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夏空の下で
内川君は小学四年生のときに、両親の田舎に行った。
夏休みを利用して初めての一人旅。
両親は後から来て家族で墓参りをしてから一緒に帰る予定。
それまで父の兄であるおじさんの家に、一人で二泊ほどしたという。

夜は従兄弟の芳雄兄さんがよく遊んでくれた。
芳雄兄さんは当時高校生で、夏休みではあるが昼間は部活動で学校に行っていた。
おじさんも昼間は仕事に行く。
内川君は昼間、一人で遊ぶことになるがそれも楽しかった。
東京にはない自然が嬉しく、田んぼの横にある用水路でザリガニや小魚を獲って遊ぶのに夢中になった。
都会で生まれ育った内川君だったが、田舎の空気を吸うと懐かしいような気持ちなる。
清々しい夏空の下、用水路に向かう途中で肥やしの臭いが鼻を衝いたが、それすらも心地よく感じた。

その日、内川君がひとりで遊んでいると、知らないうちにひとりの少年が近くに立って彼のことを見詰めていた。
目が合うと少年は話しかけてきた。
「おまえ、どっから来た?」
「東京」
話をすると、少年は地元の者らしい。名前はたかしと言い、年齢は内川君と同じだった。
「ここよりもっといい場所を教えてやるよ。ついてきな」
たかしに教えてもらった場所は、確かに先程よりも獲物がたくさんいる場所だった。
「すごいな。ありがとう」
内川君が礼を言うと、たかしはフフンと鼻を鳴らした。
たかしは内川君にやたらと色々な質問をした。
東京での学校や友達のこと、両親のこと。
ただ、内川君がたかしに質問をすると、上手く話を逸らされているような感じがした。
楽しく遊んでいると時間が経つのは早い。
気がついたときには辺りは夕焼けに包まれていた。
「また明日な」
そう言い、ふたりは別れた。

翌日、内川君が昨日たかしに教えてもらった場所で遊んでいると、昨日と同じようにいつの間にかたかしが後ろに立っていた。
「よう」
軽く挨拶をして、ふたりは昨日と同じように遊んだ。
たかしは昨日も今日も話はしたがるが、ザリガニ等を獲ることにはあまり興味がないようだった。
地元であるし、その気になればいつでも獲れるからだろうと、内川君は思った。
昨日も感じていたのだが、内川君はたかしとは凄く気が合う。
一緒に遊んでいると、まるでずっと昔からの友達のような気がしていた。
様々な話をしているうちに時間はあっという間に過ぎていった。
「たかし、明日俺の父さんと母さんが東京から来るんだ。そしたら墓参りをしてあさってには東京に帰る。明日は遊べないと思う」
「そうか」
たかしは少し寂しそうにつぶやいた。
「でもさ、来年また来るよ。約束する。そしたらまた遊ぼうぜ」
「わかった」
どちらからともなく手を差し出し、ふたりはしっかりと握手をした。
内川君はいい友達ができて嬉しかった。
来年必ずまた来よう。そう心に誓った。

ただ、来年来たとしてもそのとき必ずたかしに会えるとは限らないと、内川君は思った。
「たかし、来年俺がまた来たらたかしの家に行くよ。だから家を教えて」
内川君がそう言うと、たかしは少し困ったような顔をして答えた。
「いや・・・・・・大丈夫だから。俺がまた来るから」
たかしは何か家を教えたくない理由があるような素振りだった。
要領の掴めないあやふやな返事をするだけだった。
内川君は余りしつこく聞くのも悪くなり、その話をするのをやめた。
やがて日が暮れ、ふたりは別れた。
「また来年な。たかし」
「おう。元気でな」

別れた後、内川君はおじさんの家に帰るフリをして、たかしの後をつけた。
たかしは先ほどああ言ったが、せっかく出来た友達。
来年また来たときに必ず遊びたいと思っていた。
そのためにはたかしには悪いが、後をつけて家を知っておきたい。
たかしはしばらくあちらに曲がりこちらに曲がりを繰り返した後、夕闇の中をお寺に入っていった。
墓地に行き、ある墓の近くで墓石に影が隠れたと思ったらそのまま見失ってしまった。
内川君はしばらく呆然としていたが、ここにいてもしょうがないと思い、おじさんの家に帰った。

