねぇ……。

名前: こたつ ¦ 20:17, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


高嶋さんのみならず、安原さんも社長さんも豪胆ですね。特に社長さん。
三人とも落ち着いていて、こんなことで怖がるなよ!と、電話が鳴るエピソードを台無しにしているような気が^^;
安原さんが他にどんな経験をしているのか知りたいです。 ±0

名前: 眠 ¦ 23:01, Thursday, Feb 12, 2009 ×


社長が怖いです……。
電話の怪談は多いのですが、なかなか具体的なところが読ませてくれました。
もっとも安原さんの話をもっと聞きたいと思うくらい事象としては微妙だと思います。

名前: キザラ ¦ 00:24, Sunday, Feb 22, 2009 ×


起きている怪異は珍しいところもあると思いますが、登場人物の反応や言葉が印象を悪くしています。
大袈裟に驚けばいいとも思いませんが、読者を想定して書くものとしては、これでは冷めてしまいます。

名前: へみ ¦ 23:44, Monday, Feb 23, 2009 ×


−4 いちいち人の感情に振り回されたら限がないということ

名前: ジャック ¦ 02:32, Sunday, Mar 01, 2009 ×


しょっちゅう起こるんやったら安原さん疑われた時点で教えたりいや!・・・と関西弁で突っ込みそうになりました。
夜中に鳴る電話って音にびっくりしますよね。

名前: わんぴー ¦ 12:00, Thursday, Mar 05, 2009 ×


文章・・・0
希少度・・・0

現象だけみると電話の故障ではないかとも思えます。
ただ他の社員が色んな体験をしているとのことなんで、やはり何かいるんでしょうね。
でもやはり小粒感は否めません。

名前: 鹿太郎 ¦ 17:03, Saturday, Mar 07, 2009 ×


幽霊より怖い浪速の商魂! やっぱり人間って怖いなぁ。

名前: 魔音 ¦ 00:48, Friday, Mar 13, 2009 ×


確かに高嶋さんの言うとおり、前の社長が首を吊って安いのは当然、細かいことをいちいちきにしていたら、経営者になれないと思ったから。

名前: ジャック ¦ 23:08, Tuesday, Apr 07, 2009 ×


もう少しスマートにまとめられていても良かったかなと思います。
不可思議な事態には変わりないのですが、怖いと思うほどでもないかな…と。

名前: 緋咲 ¦ 11:25, Sunday, Apr 19, 2009 ×


結局二十年間、電話より怖いことは起きなかったのですね。

名前: 悪夢狂乱丸 ¦ 17:44, Sunday, Apr 26, 2009 ×


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