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徹底した拒絶
伊東さんは根っからのインドア派である。
二十代前半の若さだが口癖が「夏は暑くて出歩きたくない、冬は寒くて出歩きたくない」と常に言っている。
インドアといっても部屋の中でゴロゴロしているのが殆んど。
TVゲームに没頭しているか、友人を呼んでの飲み会で、だらだらと話をするのが何より好きだった。

去年のとある冬の日、自宅で飲み会を開いた。友人の梶さんと丸井さんを招いて大いに盛り上がっていた。内容はくだらない事ばかり話していたのだが、酔いがすっかりまわっていた三人は何を話していてもゲラゲラと笑い合っていた。
午前一時をまわるとお酒もつまみも無くなっていた。
「仕方ねえ、買出しにいくか」
三人仲良く連れ立ってコンビニに向かう。
コンビニまでは約一キロ。火照った身体を降り続ける雪が気持ち良く冷やしてくれる。
辺りを気にせずにフラフラとした足取りで騒ぎながら歩いて行く。
突然、丸井さんが一軒の家を指差し「あそこ、これが出るんだって」と両手を胸元でダランと下げる仕草をした。

ああ、そういえば…
伊東さんも噂では聞いていた。殺人事件があったとか。夏には暴走族が肝試しによく来ているとか。

「ちょっと、行って見ようぜ。噂を検証なんてな」
丸井さんは大変乗り気だった。
伊東さんはその手の話は苦手だったが、三人いることと酔いも手伝って「行っちゃうか」とその提案に乗っかった。

家の前に着くと塀の外から中を窺ってみる。
暴走族が来ているという割に外観は、特に家が荒らされている様には見えなかった。
この近所の家と比べても一回り程大きく、門から玄関まで結構な距離がある。多分、広い庭のスペースと思われる。今は降り積もった雪で腰の高さまで一面真っ白だ。
全員、間近で見たのは初めてだった。何となく近付かないようにしていたのだ。
幽霊のことも怖かったし、暴走族も怖かったというのがその理由だ。

「こうしてみると普通の家にしか見えないよね。買い手が付かないのかな。でも、曰く付きなら処分するんじゃないの、更地にするとか」
伊東さんの話にうんうんと二人共頷く。

「では、行きますか」
丸井さんは塀をよじ登ると「トウッ」と声を上げて敷地内に飛び込んだ。
見ると、腰までスッポリ雪に埋まっている。
丸井さんに続き、伊東さんと梶さんも次々に飛び降りた。

丸井さんは既に雪を掻き分けながら少しずつ前進している。
伊東さんと梶さんも続けとばかり、雪まみれになりながら歩き始めた。

二メートル程進んだ頃、「いてぇ〜!」と声を上げて丸井さんが雪中に倒れ込んだ。
「どうした?」と声を掛けながら必死に丸井さんに近付く。
雪に倒れた丸井さんを引き上げると「足、足が痛ぇ」と騒いでいる。
足元は真っ白な雪の中に真っ赤な鮮血が広がっていた。

伊東さんと梶さんで肩を貸しながら歩道に向かって歩き出す。
(きっと、何かを踏んだんだ。病院へ行かないと)
塀を乗り越えようやく歩道まで辿り付き、救急車を呼ぶかどうするかと相談している内に、ふと冷静になった。
これって住居不法侵入とかってならないか?
どうする、どうすると騒いでいると、丸井さんが「とりあえず、伊東の家に連れてって」と言い出した。警察沙汰には誰もがしたくなかった。
それじゃあと歩き出した途端、
『ガシャーン』
背後からガラスの割れる音がした。
振り返ると先程まであった筈の二階の窓ガラスが一ヶ所無くなっている。
四角い暗闇の中に白い影が揺らめいたように見えた。

「やばい、やばい…」と口々に話しながら、伊東さんの家を必死で目指す。


ようやく辿り着いた家の玄関で、丸井さんの靴を脱がせる。靴にはタップリと血が染み込んでいる。
「傷口をみせろ」と足の裏を見るが血でよく判らない。
そのまま、家の中にあがりこむ訳にもいかないので、風呂場にあった洗面器にお湯を汲んで足を洗う事にした。
しかし、いざ洗い流してみると、傷口が無い。出血の場所が判らない。
ただ、足の裏には五センチ程の線のようなケロイドの痕が残っていた。
丸井さんも先程までの刺すような痛みが無くなったという。
不思議な出来事に三人で、唖然としていると外が騒がしくなっている。
消防車のサイレンが何台も鳴り響いては止まる。

