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鍋の蓋
 定食屋を営む塚本さんの話。
 親子二代で二十年以上続く定食屋で、塚本さんは厨房に立ちながら勘定もする女将だった。
 夕刻の迫る頃、彼女は暖簾を出す前に、事務所として使っている座敷に引っ込んで従業員の給料を計算していた。厨房では仕込みが終わりつつある。
 座椅子に座って卓袱台に向かい、電卓をはじきながら人数分の給与計算を終えると、突然厨房のほうからとんでもない轟音が響いてきた。
 破裂するような音と金属音の弾ける音、にぶい音がほぼ同時に聞こえたのだ。
「車が突っ込んできたって言われても、信じられるような音でしたよ」
 事務所になった座敷と、厨房を隔てた壁が少し揺れたほどだ。
 あまりの音に少しの間呆然としてしまった塚本さんだったが、すぐに座敷を出てサンダルを引っかけ、土間から厨房へ回り込んだ。
 ほんの僅かな間だったものの、塚本さんは従業員の声が聞こえないのを不審に思った。
 事故なら悲鳴なり何なり聞こえてくるのが普通のはずだ。
 厨房の暖簾をくぐると、車が突っ込んでいたりはしなかったが、若い従業員はみな腰を抜かして息を呑んでいる状況だった。
「あんたたち、どうしたの?今の音、大丈夫?」
 塚本さんが見渡すと、まず手前におおぶりの鍋が転がっていて、液体がこぼれている。そして厨房の隅にある食器棚が滅茶苦茶になっていた。
 食器棚は倒れたりはしていないが、中程に揃えられていた食器類が粉々になって空きの段が出来ている。
 咄嗟に塚本さんは、「圧力鍋だ」と直感した。
 圧力鍋の内部の圧力は非常に高まるため、もし何らかの弾みで蓋が外れるようなことになると、鍋の蓋が飛んでいってしまうことがある。
 その破壊力は馬鹿にならないどころか殺人的だ。
 瞬間、塚本さんは以前同じ事があったことを思い出した。
「そのときも蓋がパーンと飛んでね、わたしの鼻先数センチのところをこう、掠めて飛んでいったんですよ。ほんとうに危なっかしくて、腰が抜けてしまいました」
 蓋の直撃を免れたとしても、煮えた湯が散乱することもあり非常に危ない。
 それ以来、彼女の店では圧力鍋を使うときは周囲に、特に大将か女将には知らせるよう決めていたのだが。
「あんたたち、圧力鍋を使ったの?どうして事前にちゃんと」
 言い終わる前に、柄にもなく青い顔をした大将が彼女を遮った。
「そうじゃねえ。使ってねえんだよ、今日は」
 転がっているのは圧力鍋に違いなかったが、散乱した液体から湯気などは出ておらず、確かに火が入っているようには見えない。
 鍋に手をかざし、触れてみると冷たかった。
 食器棚の奥を覗くと穴があいており、それは壁まで達しているのが解った。

 数日後、馴染みの工務店に棚と壁の修理を依頼し、来て貰った。
 食器棚を外すとやはり壁に頭ひとつ分ほどの穴が出来ていた。ただし貫通は免れたようだった。
 壁を剥がすと銀色の鍋の蓋が出てきた。横から水平にしてみると、少し歪んでいるのが解った。
 塚本さんには少し気になったことがあった。
 工務店の人に頼んで一階部分の図面を見せて貰った。
 穴の空いた箇所、そして鍋のあった箇所に印を付けて、定規を置いて結んでみる。
 その延長線上に――塚本さんが座って勘定をしていた、あの座椅子の位置があった。



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あっ、この間テレビでやってました。圧力鍋が爆発?する所。圧力鍋についている上部の穴が塞がってしまうと中の圧力で爆発するんですって。... ... 続きを読む

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» 【0】鍋の蓋 [化け猫雑記録から] ×
圧力鍋の蓋に狙われたという事かな。内容の割に長く感じた。もう少し短くしても良いような。最後の「塚本さんには少し気になった事があった」から後の部分は予定調和的というか、都合の良い辻褄合わせのようにも見える。もう少し書き方があったのではないかと思う。 ... 続きを読む

受信: 02:10, Wednesday, Feb 25, 2009

» [超−1]【−3】鍋の蓋 [幽鬼の源から] ×
明らかに怪異の本質を掴み損なっている部分があるために、大きくマイナス評価とさせていただいた。 書き手は“鍋の蓋が女将を狙っていた”ということを怪異の肝としたかったようであるが、それを実証するために必要な条件がかなり欠けている印象である。 過去に一度鼻 .. ... 続きを読む

