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父親というものは
小学校の時、由美さんの父親が亡くなり、母親が生まれ育った田舎に引っ越す事になった。

新しい家も完成し、引越しを手伝ってくれた母親の姉妹と共に、初日は皆で仏間から居間にかけて横一列に並んで寝た。
他の皆は疲れていた所為か、すぐに寝息や鼾が聞こえてきたが、由美さんだけは何故かなかなか寝付けずにいた。

そんな時。
玄関の方から白い霧のようなものがスーッと居間の方に入って来る。
何だろうと思い、目を凝らしてよく見ると、その白い霧は次第に人の形を作ってきた。

亡くなった父親だった。
白装束を着ていたが、見た目は生前と何ら変わりなく思えた。

父親は居間から皆を見回すようにすると、床を滑るように仏間まで移動してきた。
声も出せずにいた由美さんを優しい顔で一目見ると、父親はお仏壇の中にスッと入っていった。

「あぁ、お父さんはちゃんとお仏壇に入ってくれたんだ」
そう思うと、安心して眠りにつく事が出来た。

次の日、皆にその事を言ったが、「夢でも見たんでしょう」と言われ信じて貰えなかったという。


その後、高校を卒業した由美さんは大学へは行かず、実家から一時間程離れた所で働きながら一人暮らしを始めた。それでも休みの日にはなるべく実家へ帰って来るようにしていた。
一人で暮らしている母親が心配だったからだ。

ある日、いつもの様に実家に帰ったときの事。
夜中にふと目が覚めると、隣に亡くなった父親が寝ていて、由美さんをジッと見つめていた。
由美さんは恐怖を感じる事も無く、何故か当時付き合っていた人の事を父親に話していた。
結婚まで考えていた人だった。
父親は一頻り由美さんの話を聞くと、ただ一言
「お父さんは反対だな」
そう言うとフッと消えてしまった。

その後、程なくして彼氏が自分以外にも付き合っている人がいた事を知り、別れる別れないの話し合いとなった。結局一度は許したものの、数ヶ月も経った頃、何だか彼の家の引き出しの中が妙に気になる。由美さんは人の引き出しを見る事は今までしたことも無いし、
気にもした事は無かった。しかし何故だか気になって仕方が無い。
やましい気持ちを抑えつつ、引き出しを開けると、そこには彼と知らない女が抱き合っていた写真が入っていた。
日付からいっても、あの別れ話の後に撮られた写真だった。
その時になって改めて考えてみると、数年間で彼氏に貢いでいたお金はかなりの額になっていた事にも気付いた。そして彼氏から買ってもらった物は、一つも無かったという事実も。
彼氏の方は初めは何だかんだと言い逃れをし、別れようとしなかったが、「父親の一言」の件を思い出し、由美さんは自分でも驚くほど冷静に別れを決意できた。
その後、今の御主人と出会い結婚に至ったが、その時は御主人の枕元に由美さんの父親が出てきて
「宜しくお願いします」と言ったそうである。
御主人は既に由美さんの実家に挨拶に行っていた為、父親の顔は遺影で見て知っていた。
御主人も初めての事で、声も出せない程驚いたそうだが、一切恐怖は感じなかったという。


そして昨年のお盆に由美さんの実家へ帰った時。
先に寝た母親の部屋からうなされている声が聞こえる。
何か言葉も言っているようだが、由美さん夫婦には内容が聞き取れなかった。
初めはただの寝言だろうと思って様子を見ていたが、うなされている声はどんどん大きくなり、終いには悲鳴の様な声になった。
慌てて母の部屋に言った由美さんは、見てしまった。

真っ暗な部屋の中、カーテンの隙間の微かな明かりから辛うじて見える真っ黒な小さな影。
それが部屋の至る所に何個も見え、その影が母親に近付くたび、母親は寝ながらうなされた声を出していた。
初めての事に恐怖はあったが、それよりもどうしたら良いのか判らずに、ただ立ち止まって呆然とその光景を見ていた。
ふと隣にいた御主人に目をやると、御主人はぽろぽろと泣いていた。

泣きながら部屋の中央に向かって深々とお辞儀をすると、由美さんに部屋から出るように促した。
訳の分からない由美さんに御主人は言った。
「お父さんが出てきて、黒い影がお母さんに近付く度に、凄い剣幕で追い払っていたんだ。
こっちを見て、大丈夫だから戻りなさいって言ったんだ」

御主人は「申し訳ありませんが、お任せします」と心の中で言うと、由美さんを連れて部屋から出たそうだ。
部屋から出た御主人はすぐにお仏壇に行き、またもや深々と礼をした。
御主人の見た父親はお仏壇に飾ってある遺影よりも少し歳を取っていた感じだったという。

