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バス繋がり
「何か怖い話、してくださいよ。」
 霊感があるという幸一君への取材中、逆にせがまれてしまった。
 ならば…と私は、自分の中では所謂“鉄板”になっている話をする事にした。
 この話はかなり昔に雑誌か何かで読んだもので、比較的有名なものだと思う。
 人によっては解釈の異なる部分もあるとは思うが、細かい描写を省くと以下の通りである。

『とある学校でバス遠足が行われた。
 その途中、山道でバスが落石に巻き込まれ、崖下に落ちてしまう。
 奇跡的に1人の女生徒が一命を取り留めたものの、他の皆は亡くなってしまった。
 後日、遺品の中から出発前に撮ったという集合写真が出てくるのだが、その写真には、助かった女生徒1人を除く全ての者が、目を瞑った状態で写っていたのだという。』

 ここまでを話し終え、私は幸一君の怯える顔を期待したのだが…。
「ちょっと待ってください。それってこの辺の話っスか?」
 まじめな顔で意外な質問が返ってきた。
 そんな事を言われても、私には場所はおろか、実話であるかすら解らない。
 その質問の意図を訊くと、どうやら幸一君の友人がこの話に関係のありそうな体験をしたのだという。


 その昔、とある山道でバスが崖下に落ち、たくさんの人が亡くなるという事故があったらしい。
 事が落ち着いた後、そのバスを引き上げようとしたのだが、地形的な問題があり、今でもそのまま崖下に放置されているのだそうだ。

 幸一君の友人が高校一年生の時。
 この噂の場所を確認してみたところ、さほど遠くない所にある山である事が解った。
 そしてある夏の日の夜。
 友人は原付バイク仲間10人を誘うと、ツーリングがてらそのバスを探しに行く事にしたのである。

 数十分走ってその山に着いた一同は、車通りのない二車線の山道を上りながら、バイクで道路脇をゆっくりと走り崖下を覗き込んでいった。
 しかしここには街灯もなく、ほぼ真っ暗な場所だ。
 加えて、崖の所々に生い茂る木々に遮られ、懐中電灯の明かりもさほど先まで届かない。
 あまり本気で期待していなかった事もあり、もう帰ろうか、となった頃である。
「おーい、ちょっと。」
 仲間の一人、明雄が声を上げた。
 ガードレール脇にいる明雄の周りに皆が集まってくる。
 よく見てみると、古くボロボロのガードレールのとある一帯が、後から新設された事を示すかのように色合いが異なっている。
 それはまるで、昔、大型の車がここを突き破った事を物語っているようにも見えた。
 ここが噂の事故現場なのだろうか?
 そこから崖下を覗き込むと、比較的緩やかな傾斜になっている。
「ちょっと待って。」
 明雄はそう言ってバイクを降りると、そのガードレールを乗り越え、そのまま崖を降りていってしまった。
 
「バス、あったぞー!」
 少しして、崖下から明雄の声が聞こえてきた。
 まさか、と驚きながらも、他の皆も崖下へと続く。
 十数メートル程降りると、崖の途中で平坦になっている部分があり、そこに明雄がいた。
 そしてその後ろには、随分と長い間放置されていたのだろう、ぼろぼろに錆び付いた大型バスが横たわっていたのである。 
 …噂のバスは実在した。
 …と言うことは、ここでたくさんの乗客が亡くなっているはずである。
 ならば今でもその無念の魂が……。
 皆、同じ事を考えたのだろうか。
 特に何をするわけでもなく、「じゃあ帰ろう」という事になり、再び崖を登り始めた。
 登り際、明雄がバスに向かい、両手を前にあわせて拝んでいるのが見えた。
 
 無事崖を登り切り、皆それぞれのバイクに乗ると、山道を降り始めた。
 それからしばらく走り、山道が左への急カーブに差し掛かった頃。
「うぉおおおお!!」
 突然、前の方から悲鳴のような声が聞こえたかと思うと、集団の先頭を走っていた仲間が転倒し、ガードレールに激突した。
 驚く間もなく、続く仲間も転倒したりお互いで接触したりと、辺りは尋常でない状況へと化していく。
 友人も慌ててブレーキレバーを引いたのだが手ごたえがない。
 何度も何度もブレーキレバーを引く。
 その度、スカスカという軽い反応しか返ってこないのだ。
 友人は先に転倒した仲間を回避すると、そのまま曲がり切れずにガードレールに側面をぶつけ、しばらく車体と右足を擦って走った後に何とか停まる事が出来た。
 
「お、おい。大丈夫か?」
 明雄が転倒した皆の近くにバイクを停める。
 明雄だけは無事だったらしい。
 他全員の状態を確認すると、何故か皆揃って右手足を怪我しているようだ。
 ただ、さほど速度を出していなかったためか、皆思ったより重症ではなかった。
 どうやら明雄を除く全員のブレーキが効かなくなっているようだ。
 皆の間にひやりとした空気が流れる…。
 早く山を降りたい気持ちもあってか、それぞれの怪我をかばいながら、皆いそいそとバイクを押して山道を降り始めた。