おじさんの家に着き、今日あったことをおじさんとおばさんに話し、少年の名前を聞かれたので「たかし」と言うと二人の顔つきが少し変わった。
おばさんが一枚の写真を持ってきて内川君に見せた。
「あ、たかし・・・・・・」
そこにはまさに先ほどまで一緒に遊んでいた、たかしが写っていた。
「たかしと遊んだのかい?」
おばさんは悲しそうな、でも少し嬉しそうなそんな表情で内川君を見詰めた。
おじさんには、もうたかしと遊んではいけないと言われた。

翌日、内川君の両親が到着し、昨日のことをおじさんから聞いた両親は、内川君に話をした。
今まで内川君には教えていなかったが、おじさんの家には芳雄兄さんの上にもうひとり男の子がいたこと。
名前は隆志。
今は埋め立てられてなくなっているが当時近所に小さな沼があり、隆志はひとりで遊んでいる時にそこで溺れて亡くなっていること。
昨日内川君が見た写真はその隆志だということ。
「そんな・・・・・おれ、昨日もおとといも一緒に遊んだのに」
内川君は信じられなかったが、その日両親と共に墓参りに行ったその墓は、まさに昨日たかしを見失ったところだった。
昨日は夕方でわかりにくかったが、確かに毎年墓参りをするおじさんの家の墓だった。
内川君は手を合わせ、自分の従兄弟であるたかしに、さようならとありがとうを言った。

内川君は今、三十代になっている。
たかしとはそれっきり会うことはなかったが、今でも田舎に行き、たかしと遊んだあの場所を見るたびにあの日のことを思い出すという。



06:42, Saturday, Feb 07, 2009 ¦ 固定リンク ¦ 講評(24) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(7) ¦ 携帯


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■講評

ネタは小粒ながら、いい話なのと、
文がお上手なのでじわん、と良い感じ。
こういう、文がお上手な方にこそ、
強烈な話に出会わせてください、神様。
貴方の文章で強烈なお話、待ってます。

文章1 表現力1

名前: ほおづき ¦ 09:35, Saturday, Feb 07, 2009 ×


怪奇1 文章1
少年の頃のノスタルジックなエピソードですね。たかし君は遊びたかったのでしょうね。
オーソドックスで強烈な怖さはないものの、よいお話だと思いました。

名前: じゅりんだ ¦ 10:22, Saturday, Feb 07, 2009 ×


 幽霊と握手したり遊んだり、ごめんなさい、この手の話は苦手ですね。
 描写以前に、趣味的に0点です。
 それに同姓同名という可能性もない訳でもないので。

名前: くすだまん ¦ 11:21, Saturday, Feb 07, 2009 ×


文章 1
怪異 1
怖さ 0
衝撃 0

よくある話で長めの作品だが、整っているし読みやすい文章だ。
しんみりした。

名前: くりちゃん ¦ 15:23, Saturday, Feb 07, 2009 ×


文章+1 怪異+1 恐怖0
しっかり書かれていて好感が持てる。
王道的でよくあるが、大切にしてほしいいい話である。

名前: スロトレ兄さん ¦ 16:13, Saturday, Feb 07, 2009 ×


内容的にはよく聞く話のような気がしてしまって・・・
でも、文章的には しっかりとまとまっています。

名前: SPダイスケ ¦ 16:35, Saturday, Feb 07, 2009 ×


文章もよくこなれていて読みやすく、いい話なのですが、わりと聞く怪異なので。

名前: ひ ¦ 17:17, Saturday, Feb 07, 2009 ×


亡くなった子が戻ってくる、同じ年頃の子のところに遊びに来る、というのはよくある話ですね。
良い話だとは思いますが、よくある話だなぁ、としか思えませんでした。


名前: ひぐらし ¦ 18:41, Saturday, Feb 07, 2009 ×


今回、良い話多めの傾向ですかね?
それに漏れず、良い話でした。
ですが、やはりよくある話なので、話の先が読めてしまいました。
いや、まあ、実話に意外な展開求めるのもアレですけどね…。
スミマセン。