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» 【+1】鍋の蓋 [I'd like to tell you something about ...から] ×
 一体何が怪異なのか、最初分からなかった。 使ってない圧力鍋の蓋が飛んだ(破裂)って事ですかね。 わざわざ図面を広げて定規をあて�... ... 続きを読む

受信: 02:11, Friday, Apr 24, 2009

■講評

文章 1
怪異 1
怖さ 1
衝撃 0

蓋の飛ぶのは二度目で、しかも調理中でもなかったとは、ひっそりと「塚本」さんを狙っているかのような動きが怖い。
臨場感がある。
ただすぐに蓋を捜さなかったのは不自然に思える。

名前: くりちゃん ¦ 09:12, Tuesday, Feb 24, 2009 ×


済みません、私の頭では一度で理解出来ませんでした。
最後の一文も何が怖いのか、考えてしまった…。
使って無いはずの圧力鍋の蓋が吹っ飛んで、
食器棚と壁がお釈迦になった、と言うことでしょうか…?

怖さ−1 文章−1 怪異1

名前: ほおづき ¦ 13:21, Tuesday, Feb 24, 2009 ×


怪奇2 文章0
これは心霊現象なのかモノノケの怪なのか。圧力鍋に狙われたんでしょうかね。しかし、そんな爆発威力があるとは知りませんでした。殺人事件に発展しなくて何より。

名前: じゅりんだ ¦ 14:54, Tuesday, Feb 24, 2009 ×


物の怪かそれとも・・・・と考えると面白いです。
ただ文章が少し読みにくい気がします。
怖いとは思わなかったけど、面白かった。

名前: 黒蜜椿 ¦ 16:45, Tuesday, Feb 24, 2009 ×


圧力鍋自体が狙っていたのか、何者かの力が鍋の蓋を動かしたのか、
どちらにせよ怖いですね。
まだその圧力鍋は使っているんでしょうかね。

名前: SPダイスケ ¦ 17:50, Tuesday, Feb 24, 2009 ×


何度も塚本さんが危ない目に遭うのなら怪異にもなると思いますが。
この一度だけではただの事故としか思えません。
圧力鍋についての説明がくどく思えました。


名前: ひぐらし ¦ 18:05, Tuesday, Feb 24, 2009 ×


最初読んだ時、最後まで何の話かよく解りませんでした。
使ってない圧力鍋のフタがバーンと、塚本さんのいた方向めがけて飛んでいたって事ですかね?
圧力鍋の危険性については細かく書かれているものの、肝心の怪異になる部分がなんだかぼやけており、話そのものが解り辛かったように思えます。

文章:-1 怪異:0

名前: PM ¦ 20:10, Tuesday, Feb 24, 2009 ×


 よく取材してあり、なんとも怖い。
 なぜ女将さんが狙われているのか意味不明というのが怖さを倍増させています。
 それも凶器が圧力鍋の蓋というのは初めてです。

名前: くすだまん ¦ 22:11, Tuesday, Feb 24, 2009 ×


使ってない鍋がそんな状態になるのは凄い事だと思うのですが、2回しか起こっていないことで女将さんを狙っていると決めるのは早い気がします。
文章はとてもお上手ですね。最後の締め方が好きです。

名前: ゑな ¦ 00:35, Wednesday, Feb 25, 2009 ×


とても判断に困る話ですね。
と言うのも、この作品では出来事の要所要所が何故か抜け落ちていて、そこが怪異の流れを分かりにくくさせているように思いました。

作品に書かれているこの当日の様子は、塚本さんは座敷に引っ込んでて厨房では仕込みが終わりつつある頃です。
で、とんでもない轟音が響いて塚本さんが何事かと見に行くのですが、ここから先に書かれているのは鍋爆発の事後の様子だけであり、爆発時に厨房では仕込みが終わりつつあったはずなのにその時の従業員はどうであったのか、作品を読み返してもどうもはっきりとしないのです。
爆発前の鍋がどうであったのかも大将の言葉だけでは全く想像がつきません。
そして、この話は塚本さんの目線で書かれているので、おそらくは塚本さんから取材したように思うのですが、それにしては鍋からこぼれた液体が水なのか料理のだし汁であるかとかも知りたいことがいまひとつ見えてこない場面があったり、厨房の破壊された光景がクローズアップされている割には位置関係すらもはっきりとせず、そのへんが読んでいてどうにもすっきりしない部分でありました。

細かく書き込まれた文芸怪談ミステリー仕立ての筆致は面白いと思います。
ただ、ミステリー風に進めるのであれば、鍋が爆発したら座椅子の向きへと飛ぶのはあまりにも不自然であるとか、もう少し具体的に厨房の様子を書く必要があったかもしれません。