その後30分もしないうちに静かになった為、母親の部屋をこっそり見に行くと、母親はスヤスヤと気持ちよさそうに寝ていた。
既に、あの黒い影も、父親の姿も見えなかった。
翌日になり、母親にそれとなく聞いてみたが、当の本人は夜中の出来事は何一つ覚えてはおらず、ぐっすり眠れたと言った。


「あの時どうして私だけお父さんが見えなかったのか分かりません。今まで霊感の無かった主人がお父さんだけ見える理由も分かりません。ただお父さんはいつでも私達を守ってくれていると思うと、嬉しい反面、なんだか申し訳ないです」
由美さんは目に涙を浮かべながら、少し気恥ずかしそうにそう言った。



06:41, Saturday, Feb 07, 2009 ¦ 固定リンク ¦ 講評(24) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(7) ¦ 携帯


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■講評

良いお話何で言いにくいのですが、
詰め込んだ感じがあって、せっかくの丁寧な文章も
生きてないと言うか・・・。
ネタ一つ一つが小粒だと考えられた結果でしょうが、
残念です。

文章1 構成0

名前: ほおづき ¦ 09:10, Saturday, Feb 07, 2009 ×


怪奇2 文章0
家族思いのお父さんの優しさが滲み出ていますね。
文章が長かったので、もう少し尺を短くされてもよかったかなあと。
いいお話だと思います。

名前: じゅりんだ ¦ 09:53, Saturday, Feb 07, 2009 ×


前半の元彼のエピソードは描写過多。もう少しあっさりまとめた方がいいと思いました。よって3点減点。
 いい話なのですが、幸福そうな夫婦が嫌です。よって個人の趣味として1点減点。

名前: くすだまん ¦ 11:05, Saturday, Feb 07, 2009 ×


文章 1
怪異 1
怖さ 1
衝撃 0

感動した!
(でも中だるみがちょっと残念…)

名前: くりちゃん ¦ 15:15, Saturday, Feb 07, 2009 ×


文章0 怪異+2 恐怖0
もう少し短くまとめられるとは思うが、減点するほどでもない。
それにしても凄い父親である。もしかしたら我々の先祖も、このようにして守ってくれているのかも知れない。

名前: スロトレ兄さん ¦ 15:47, Saturday, Feb 07, 2009 ×


いいお話でしたが 少々長い気がしました。
削るところは削った方がすっきりして読みやすかったと思います。

名前: SPダイスケ ¦ 16:26, Saturday, Feb 07, 2009 ×


亡くなった後も家族を護るため孤軍奮闘する父親は本当に感動的なのですが、就寝中の母親を襲った真っ黒い小さな影たちの正体の方が気になってしかたがなかったです。うーん、困った、いい話ですのに。

名前: ひ ¦ 17:14, Saturday, Feb 07, 2009 ×


元彼の部分等、不要なところが多く話がごちゃごちゃとして長くなってしまっている様な。
亡くなった親、恋人が心配して、という話はよくありますが、良いお話ですね。

名前: ひぐらし ¦ 18:30, Saturday, Feb 07, 2009 ×


しみじみとくる良い話なのですが、ちょっと全体的に文章がダレた感じがして、読んでいて冗長に感じました。
お父さんの直接的な見せ場は最後のエピソードなので、それまでの部分はもう少し端折っても良かったんじゃないかなぁと思います。

文章:0 怪異:1


名前: PM ¦ 21:50, Saturday, Feb 07, 2009 ×


亡くなった後もお父さんに守られていると実感できるのは羨ましい。
前彼のエピソードをもう少し削っても良いんじゃないかと思いました。

名前: ゑな ¦ 23:10, Saturday, Feb 07, 2009 ×


あります。こういうこと、あると思います。というか、我が家でも亡くなった母が何か守ってくれてるという実感があります。 文章もやや饒舌気味ですが、気にはなりません。
文章・0 構成・1 ネタ・1 恐怖・0

名前: 暗沌子 ¦ 10:53, Monday, Feb 09, 2009 ×


元彼のエピソードなど、現実の問題も書いてもいいと思うのですが、その分黒い影のところももっと詳しく知りたい。
母親に心当たりはないのだろうかとかいろいろ考えてしまいました。
でもとってもいい話です。

名前: 黒蜜椿 ¦ 19:17, Monday, Feb 09, 2009 ×


死んだ身内に守られる、窮地を救ってもらうというのは
よくある話で、正直ありきたりかとも思いましたが。
よい話を減点する必要はないので、この配点です。

名前: こたつ ¦ 21:02, Friday, Feb 13, 2009 ×


うちのオトンはたぶん、こんな風に守ってくれないと思う…。

パッと見は温かい家族の絆を綴った良いお話なんですが、亡くなっても心配事ばかりで落ち着く暇のないお父さんの苦労話にも見えて、読後感が複雑でした。
この時も、そしてこの時も、とエピソードが詰め込まれているからかなあ。

