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峠の守護
澤田さんが長距離トラックの運転手をしていた頃の話。

ある日、澤田さんは真夜中の峠道を走っていた。
周囲にはくすんだオレンジ色の街灯が申し訳程度しか無く、右側は鬱蒼とした森に囲まれ、左横のガードレールの向こうには転落したらひとたまりも無いような急な崖が見える。
「もうその時は眠くて眠くて…」
その日は車どころか深夜便のトラックさえも走ってはおらず、対向車すらも擦れ違う事は無かった。
何処かで仮眠を取ろうにも、トラックを止める場所は無い。
眠気は限界に達していたが、急なカーブが続く峠で止まるという行為は自ら事故を招くようなものだ。

「とにかく、休憩できる所まで走らせるしかないからさ」
コーヒーを飲み、時折頬を叩きながら運転していた。

 ビカッ!!

突然フラッシュをたかれたかの様な閃光が目の前一杯に広がった。
対向車のライトかと思い、反射的に急ブレーキを踏んだ。
ハッとして前を見ると、ガードレールすれすれの状態で自分のトラックが止まっていた。
そして気付く。
「俺、ほんの少しの間だけど、光を見る前まで意識が飛んでたみたいなんだ」

かなりの強い光りだったにも関わらず、対向車ではなかった。
慌ててハザードを点灯させ、外へ出て周りを見回したがトラックにも異常は無く、車一台見当たらなかった。

唯一、明かりが起こった場所に一体のお地蔵様がポツンと祀られていた以外は。

「あ、起こしてくれたんだって思ってね」
お地蔵様に丁寧にお礼をし、その後は眠気も無く無事に目的地に着く事が出来た。



また、別の日。
その日も別な峠道を走っていた。冬の始まりを告げるかの様な寒い日だった。
「その時は、俺の他にもう一台同じ会社の奴と二台で走ってたんだ」
澤田さんは同僚の後続を走っていた。
「俺らの前に、もう一台軽自動車が走ってたんだけどさ。そいつが遅くて遅くて…」
澤田さんの前を走る同僚もイライラしているのか、その車に対して右や左に蛇行しながら煽るような仕草をしていた。
「でも、峠だからね。カーブが多くて越すに越せなかったんだよ」
それでも軽自動車の方は気にもしていないのか、ちょっとした直線になっても車線を譲ってはくれなかった。
さすがに澤田さんも痺れを切らした瞬間。

 サッ

突然、澤田さんの前を真っ白い人影が左から右へ飛び出してきた。
「危ないっ!って思ってさ。慌てて急ブレーキを踏んだんだ」
勿論、民家すらない夜中の峠道。こんな所に人などいるはずは無い。まして男か女かすら判らない。
「でも絶対人だと思ったんだ」
急ブレーキにも関わらず、幸いにも澤田さんの後ろから後続の車が追突してくる様な事はなかった。
車を降り、辺りを見回すが特に変わった様子は無い。
人はおろか獣すらも轢いた形跡はなく、安心して乗り込もうと思った時に、目に入った物があった。

祠に祀られていたお地蔵様だった。

「でもその時は、何にも思わずにトラックに乗って走り出したんだよ。同僚は随分先に行っちまってたから、早く追いつこうと思ってたしね」
同僚に追いつこうと急いで走らせていると、前方にトラックが止まっているのが見えた。
「待っててくれたのか?って思ったんだけど…」
トラックは道路を塞ぐように斜めに停車していて、何だか様子がおかしい。

見ると同僚は、あの軽自動車と追突事故を起こしていた。

「何でも、事故を起こした辺りの道路がブラックアイスバーンになってて、軽自動車が滑った所に後ろから突っ込んでいったらしいんだよ」
幸いにも死亡事故には至らなかったが、同僚と軽自動車の運転手は救急車で搬送され、しばらく入院生活を送る事になってしまった。

「もし、あの時人だと思って俺が止まってなかったら、俺も巻き込まれてたんだ」
澤田さんは、自分が助かったのは今でもあのお地蔵様のお蔭だと信じている。



06:33, Tuesday, Feb 10, 2009 ¦ 固定リンク ¦ 講評(21) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(7) ¦ 携帯


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澤田さんはお地蔵様に繋がりのある人なのだろうか。神仏の加護を二度も受けられるとは、澤田さんの後ろの人がお地蔵様に繋がりを持っているのかも知れない。文章については、もう少し削れる所は削ってシンプルに仕上げた方が良いかも。文章 0 ネタ +1 構成 +1 恐 ... 続きを読む

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■講評

怪奇3 文章0
澤田さんお地蔵様に守護していただいてますね。ありがたいお話ですね。
最初に救ってくださったお地蔵様に丁寧にお礼を言われたから、二度目も助けてくださったのでしょう。
お地蔵ネットワークのお陰ですね。
ただ、同僚の方が事故って入院されたのは気の毒ですが…(^.^;)

名前: じゅりんだ ¦ 14:50, Tuesday, Feb 10, 2009 ×


トラッカーシリーズですね。別の峠道ということは違うお地蔵さまですか。地蔵ネットワークがあるのかしら。澤田さんはお礼のつもりでも、こんな山中で拝む人もいないから、お地蔵さまは嬉しかったのかもしれませんね。

名前: ひ ¦ 16:34, Tuesday, Feb 10, 2009 ×


お地蔵さんに守られてる(?)澤田さん。いいなぁ。
守られる理由は何かあるのでしょうか?