 苦労しながらなんとか山を降りきると、いつの間にかブレーキが正常に戻っており、そこからは皆、運転して帰路に着いたのである。


「拝んでたからかもしれないっスけど、1人だけ助かった事も含めて、なんかそのバス、微妙に関係ありそうじゃないスかね?」
 なるほど、そう言われると確かに不気味な因果関係を感じなくもないが、「じゃあ、行ってみましょう。」となりそうだったので、私は話をここで打ち切った。
 


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■講評

文章 1
怪異 1
怖さ 0
衝撃 0

「ならば…と私は、自分の中では所謂“鉄板”になっている話をする事にした。」の意味がわかりません。“鉄板”って何かの符丁なのでしょうか。
冒頭部の設定がややこしい。別にそういう仕立てでも構わないのだが、本題に入るのにちょっともたつく。重層的な構成はいいと思うのですが。

名前: くりちゃん ¦ 14:06, Monday, Feb 23, 2009 ×


鉄板の話って西原理恵子さんの漫画によく使われる表現かと思ってましたw 料理の仕方によっては、本当に鉄板で怖い話に出来たかもしれないネタですが、淡々と綴られている為に全く盛り上がりに欠けてしまったと思います。
文章・0 構成・0 ネタ・1 恐怖・0

名前: 暗沌子 ¦ 17:10, Monday, Feb 23, 2009 ×


もう少し雰囲気作りの工夫が必要のように思えます。
もっと怪異の部分で盛り上げて…と思いましたが、これ、怪異自体が盛り上げる程じゃない気もします。
どちらかというと、怪談というより、記録に近い印象を受けました。

文章:0 怪異:1

名前: PM ¦ 20:09, Monday, Feb 23, 2009 ×


冒頭の、この話をするいきさつになった部分は不要では?
“鉄板”という意味がわかりません。

名前: ひぐらし ¦ 20:15, Monday, Feb 23, 2009 ×


じゃあ、行きましょうよ!
とか、無茶を言っちゃダメですよね。
行っちゃダメですよ。
大型バスの事故って…
あの、住んでる県の温泉地に行く途中でも
大型バス落ちたって言うから、
あそこかな〜?

文章1

名前: ほおづき ¦ 20:56, Monday, Feb 23, 2009 ×


この書き方の場合、鉄板ネタよりも強烈な怪異を後半部分に持ってこないと、
元ネタの印象しか残りません。
ならばいっそ 鉄板ネタは入れないか もしくはサラッと書くカンジでもよかったように思います。

名前: SPダイスケ ¦ 22:47, Monday, Feb 23, 2009 ×


どこどこに勤めていた何々さんの話から始まって、誰誰さんがその後どうなったのかは知らない、といった典型的なパターンから脱しようと、凝った構成をされたようにも思えます。
幸一君から取材をしていた時に自分が語った話から意外にも、繋がりを感じさせる話を拾えた。
だが最終的な因果関係を掴むまでの取材には至らなかった。
大まかな枠組みは、こうなるでしょうか。
しかしながら私と幸一君が、二つの話を繋がってるかもと結びつけようとした類似点が崖下のバスと一人だけ助かったというだけで、当初私が手持ちの鉄板話を「場所はおろか、実話であるかすら解らない」と解説しているので、二つの話を結びつける事自体、読んでいて少しためらいを感じました。

作者の方は、実際に幸一君から話を聞いているうちに不気味な因果関係を感じなくもない、そのような気持ちになられたのでしょう。ただ、こうして今度は言葉で事細かに幸一君の体験談が文章として作品に再現されてしまうと、逆に類似点の方が強調されてるほどには見えてこない、そういう弱点を孕んでしまったのではないかとも思えるのです。
また、それぞれの話で一人だけの助かり方のパターンが全く異なるのも、類似点としては納得しかねる部分でもあります。

語り方を工夫された点は面白いと思うのですが、片方は「場所はおろか、実話であるかすら解らない」つまり実話怪談かどうかもはっきりとしない話であり、片方は幸一君の体験談という性質が異なる話を結びつけようとしたために、二人の類推によって相乗効果で怖さをアップさせるまでには至らず、結果としては決定的な結びつきを得られないまま消化不良で終わってしまったように思います。
次回は幸一君から、とっておきの怖い話が聞けることを切望する次第です。

名前: たかくらぶんた ¦ 23:57, Monday, Feb 23, 2009 ×


怪奇1 文章0
冒頭の鉄板話があまり効果をもたらしていないような気がしました。
文章ももう少し削ってシンプルにしたら読みやすかったと思います。
冒頭の話によってまた体験者の怪異が呼び起こされたようで不思議とは感じますが…。

名前: じゅりんだ ¦ 13:37, Tuesday, Feb 24, 2009 ×


昔に雑誌か何かで読んだものが、たとえ必要だったとしてもこの場で作品の中に書くのはどうかと思います。
細かい描写を省くと以下の通りであるといわれてもねぇ・・
“鉄板”ってなに・・・。
おばかですみません。

