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有美子の母が亡くなった。 義妹と折り合いが悪かった母を、弟夫婦から引き取って二年目の事だった。
父が亡くなった時、子供達は母のために遺産相続を放棄した。 母はそれを全て弟に託し、弟はその金で郊外に広い家を建てた。 母に与えられたのは三畳一間。 義妹は一切の世話を拒み、ろくに食事も与えなかった。 一年後、母に逢いに行った有美子は見る影もなくやつれたその姿に唖然とした。 何か一言喋る度に「ごめんなさい」と首を竦めるその様子に、有美子は半ば強引に母を引き取ったのだ。
通夜と葬儀は親戚のお寺で行われた。 通夜の晩、一番下の妹と共に母のそばで仮眠を取った有美子は夢を見た。
有美子は今自分達が寝ている部屋の隅に立っていた。 横たわった母と、そのそばで寝ている自分と妹が見える。 すぅっと母が体を起こした。 ゆっくり立ち上がると、寝ている二人の所に歩いてくる。 終始目を閉じている以外は、まるで生きていた時と変わらぬ様子で。 そうして、有美子と妹の間に滑り込むと横になった。 そこで目が覚めた。 あまりの生々しさに、妹の方に寝返りを打つ。 母が寝ていた。 穏やかな顔で仰向けに寝ている姿は、寝息が聞こえるような気さえする。 妹の嗚咽が聞こえた。 母の姿が少しずつ霞んでいく。 そしてそのまま空気に溶けるようにぼやけて消えてしまった。 すぐに妹と二人、母の様子を確かめたが、母の亡骸は寝る前と変わらぬ状態でそこにあった。
朝になって、他の弟妹達とその事を話していると、弟夫婦の様子がおかしい。 特に義妹は顔色が悪く、しきりに汗を拭っている。 そのうちにガタガタと震え出し、立ち上がる事さえ出来なくなった。 有美子が奥の座敷で休ませて貰うように言うと、義妹は激しく首を振る。
「寝たらお義母さんが来る」
そう言って酷く怯える義妹に理由を問おうとすると、代わりに弟が口を開いた。 昨夜、弟と義妹が寝ているところへ母が来たのだという。 有美子達の時と同じように枕元まで歩いてきて、寝ている弟と義妹の間に入ってきたのだと。 ただ有美子達と違うのは、弟に背中を向けていたということ。 母は義妹の方を向いて寝ていたのだ。
その後、義妹は体調を崩して入退院を繰り返し、復調するまで二年掛かった。 あれから十数年経つ今でも、時々姑の夢を見るのだという。 あの時の顔がどうしても忘れられないと。 それがどういう顔だったのか、義妹は決して口にしようとはしない。 義妹はともかく、有美子は弟の言葉の方が印象に残っている。
「俺には背中しか見えなかった」
有美子にはそれは当たり前のように思えたのだ。
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■講評
昨今、よく言われる姑虐待の話ですね。ものすごい形相で嫁さんを睨んでいたのでしょう。 自分のお金で建てた家から離れた年月と同じ期間、呪いをかけたわけですね。 流れはよくわかるのですが、最後の一行といい、筆者の立ち位置といい、小説臭くしちゃったのが実話怪談的にはマイナスかも。
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名前: ひ ¦ 16:32, Wednesday, Feb 18, 2009 ×
一番の怪異の、義妹さんが見たお母さんのお顔についての記述が無いので、なんとも消化不良な内容に終わっていますが。 しかしお母さんのお顔については、わかっていたとしても描写するのは、故人に対して失礼にあたりそうですね。
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名前: ひぐらし ¦ 18:01, Wednesday, Feb 18, 2009 ×
切ない話です。 割と読みやすかったです。 弟夫婦のところに出たのは解るとして、有美子さんと妹の間に現れたのは何の意味だったのでしょう? 怖くなかったとかどうとか、この時の有美子さんの心情があると良かったのですが…。
文章:1 怪異:1
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名前: PM ¦ 18:36, Wednesday, Feb 18, 2009 ×
夢ネタは偶然という可能性が高いと思っていますので点数を入れません。 また小説風に書いてあると、実話の場合、かえって真実味を消してしまうように考えます。 |
名前: くすだまん ¦ 18:53, Wednesday, Feb 18, 2009 ×
文章 1 怪異 1 怖さ 1 衝撃 0
姉妹の間で横たわるときには穏やかな寝顔なのに、息子には背中を向けて嫁の方を向いている…すごく恐ろしいです。 「何か一言喋る度に「ごめんなさい」と首を竦めるその様子に」という所が、短いながらも的確に状況が描かれている。お母さんが哀れ。
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名前: くりちゃん ¦ 21:50, Wednesday, Feb 18, 2009 ×
あまりに文章が出来上がり過ぎてるからか、カメラ越しに見ているような距離感を感じました。 同居中、自分の母親が受けてた仕打ちを何も感じなかったのかと弟さんに言ってやりたいです。 |
名前: ゑな ¦ 23:06, Wednesday, Feb 18, 2009 ×