「近いぞ」

何となく胸騒ぎがした。
謎の出血も納得出来ていないままだったが、「置いていくな」と愚図る丸井さんを残し、二人で消防車の所に駆けつけた。
あの家が燃えていた。
凄まじい勢いで燃え続けている。

立て続けに起きた現象に二人は言葉を失った。
とぼとぼと歩いて伊東さんの家に戻り、淡々とした口調で丸井さんに説明する。
それ以上、三人共何も話すことが出来なかった。


後日、あの家のことを噂で聞いた。
出火原因は不明。ガスボンベなどは取り外されていたし、通電もされていなかったらしい。
火元と思われる二階には何も原因と思われるものは無く、侵入者という線も考えられないという事だった。
玄関には暴走族対策として、堅固な鍵が取り付けられていた事が、その理由だという。
一番心配していた自分達が敷地内に侵入した雪の痕跡は、話にもあがらなかった。
無人の家から謎の出火として処理され、近所の人々はオバケ屋敷だからということで納得したらしい。


結局、そのお化け屋敷を探索する事は二度と出来なくなってしまった。

伊東さん達が見たものは、何だったのか?
それだけの出血は、何だったのか?
丸井さんの足に未だに残る傷跡は、何なのか?

今、その場所は更地になり、『売地』という看板がひっそりと立っている。



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■講評

怪奇3 文章0
すごく不可解な現象ですね。最後に家が燃えてしまったというのが強烈なインパクトです。その家はそこまでして誰も立ち入らせたくなかったのでしょうか?そう思うと恐ろしいですね。

名前: じゅりんだ ¦ 14:43, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


文章 1
怪異 1
怖さ 1
衝撃 0

家が燃え落ちるというところは劇的だ。
また出血がひどかったのに、傷口はふさがっているし痛みも早や無くなっていたというのは不可思議。
幻覚だったのかも知れないという逃げ道もあるのに、傷跡があるためにそれもできない。

名前: くりちゃん ¦ 15:39, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


酔って件の家に行くまでの部分のいらない様な。
火事になったのは“拒絶”なのでしょうか?

名前: ひぐらし ¦ 16:35, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


怪異は非常に面白かったと思います。
向こう側的にも、いっそ燃やしてしまえ、ってところだったのでしょうか。

文章の方ですが、まず、冒頭の飲み会だのインドア派だのが完全に不要かと思います。
余計な情報を最初に意識させてしまうと、怪異の部分に集中出来ません。
で、肝心の家の方も、最初に無人と書いておいて欲しかったところです。
途中まで人がいるイメージだったので…。

もう少し、読み手に想像させるという点を意識してもらえると良かったかなぁという印象でした。

文章:-1 怪異:2

名前: PM ¦ 17:58, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


無礼なヨッパライの土足で踏みにじられるよりも自死を家が選んだわけですね。
でも出血とケロイドという烙印(火事を起こす予言かな)で、お仕置きは忘れなかったと。誇り高い屋敷だったのですね。

名前: ひ ¦ 18:18, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


最初の部分は必要ないかもしれません。起こった現象は凄まじく、大変興味深いものでした。特に、火災を起こしてまで守りたかった秘密に興味があります。
文章・0 構成・0 ネタ・1 恐怖・1

名前: 暗沌子 ¦ 18:25, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


 なんだか怖い話です。よく取材されていると思います。

名前: くすだまん ¦ 18:49, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


普段から暴走族が肝試しに使っていた、という事は 人の出入りはあったということですね。
ならば 人の侵入を拒絶しての出火というところに疑問を持ってしましました。
そうなると、題名自体に疑問が出てきてしまって。
内容自体は面白かったのですが この点数で。

名前: SPダイスケ ¦ 18:52, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


夏に暴走族がよく来ても出火しなかったのに
3人が入り込むと怪我&出火というのは違う季節のせいか、
それとも3人のうちの誰かに何か関わるものがあったのか・・・
色々謎がありますね。
冒頭の伊東さん紹介文など、削っても影響ない部分が多いのに
怪異のインパクトがぼやけないのが凄いと思いました。