名前: 黒蜜椿 ¦ 16:19, Tuesday, Feb 24, 2009 ×


 前のバスの話は、詳しい説明など必要ないように思いました。
 前置きが長すぎる。
 3点減点。
 しかし後半の体験談は恐ろしく、此処をもっとメインにして語ればよいと思いました。よって1点は残します。

名前: くすだまん ¦ 21:13, Tuesday, Feb 24, 2009 ×


幸一くんの友人が体験した話は怪異だと思うのですが、それ以外の部分が多くてダラダラした話の印象になってます。
リアルなやり取りを書きたかったのかもしれませんが、長さの割に怪異が弱く感じました。

名前: ゑな ¦ 23:21, Tuesday, Feb 24, 2009 ×


筆者が体験者から逆に実話怪談を話すようせがまれるなど、すでに始まっていますよ。しかも同じような事故内容です。もうこの怪異の前哨戦としか、引きずられているとしか思えませんよ。導入からスリリングでした。

名前: ひ ¦ 00:51, Thursday, Feb 26, 2009 ×


−4 読んでてあきがくる

名前: ジャック ¦ 23:27, Saturday, Feb 28, 2009 ×


全体的にポイントがまとまっていないため、明確な怪異や因果すら判りにくい気がします。怪異に対する因果や因縁は第三者から見ても解るものである必要があり、筆者や書き手だけの想像の範疇では、読者の納得は得られにくいと思います。その点に注力して、前半部分を省略するだけでも、良い作品になると思います。

名前: 藁兎 ¦ 23:14, Thursday, Mar 05, 2009 ×


うううーん。
「鉄板」として語るには、どこかで読んだ比較的有名な話じゃ弱いでしょう。
幸一さんが霊感のある方ならなおさらです。
もっと個性のあるネタを振っていたら、それに見合ったすごいネタを幸一さんが出してくれたかも…と思うとちょっと勿体ない。
このお話、幸一さんの霊感が全く絡んでないですよね^^;

バスを探しに行くという肝試し的な行為から始まって、ブレーキが効かなくなって怪我をしたという、これもまた悪い意味での「鉄板」だと思います。無難でわかりやすくて、間違いない話というか。

「微妙に関係ありそう」という幸一さんに同意です。正直言って微妙です;
著者さん自身も「感じなくもない」と微妙な判定をしているので、関連付けて書かなくても良かったのでは。

ダメ出しばかりでごめんなさい。好きになれない構成でした。 ±0

名前: 眠 ¦ 23:32, Thursday, Mar 05, 2009 ×


バス遠足の時、落石事故に巻き込まれることはあるし、その前に写真を撮れば、助かった女性徒以外は皆目を瞑った状態で写ることもあるし、この文で一番怖いのは、その現場でもしも明雄さんが拝まなかったら?きっと自分たちにも同じようなことが!と思えるから。

名前: ジャック ¦ 18:23, Sunday, Mar 15, 2009 ×


 既に結論は付いた話ながら。
 バスを引き上げることも出来ないような事故現場の十数メートルある崖を難なく上り下りしてしまう体験者たちはレンジャー候補生か何かだろうか。
 バイク事故を起こした後も「いそいそと」帰るくらいだから余程の猛者たちなのだろう。

名前: ときの ¦ 13:56, Thursday, Mar 26, 2009 ×


話の展開は目新しく、興味をひく部分もあったと思います。
ですが怪異が一時的なブレーキの故障だけではあまりにも弱かったです。
事故の前に「うぉおおおお!!」と聞こえた叫び声も、はたしてバイクを運転している者同士でどこまで聞こえるのかなと少々疑問に思ってしまいました。

名前: へみ ¦ 01:02, Thursday, Apr 02, 2009 ×


話の引き出し方が面白かった。
怖がらせてやろうと思った話からもう一つの話に繋がっていく―。
その場で聞いていたらきっとゾッとしただろうな。


名前: 桜子 ¦ 20:35, Monday, Apr 06, 2009 ×


バス遠足の時、落石事故に巻き込まれることはあるし、その前で写真を撮れば、助かった女生徒以外は皆、目を瞑って写ることもあるし、この文で一番怖いのは、もしも明雄さんが拝まなかったら?きっと自分達にも同じようなことが!と思えるから。

名前: ジャック ¦ 19:38, Monday, Apr 20, 2009 ×


今までにない手法で書こうとしたんですよね。それは評価します。
崖の下のバスはきっと不気味だったと思うので、そこを書いて欲しがった。

名前: 悪夢狂乱丸 ¦ 17:10, Wednesday, Apr 22, 2009 ×


そういう話の流れで出てきた話なら、鉄板話も書いておいてかまわないだろうと私は思うのですが。

1つの話からもう1つの話へと繋がっていくというのは個人的に好きです。

名前: 緋咲 ¦ 04:05, Monday, Apr 27, 2009 ×


文章・・・-1
希少度・・・0

作品としての構成を考えると、話の呼び水になっている「鉄板」怪談を先に提示するのなら、その後に続く取材した話は更にそれを上回る話でないといけないと思います。
長々と読まされただけに落胆も大きくなってしまいます。

名前: 鹿太郎 ¦ 15:13, Wednesday, Apr 29, 2009 ×


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