名前: ひぐらし ¦ 19:11, Tuesday, Feb 10, 2009 ×


2回目に守ってくれたのは、最初のお地蔵さんのご加護でしょうか?
ちょっとこの辺の因果関係が解りづらかったのですが、なかなかありがたい話でした。
羨ましいです…。

文章:0 怪異:1

名前: PM ¦ 19:19, Tuesday, Feb 10, 2009 ×


文章 1
怪異 1
怖さ 0
衝撃 0

こういうこと(何物かに守られて九死に一生を得ること)はあると思う。この方の場合はお地蔵様であったのだろう。
子供の頃、地蔵盆で真面目にお詣りしていたのかな?お菓子を貰うだけでなく。

名前: くりちゃん ¦ 22:19, Tuesday, Feb 10, 2009 ×


お地蔵様に護られてるとは羨ましいかぎりです。
文章はもう少し削るともっとまとまりが出ると思います。

名前: ゑな ¦ 00:44, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


やっぱり、礼は尽くさなくちゃね。
澤田さんの信心深さが守護につながったのでしょう。
とはいえ、安全運転で!
ほっこり、良いお話でした。

文章1 ネタ1 雰囲気1

名前: ほおづき ¦ 09:50, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


二度ある事は、と言いますから きっと三度目もあるんではないでしょうか。
文章的には もう少し削ってシンプルにしてもよかったかとも思います。

名前: SPダイスケ ¦ 12:03, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


お地蔵様は子どもの神様です。ちゃんと礼を尽くせば、必ず助けてくれます。お地蔵様が大好きな私には、大変嬉しいお話でした。もう少し、文章を練りこまれると良かったかなと思います。
文章・0 構成・1 ネタ・1 恐怖・0

名前: 暗沌子 ¦ 18:04, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


 面白い、読み応えがあります。

名前: くすだまん ¦ 18:20, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


すごく説得力があった。
文章も読みやすく、車の運転をしない自分にも人事ではないと思わせる何かを感じた。

名前: 黒蜜椿 ¦ 12:37, Thursday, Feb 12, 2009 ×


なぜに澤田さんだけ助かったのでしょうか。
信仰心が厚いのか、守護霊様が強いのか。
なにか車に最強のお守りでも下げてあるのかしら。
不思議です。
とにかく強運なことは間違いないですね。
事故らなくてよかった。



名前: 桜子 ¦ 10:07, Wednesday, Feb 18, 2009 ×


事故リそうになった道路の脇に花束や供え物があり、どうも呼ばれてしまったらしい…なんてのはよく聞きますね。
このお話は逆バージョン?

急に思い出した!
深夜の信号無視が多くて死亡事故も発生した交差点が近所にあるんですが、角にお地蔵様がいらしてから事故がない!!
お地蔵様すごい。
個人的すぎるしたまたま気付いただけでどうかとも思いますが、感動したので +3!

夜の峠道がトラックの運転手さんにとっていかに危険かが伝わってきました。
あとは「ビカッ!!」「サッ」をどうにかしていただければ^^;ここだけ浮いてます。 -1

※配点ミスってたので再送信しました;

名前: 眠 ¦ 21:18, Friday, Feb 20, 2009 ×


文章はよくまとまっていてすんなりと読めました。
神仏加護譚としては典型例な感じはするものの、情景も浮かんで楽しめました。

名前: キザラ ¦ 15:23, Friday, Mar 13, 2009 ×


お地蔵様に守ってもらえるとは羨ましいです。
なぜ澤田さんだけ守ってもらえたのでしょう。
澤田さんとお地蔵様を繋ぐ何かが書かれていれば、より良い作品になっていたと思います。
もちろんないものはしょうがないのですが。

いいお話でしたが、それほどのインパクトも受けず、若干の+ということで。

名前: へみ ¦ 23:06, Friday, Mar 13, 2009 ×


日本昔話に登場しそうなお地蔵様ですね。澤田さんは日ごろの行いが良いんですよ。
これからも無事故無違反で頑張ってください。

名前: わんぴー ¦ 18:36, Wednesday, Mar 18, 2009 ×


この長距離トラック運転手の澤田さんは、急なカーブで眠気をもよおして目の前に光が、ガードレールすれすれで止まり、その光の前にはお地蔵様が、また別の日、自分がお地蔵様の白い人影に気がついて止まらなかったら、軽自動車の追突事故に巻き込まれていたとは!気が緩む時、たまたまお地蔵さんがいたのではと思ったから。

名前: ジャック ¦ 20:58, Saturday, Mar 28, 2009 ×


文章ー1 怪異+2 恐怖0
峠の、というより澤田さんを守ってくれているような感じですね。
ドライバーの方には特にありがたい話ですよね。あるんですねえ、こういうことが。
ビカッとか、サッは確かにもう少し表現に配慮した方がいいかも知れません。
他は問題ないと思います。

名前: スロトレ兄さん ¦ 04:05, Monday, Apr 20, 2009 ×


お地蔵様(涙)
都市伝説だとそこで「死ねば良かったのに…」とかになる展開ですが、こういうお話があるとホッとしますね。
何でしょう、そこまで守ってもらえる澤田さんのお人柄でしょうか。
良いお話をありがとうございます。

名前: 緋咲 ¦ 16:37, Monday, Apr 20, 2009 ×


文章・・・1
希少度・・・1

不思議な話ですねぇ。
大きな怪異は起こっていないとはいえ、こういったことがあるとその背後に何かの意思が介在していると思わずにはいられません。
丁寧で穏やかな語り口もこの話にぴったり合っており、好印象です。

名前: 鹿太郎 ¦ 20:52, Saturday, Apr 25, 2009 ×


一度目は丁寧なお礼を、二度目は何もしなかった。この違いは前者が無事到着、後者は同僚の事故という、その直後に待ちうける事態なのか。それとも、澤田さんの次の危機を回避できるかどうかなのか。気になります。

名前: 悪夢狂乱丸 ¦ 17:25, Wednesday, Apr 29, 2009 ×


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