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水口さんは子供の頃から見えない世界を見ることがたまにあった。 普段はそんなことはないのだが、悩みや考え事があり、深く思索を巡らせていると感覚が研ぎ澄まされるのか、この世ならざるものが見えてくるのだという。
彼が大学生の頃、こんなことがあった。 友人に誘われて、水口さんは天狗信仰で有名なある山に行った。 ところが山門を前にした時、水口さんは驚きのあまりそこから一歩も動けなくなってしまった。 その先、山の上へと続くその参道には夥しい数の狐がひしめき合い、人が来るのを待ち構えている光景が見えたのだ。 ある者は手招きを、ある者は揉み手を、またある者は焦る気持ちを抑えるかのようにそわそわしながら、人々が入ってくるのを待っているのである。 友人には気分が悪いからと言い、水口さんはひとまず様子を見ることにして道の端に腰を下ろした。 そして山の頂上に目をやってまた驚いた。 真っ赤な顔には異様に高い鼻、真っ黒に伸びた髭があり、山伏の格好をした巨大な人が頂上で胡坐をかいて座っていたのである。 その背中には羽が生えているようだ。 正に話に聞く天狗の姿であった。
水口さんが呆気に取られている間にも観光客や参拝客が目の前を往来している。 そのうちにふと水口さんは気が付いた。 参拝を終えた人が下りてくると、狐の群の中から一匹が近寄り、ひょいっと肩の上に乗るのだ。 全ての人に狐が乗る訳ではない。 どうやら波長が合った人にだけ、狐は飛び乗るらしい。 しかし、参拝客が山門を潜る際に頂上の天狗に睨まれると狐は肩から落ちてしまう。 この山の周りには天狗が結界を張っており、狐は一歩たりとも外には出られない。 そこで参拝に来た人間の肩に乗り、一緒に出ようと試みるのだが、その度に天狗に阻まれてしまうということらしい。 天狗が睨みを利かせているとは言え、もう山門を潜る気にはとてもなれない。 友人を説き伏せて、そのまま一緒に帰路に着いた。 帰りの列車の窓から、遠のいていくその山を見て水口さんは思った。 「ああ、あれは天狗のいる山じゃなくて、山自体が天狗なんだな」 それから40年、水口さんはその山には行っていない。
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■講評
文章 1 怪異 1 怖さ 0 衝撃 0
巨大な天狗様や狐の結界を見たり、怖いというよりも楽しい感じがした。 それを見てしまってからその山には行っていないということなので、禍々しい雰囲気も感じたのだろうが、絵的にはおとぎ話風なものを想像してしまった。 |
名前: くりちゃん ¦ 13:56, Monday, Feb 23, 2009 ×
天狗というのは、16世紀に入ってから伎楽面の影響から鼻が高くなったと言われています。それまでは羽を持った僧侶の霊と思われていたそうです。水口さんがご覧になったのは、16世紀以後の天狗なのでしょう。珍しい体験だとは思います。 文章・0 構成・0 ネタ・1 恐怖・0 |
名前: 暗沌子 ¦ 17:05, Monday, Feb 23, 2009 ×
これはなかなか惹かれますね。 もし狐と一緒に出ちゃったら、やっぱその人エライ事になるんですかね? ただちょっと、天狗の大きさがイメージし難かったです。 巨大とありますが、何か比較出来るものはなかったんでしょうか? 頂上までの距離とか解れば、容姿がハッキリ見て取れる程の…とか解ったんですけどねぇ…。
文章:1 怪異:1
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名前: PM ¦ 20:04, Monday, Feb 23, 2009 ×
日本昔話の世界ですね。 面白いお話だとは思うのですが… “波長の合った人にだけ狐が飛び乗る”、というところは何だか強引な理由付けに思えました。
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名前: ひぐらし ¦ 20:11, Monday, Feb 23, 2009 ×
おお〜、見たいですね、天狗! 天狗と狐、あまり聞かない取り合わせが新鮮(笑)! こういう話があるから、超−1はやめられませんね〜。
文章1 怪異1 |
名前: ほおづき ¦ 20:50, Monday, Feb 23, 2009 ×
凄い体験ですね。 天狗、見てみたいです。 もう少し天狗についての具体的な描写が欲しかったです。 大きさや表情など・・・ 「まさに話しに聞く天狗」とありますが 多分人それぞれイメージしている天狗って、微妙に違うと思うんです。 |
名前: SPダイスケ ¦ 22:38, Monday, Feb 23, 2009 ×
怪奇2 文章1 民話的要素もある妖怪談で面白いですね。観光客にとりつく狐は一体何を企んでいるのでしょうかね? 文章もまとまって読みやすかったです。 |
名前: じゅりんだ ¦ 12:33, Tuesday, Feb 24, 2009 ×
天狗に興味しんしんなので面白かったです。 その山がどこか・・ とにかく行きたいです!! |
名前: 黒蜜椿 ¦ 16:14, Tuesday, Feb 24, 2009 ×