名前: たかくらぶんた ¦ 01:07, Wednesday, Feb 25, 2009 ×


怪異自体は怖ろしいものであり、料理の仕方によっては化ける話だと思います。もう少し、位置関係が明瞭に判れば良かったのですが。
文章・0 構成・0 ネタ・1 恐怖・0

名前: 暗沌子 ¦ 13:44, Wednesday, Feb 25, 2009 ×


つまり二度とも蓋は塚本さんを狙っていたということ?
使用中なら偶然の範囲内でしょうが、二度目は煮炊きしていませんよね。
塚本さんを狙っていたわりには、壁を考慮に入れないとか、厨房にいる時に暴発しないとか、かなり大雑把です。
もう少し文章を短く整理していただけると怪異も際立ち、理解しやすいと思いますが。

名前: ひ ¦ 21:42, Sunday, Mar 01, 2009 ×


−4 これは単なる自然現象なのでは?

名前: ジャック ¦ 02:41, Monday, Mar 02, 2009 ×


圧力鍋、怖っ。地道にコトコト煮るのがいちばんだ…。

二回ともどういう状況で蓋がぶっ飛んだのかよく分かりません;
一回目も不自然なら女将さんが狙われているとも思えますね。
二回目は不自然だとは思うのですが、蓋がしてあれば加熱中に限らず飛ぶ事例もあるようだし…うーん。
いや、料理人の皆さんなので、圧力鍋の扱いを間違えたとかパーツが磨耗してたとかは考えづらいかな…うーん。

どの位の大きさの鍋でどのような状況になると蓋の破壊力がここまで凄くなるのかが素人には分からないのがまた難しいです。

何らかの悪意、「かもしれないね」で止まってしまいました。
丁寧に書かれているようで決定的な何かが足りないというか…。
グダグダした感想で申し訳ない。 ±0

名前: 眠 ¦ 12:43, Friday, Mar 06, 2009 ×


その圧力鍋の蓋は、完璧に塚本さんの定食屋を狙ったものじゃないかな?とおもったから。きっと親子二代で二十年以上続くとあるので人の妬みではなかろうか?

名前: ジャック ¦ 01:20, Sunday, Mar 15, 2009 ×


 この話で女将が狙われていた、と結論づけられても困る。
 それならもっと直接的に何かすれば良いわけで、遠く離れたところで向きだけ合わせてみてもそれが直撃することなど端から期待できないだろう。
 日本のバミューダ・トライアングル並みにこじつけとしか思えない結論だ。そもそも何故そこを直線で結んでみようなどと思いついたのだろう。

名前: ときの ¦ 15:28, Thursday, Mar 26, 2009 ×


もしも鍋の蓋が塚本さんを狙っていたのであれば、一度目に直撃していればいいだけの話で、解釈が強引すぎると思いました。
不思議な現象ではあると思うのですが、実際には何か原因があったのかもしれません。
厨房での安全な職務のためにも、無理なこじつけをせずに、みなさんで原因を考えてみて欲しいものです。

名前: へみ ¦ 00:28, Friday, Apr 03, 2009 ×


鍋の蓋に狙われるような覚えがあったのでしょうか。
最後の文章で何を伝えようとしているのか疑問に思いました。
そこまで考えるにはなにか訳があるのかなぁと。
お給料の計算をしていたのだから金銭がらみか。
従業員の誰かが給料の額を不満に思っていて知らずにサイコキネシス発動させたとか。
あはは、考えすぎですね。

でもなぜ鍋の蓋が吹っ飛んだのかは不思議です。

名前: 桜子 ¦ 20:04, Tuesday, Apr 07, 2009 ×


これって怪異なのかなぁ。何でもかんでも心霊現象とするのも、どうかと思うのですが。

名前: 悪夢狂乱丸 ¦ 15:27, Saturday, Apr 18, 2009 ×


うわぁ、気持ち悪い。
女将さん、誰かに恨みを買った覚えとか無いんですかね?
もしくは鍋自体が女将さんに恨みを?
もう鍋変えちゃった方が良いんじゃないですかね。

名前: 緋咲 ¦ 05:06, Monday, Apr 27, 2009 ×


文章・・・0
希少度・・・0

まるで蓋が塚本さんを狙ったというように判断されてますが、それはこの作品で読む限りどうもこじつけのように思えます。
使っていない圧力鍋が突然ふっとんだというのは怪異かどうかは微妙なところがありますし、怪異としても些細なものと受け取られるでしょう。

名前: 鹿太郎 ¦ 15:38, Wednesday, Apr 29, 2009 ×


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