怪奇2 文章0 何だかやりきれないですね。義妹さんもどこか罪の意識を感じていたのかもしれません。そんな形でしか訴える事の出来なかったお母様もまた気の毒ですね。 皆、すべてを水に流して再出発して欲しいものです。感慨深いお話でした。 |
名前: じゅりんだ ¦ 00:45, Thursday, Feb 19, 2009 ×
お母さんは、弟さんには背を向けると いう事で、「貴方とは決別しました」と 告げたのでしょう。 静かな抵抗に、怒りと落胆を感じます。
文章1 怪異1 |
名前: ほおづき ¦ 07:16, Thursday, Feb 19, 2009 ×
まずは弟さんの身になって考えてみました。どんな顔でもいいから、背中を向けられるという徹底的な拒否よりはマシでしょうね。 義妹さんには御愁傷さま、としか言えません。やった事の報いは必ず訪れるのです。単なる恐怖を描いたお話ではないので、色々と入り込める佳作でした。著者の文章力が心地よいです。 文章・1 構成・1 ネタ・1 恐怖・1 |
名前: 暗沌子 ¦ 16:32, Thursday, Feb 19, 2009 ×
文章が非常に上手いと思います。 それゆえに、怪異自体よりも、セリフや言い回しの印象が強く残ってしまい、 怪異としての印象が薄くなってしまったように思います。 |
名前: SPダイスケ ¦ 22:48, Thursday, Feb 19, 2009 ×
夢ネタは難しいですね。 すごく残酷というか可哀相なお話なのですが・・・ でも最後の弟さんの言葉はちょっとぐっときました。
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名前: 黒蜜椿 ¦ 15:28, Friday, Feb 20, 2009 ×
弟さんはお母さんの面倒をちゃんとみてあげていたのでしょうか。 弟さんには背中しか見せなかったのが、単に義妹さんが憎かったのか、そんな状況にお母さんを置き続けた弟さんが憎くて顔も見たくなかったからなのかわからない…。 有美子さんがどっちの理由で「当たり前」と思ったのかも読めない…。 表面的にいちばんダメージを受けたのは義妹さんですが、理由が後者であれば弟さんもかなり傷つくでしょう。 +1
怪異だけ拾えば「亡くなったお母さんが現れました」だけのお話も、背景や人の心模様が絡むとこんなにも重くなるのですね。 この「心模様」というのが微妙で、有美子さんの悲しい気持ちや亡くなったご家族との良い思い出に終始してしまっていたら興ざめです。 そういった当たり前の感情は前面に出さず、冷静に怪談一直線に仕上げた著者さんの手腕には脱帽です。 +2 |
名前: 眠 ¦ 01:46, Monday, Mar 02, 2009 ×
| −4 よくあるひどい話だが、母をないがしろにした義妹、弟の良心の呵責 |
名前: ジャック ¦ 01:58, Tuesday, Mar 03, 2009 ×
| よくどかこかで聞くような話ではあるが、有美子さんの母を粗末にあつかった義理の妹、弟の良心の呵責からくるせめてもの幽霊となった母の復讐と思えるから。 |
名前: ジャック ¦ 00:55, Thursday, Mar 19, 2009 ×
こういうお話を聞くと辛いです。 確かにお母様は長く耐え忍ぶ日々を送っていたのでしょうが 最後は有美子さんに引き取られ、安心して逝かれたのですよね。 それでも、恨みというものは残るものなのでしょうか。 義妹にこんなことしたら天国にはいけないのではないのかなぁと 心配してしまいます。
死ぬ時は誰も恨まず感謝だけして旅立ちたいものです。 |
名前: 桜子 ¦ 18:04, Tuesday, Mar 24, 2009 ×
文章は上手いと思うのですが、実話怪談の書き方としてはあまり好きではないです。 これが悪いと言う気はないのですが、オチの意図も分かりづらく思えてしまいました。 家族の心情の描写等は良かったと思います。 |
名前: へみ ¦ 01:01, Tuesday, Mar 31, 2009 ×
| 弟の言葉が全部を語っていますね。とても良かったです。 話は何とも辛い嫌な話ですが、その分お母さんの有美子さんや妹さんに対する優しさが際立っているように感じました。 |
名前: わんぴー ¦ 14:45, Tuesday, Apr 21, 2009 ×
酷いなぁ。因果は巡るんだよ。 有美子さんとの最後の二年があって本当によかった。 |
名前: 悪夢狂乱丸 ¦ 15:50, Wednesday, Apr 22, 2009 ×
怖いというよりも悲しい気持ちです。 母への仕打ちに何もしようとしなかった弟さんに対しても腹が立ちますが、有美子さんが引き取ってくれて本当に良かったなぁと思います。 胸に訴えかけられるお話でした。 |
名前: 緋咲 ¦ 03:31, Sunday, Apr 26, 2009 ×
文章・・・2 希少度・・・1
いいですねぇ。 派手な現象は起きていませんが、そこに人の情や念を感じることが出来ます。 あからさまな「泣かせ」に走らず、抑えた文章で有美子さんや亡くなったお母さんの感情を伝えることに成功した文章が良い。 特に最後の一文が効いていますので、そこにもう1点加算します。 |
名前: 鹿太郎 ¦ 18:47, Monday, Apr 27, 2009 ×
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