今年は狸とか妖怪の話が多い・・・。 今度は天狗・・・。 あのう、狐が手招きするというのは招き猫があるんでなんとなく想像できるんですが、狐が揉み手するっていうのはどうかと・・・。狐って二本足の動物じゃないでしょう。猿じゃないんですから。創作なら面白いんですがねえ。 この作品は決して嫌いではないのですが此処は厳しく0点です。 |
名前: くすだまん ¦ 21:01, Tuesday, Feb 24, 2009 ×
天狗と狐の組み合わせは初めてでした。 ただ、狐は山門を入ってくる人を待ち構えているように書かれているのに、肩に乗るのは参拝を終えた人なのが謎でした。 山門をくぐる時点で帰りに乗る人を決めるのでしょうか?興味津々です。
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名前: ゑな ¦ 23:12, Tuesday, Feb 24, 2009 ×
その巨大な天狗はヌシさまですか。日本昔話のような絵が脳裏に浮かびましたよ。 元は外から来る参拝客に憑いていた狐たちだったのでしょうか。 で、この山に落とされて出られないのかなと、いろいろ考えてしまいました。
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名前: ひ ¦ 00:50, Thursday, Feb 26, 2009 ×
名前: ジャック ¦ 23:29, Saturday, Feb 28, 2009 ×
天狗が狐の管理を! これは見てみたい。うーん見たいです。 参拝客が多い日は大忙しですね。一匹たりとも逃がすまいと目を光らせているのでしょう。見たいなあ、その姿。 …最終的に「見たい」しか感想が出てこない^^; +2
読みやすさも手伝ってただわくわくしながら読んでいたのですが、結界の説明はなくてもよかったかなーと。 その前の文章で十分に想像できるので、「はい、やっぱそうですよね…」と一瞬冷めました; ±0 |
名前: 眠 ¦ 21:26, Thursday, Mar 05, 2009 ×
素敵な話ですね。 一見別物の、天狗と狐の関係が解ると嬉しいのですが、そこはこの山の不文律なんでしょうね。実際この手の話は、コダマとか狗神などと同じ精霊とか、人の念の具現化したものなのでしょう。 ただ、見える人の話を、本人の視点や発言だけで進めてしまうと「不思議ちゃんの不思議話」になってしまいますので、書く前は書き手なりに、一度精査してみてはいかがでしょうか? |
名前: 藁兎 ¦ 22:56, Thursday, Mar 05, 2009 ×
| 昔から山には神聖なものが宿るとされているが、その天狗は狐が人間社会に行って何か悪さでもしないように見張っているかのようにもとれるから。 |
名前: ジャック ¦ 18:33, Sunday, Mar 15, 2009 ×
妖怪系の話は大好物なんですが、この話にはなぜか魅力を感じませんでした。 天狗にも狐にも都合があると思うのですが、この話では彼等の行動の理由を決め付けているような書き方だからでしょうか。 なぜわかるのでしょう。 彼らの行動には、私達には想像もつかない理由があるかもしれないのに。 例え書いてある通りの理由での行動だったとしても、もう少し柔らかい表現で説明してもたいたかったです。 |
名前: へみ ¦ 00:53, Thursday, Apr 02, 2009 ×
お化けは見たくないけどコレは見てみたい! 頂上に陣取る天狗と山門の狐、見事な光景です。 参道を上がって真近で天狗を見てほしかったなぁ。 なんて羨ましい体験。
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名前: 桜子 ¦ 17:23, Tuesday, Apr 07, 2009 ×
| 珍しい話に出会えたなぁ。こんな所があるなんておもしろい。 |
名前: 悪夢狂乱丸 ¦ 17:09, Wednesday, Apr 22, 2009 ×
是非この山に行ってみたいです。 でも狐って揉み手するの?(笑)
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名前: 緋咲 ¦ 03:55, Monday, Apr 27, 2009 ×
文章・・・1 希少度・・・2
天狗が狐を下界に下ろさないように見張っているというのは実に新鮮な話です。 天狗の姿形は時代によって変わってきておりますが、山の精霊のような物を視覚化する力を持った人の目にはたまたま鼻高天狗の姿に映ったのかもしれません。 最後に水口さんが言う言葉「山自体が天狗」というのもなんとなく納得してしまいます。 |
名前: 鹿太郎 ¦ 19:52, Monday, Apr 27, 2009 ×
日本昔話をリアルで見たような話ですね。運よく天狗から免れた狐はその後どうなるのかしら?やっぱり悪さをするのかなぁ 読み終わった後にほっこりしちゃいました。 |
名前: わんぴー ¦ 15:54, Wednesday, Apr 29, 2009 ×
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