名前: ゑな ¦ 23:26, Wednesday, Feb 11, 2009 ×


怪異のインパクトは中々なのに、
ぼやけていると言うか、怖さが来ないのは、
何故かな…?
ただ、怖がらせて欲しいんです。
それだけで。

怪異1 不可解さ1

名前: ほおづき ¦ 08:21, Thursday, Feb 12, 2009 ×


火事の原因が拒絶されたからと決めつめるのはどうかと思いますが、やっぱり自分たちが行った後に燃えてしまったらと考えるなんだか嫌だなぁ。怖いです。
伊東さん個人の説明はいらないかと。


名前: 黒蜜椿 ¦ 18:39, Thursday, Feb 12, 2009 ×


なかなか怖いです。
忍び込もうとした家が突然燃えるなんて。
家に来るな!と言いたかったのでしょうね。
悲しい霊なのでしょう。

土地は売れたのでしょうか。
これで怪異が終わったとは思えませんね。
新しいお化け屋敷が誕生するのではないかしら。

インドア派のくだりはいらなかったのではないですか?

名前: 桜子 ¦ 12:51, Wednesday, Feb 18, 2009 ×


下手したら放火の容疑者じゃありませんか!
しばらくは「警察が自分たちを捜してるかも」と気が気じゃなかったのでは。別の意味で怖いですね;

血を出させて瞬時に塞いで、ただの怪我ではないと知らしめる。しかも傷を残す。このやり口がまず凄い。 +2
玄関の施錠が強固だから侵入不可というのはちょっと釈然としないけど、調べても火元がわからないのかあ。迷宮入り?
やっぱり、家が自決したんでしょうか。 +1

「夏は暑くて出歩きたくない、冬は寒くて出歩きたくない」
伊東さんとは仲良くなれそうな気がします。
でも不要な説明だなーとも思いました。酔っ払って出かけて空き家に突入!がわかれば十分かも。 -1

名前: 眠 ¦ 23:30, Friday, Feb 20, 2009 ×


何だか家に憑いている幽霊が悩んでいて、三人の会話から「更地にする」決意がついたように読み取れました。
侵入の痕跡も消してくれたのかな。
面白かったです。

名前: キザラ ¦ 16:06, Friday, Mar 13, 2009 ×


出血のシーンは興味深かったと思います。
ただ人物の描写が多いわりには、建物自体の雰囲気があまり伝わってこなかったのが残念なところでしょうか。

名前: へみ ¦ 16:09, Sunday, Mar 15, 2009 ×


暴走族が肝試しで訪れたりするのに、何故伊藤さん達が入った時だけ火災まで起こして拒絶したんでしょうね。 家にいる何かがいい加減切れて怒ったのかな?
長くても読みやすかったんですが、余分な説明が多かったように思いました。

名前: わんぴー ¦ 10:38, Friday, Mar 20, 2009 ×


この伊東さん、梶さん、丸井さんは化け物屋敷に行って本当の怪異現象にみまわれてしまったのかもしれない。
しかし丸井さんの出血がなく、足の裏に残る5センチ程の線のケロイド痕、その後の痛みの消失、謎の出火、おそらく犯してはならない領域に侵入してしまったのだろうから。

名前: ジャック ¦ 23:06, Friday, Mar 27, 2009 ×


文章0 怪異+1 恐怖+1
不思議な体験ですね。
傷を付けて出血させるだけでなく、治して傷跡を残すというのはかなりの霊のなせる技なのではないでしょうか?
拒絶というよりも、何かもっと警告のような、深い意思が働いているような印象です。

名前: スロトレ兄さん ¦ 06:05, Monday, Apr 20, 2009 ×


寒い、しかもそんな豪雪地帯で肝試しをする度胸に感服です(笑)
ひょっとして拒絶ではなく、これから火災に巻き込まれるから入ってはいけないという警告だったかもしれないと考えると、また違った見方が出来ますね。

名前: 緋咲 ¦ 17:34, Monday, Apr 20, 2009 ×


文章・・・1
希少度・・・0

文章は少々大袈裟な箇所もあり、伊東さんはインドア派など不必要と思われる部分もありますが、それでも読みやすく、その場面が想像でき、好感が持てました。
話としてはそれほど強烈なものでもなく(体験された方にとっては強烈な出来事だったでしょうが)もう一山欲しいところではあります。

名前: 鹿太郎 ¦ 21:31, Saturday, Apr 25, 2009 ×


家が自分で燃えたのなら、族に荒らされていた時に燃えてしまっていたように思います。
置いてきぼりの丸井さんに何か起こるのかと期待したけど、何もなかったですね。よかったのですが、残念。

名前: 悪夢狂乱丸 ¦ 17:31, Wednesday, Apr 29, 2009 ×


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