文章:1 怪異:0

名前: PM ¦ 21:58, Saturday, Feb 07, 2009 ×


よく聞く系統の話ですが、読後の切なさが良かったです。
文章とタイトルも凄く良く合ってると思いました。

名前: ゑな ¦ 23:40, Saturday, Feb 07, 2009 ×


しみじみとした良い話でした。なるほど、だからザリガニに興味を示さなかったのですね。ネタ的には小粒ですが、こういう話は好みです。 
文章・1 構成・0 ネタ・0 恐怖・0

名前: 暗沌子 ¦ 11:02, Monday, Feb 09, 2009 ×


いい話ですが、希少度は高くない。
展開が読めてしまったのが少し残念。
文章は丁寧で読みやすかったです。

名前: 黒蜜椿 ¦ 19:24, Monday, Feb 09, 2009 ×


小学生向けの(特に夏休みの)児童文学書に
出来そうなお話です。
長文なのに、書きすぎ、長ったらしいといった
感じはまったくしませんでした。

名前: こたつ ¦ 15:27, Saturday, Feb 14, 2009 ×


後をつけなければ、家族に話さなければ、また会えたかもしれませんね。
いやそれは良くないのかな。でもまた会えたらいいなあと思ってしまう。複雑。

よくあるお話ですが他とは違う余韻が残りました。 +1

名前: 眠 ¦ 00:01, Sunday, Feb 15, 2009 ×


田舎の風景がありありと浮かんできます。
物悲しく切ないお話ですね。
丁寧な描写にとても好感を持ちました。

花田少年史を思い出しました。
こんな親友がいたなんてステキなことですね。
一生の宝物です。

名前: 桜子 ¦ 15:35, Tuesday, Feb 17, 2009 ×


体験者にとっては貴重な思い出になったのでしょう。
ただ、中盤あたりで「たかし」の正体に大体の察しがついてしまうところが、読み物として考えたときには少し辛いように思います。
雰囲気は良かったです。

名前: キザラ ¦ 05:01, Tuesday, Feb 24, 2009 ×


−4 霊感のある人fだったら、死んだ人と遊ぶこともある

名前: ジャック ¦ 03:02, Sunday, Mar 01, 2009 ×


起きた現象に目新しさはあまりなく、先が読めてしまう展開ですが、話自体はよく書けていると思います。

名前: へみ ¦ 04:25, Sunday, Mar 01, 2009 ×


たかし君にもう会えなくなったのが切ないですね。優しさと寂しさを感じました。
田舎の風景が判りやすく、上手く書けていると思います。

名前: わんぴー ¦ 13:12, Friday, Mar 06, 2009 ×


文章・・・1
希少度・・・0

よくある話であり文章も特別優れているという程ではありませんが、その時の様子や体験された方の心情がとても素直に綴られており、好感が持てます。

翌年の夏は田舎に行かなかったんでしょうか?
隆志君が生きている人ではないと知った時点でもう次に行っても会えないんですかね?
そういう霊の世界の決まりごとみたいなものってなんだか興味深い。

名前: 鹿太郎 ¦ 17:10, Sunday, Mar 08, 2009 ×


いい話にはちがいないのだが、展開が心霊美談のパターンなのでどんどん先が読めてしまう。あらためて残すべき話かというと「う〜ん」という感じ。

名前: 魔音 ¦ 17:18, Friday, Mar 13, 2009 ×


内川君は、おじさんの家に遊びに行って、芳雄兄さんの上にもうひとり男の子がいて、今は埋められてなくなっている沼で溺れて亡くなった隆志であると、自分のことを忘れないでほしいということから。

名前: ジャック ¦ 22:29, Tuesday, Apr 07, 2009 ×


幼くして亡くなったたかしくんは、もっともっと甘えたり遊んだりしたかったでしょうに。
内川君を妬んだりもせず、純粋に遊びたいという気持ちだけで出てきたのだろうと思うとせつなくなりました。

名前: 緋咲 ¦ 13:00, Sunday, Apr 19, 2009 ×


ありきたりで先も読めてしまうのですが、とにかく二人が純粋で少し切ない。

名前: 悪夢狂乱丸 ¦ 17:20, Monday, Apr 27, 2009 ×


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