お母さんに憑こうとするものを追い払うところで「おおっ、きた!」と気分が盛り上がったので、そこに+1で。

名前: 眠 ¦ 00:00, Saturday, Feb 14, 2009 ×


なんてやさしいお父様でしよう。
死んでもなお、家族を見守っていてくれるなんてありそうでなかなかないのでは。
若くして亡くなったので家族のその後が心配だったのでしょう。
結婚相手のアドバイスまでしてくれるなんて嬉しいですね。
このお父様が見えるご主人もいい方なのですね。
お孫さんが出来てもまた守ってくれそうで心強い見方です。

誰よりも強く、誰よりもやさしいお父様。
普段は天国でりんびりしていらっしゃるのかしら。

あたたかい幽霊っていいですね。

名前: 桜子 ¦ 16:14, Tuesday, Feb 17, 2009 ×


いい話ですが、ひとつひとつの怪異にそれほどの新鮮味も感じられず、文章も少々くどく感じてしまいました。
いいお父さんだということはわかるのですが…。
彼女が来る部屋の引き出しに、他の女と抱き合っている日付入りの写真を入れておく彼が一番印象に残ってしまいました。

名前: へみ ¦ 02:39, Tuesday, Feb 24, 2009 ×


娘を守護するお父さんの話ですが、出現時遺影より年を取っていたり所々興味深い部分があるのですが総じて怪談としてはよく聞く話の範疇にあると思います。

名前: キザラ ¦ 04:40, Tuesday, Feb 24, 2009 ×


−4 私個人としては、父親と馬が合わないせいか、大嫌いな作品です
大体、結婚なんてのは、自分自身の問題だし、この問題は、私が考えても、ダメな話だから、父親に意見させるのは、論外
父親は、死んだら忘れ去るぐらいの感覚で、精神的にも、経済的にも自立しよう!!

名前: ジャック ¦ 02:54, Sunday, Mar 01, 2009 ×


優しいお父さんに見守られて由美さんたちは幸せですね。
怪異を詰め込みすぎたのがもったいないです。
いくつかに分けても良かったかもしれません。
元彼の趣味の悪さと、お母さんの周りにいた真っ黒な影が印象的でした。

名前: わんぴー ¦ 12:57, Friday, Mar 06, 2009 ×


文章・・・0
希少度・・・1

死んだ肉親が現れて守ってくれるという話は多く聞きます。
ただ旦那さんを通して父親の存在を知るという部分はなかなか興味深かった。

全体としては彼氏に関する話とうなされる母親の話の二部構成のような書き方ですが、彼氏の部と比べて母親の部の書き方が少々雑なように思えました。
文章量も違いますし、文章自体も母親の部の方は少し崩れ気味です。
書いてる途中で疲れが出たんでしょうか?それともそれぞれのエピソードへの書き手の思い入れの差でしょうか?
マイナスにするほどではありませんが、少し違和感を覚えました。

名前: 鹿太郎 ¦ 02:26, Sunday, Mar 08, 2009 ×


いい話なのですが、それだけで終わってしまう気が……。人間である以上、かつての父親にも弱いところや醜いところがあったはずなのです。例えばそういった生前の人間臭さをお母さまの口から少し語っていただけたら、もっと深みのある話になったと思うのです。

名前: 魔音 ¦ 01:34, Friday, Mar 13, 2009 ×


私個人としては、父親と馬が合わないせいか大嫌いな作品である。大体結婚なんてのは、自分自身の問題だから、父親に意見させるのは、論外だから。父親なんてのは、死んだらさっさと忘れ去るくらいの存在で、精神的にも経済的にも自立しよう!

名前: ジャック ¦ 22:44, Tuesday, Apr 07, 2009 ×


残した奥さんとお嬢さんが心配でしょうがないんですね。
個人的に「お父さんは反対だな」の一言が何だか可愛く思えて仕方ありません。
由美さんが悪い男と付き合い続けるようなことが無く一安心です。
もう出てこなくても良いくらい、早くお父さんを安心させてあげてほしいですね。

名前: 緋咲 ¦ 12:41, Sunday, Apr 19, 2009 ×


いい話です。
でも、これでいいのでしょうか。こんなに長い間、たびたび現れなければいけないなんて。亡くなっているのに遺影より老けているとありますし。そろそろゆっくりしていただかないと。

名前: 悪夢狂乱丸 ¦ 16:52, Monday, Apr 27, 2009 ×


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