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今から六十年程前の、伴さんが子供の頃の話。 伴さんの実家はとある地方の、今ものどかな田舎風景が広がっているところである。 伴さんがまだ小学校三、四年生くらいだった頃、近所にお産を間近にしたお嫁さんがいた。その家にとっては初孫で、家人は生まれてくる子供を楽しみにしていた。 しかし月満ちて生まれて来た赤ん坊には 全身に鱗の様なものが生えていた。 そのお嫁さんの家族は 「生まれてくる子はまずは男の子でないとならん。男の子であります様に。お腹の子供に良い様に、良いお産が出来る様に」 と何かと精のつく様なものをお嫁さんに食べさせていた。食べ物以外でも、村のよろず屋で当時販売されていた<マムシ栄養剤>なるものを時々買って飲ませていたという。 それは茶色の小瓶に入った、今でいうドリンク剤のはしりの様なもので、当時の若い人達の間で流行っていたらしい。 お嫁さんはそのドリンク剤が気に入り、お産間近には自分でもよく買って飲んでいたという。 お嫁さんの家族は、いくら精がつくからといっても、そんなものをたくさん飲むのは、と飲むのを控える様に言っていたが、お嫁さんは 「お義母さんたちの言う様に、まずは男の子を生まないと」 とやめなかった。 現在でいえば子供がそうした姿で生まれたのは遺伝子等の問題か、家族が言っていた様にドリンク剤や他の何かの影響、として説明のつく事だったのだろう。 しかしそこは昔の事、 「ありゃあヘビゴやで。蛇児」 「マムシさんの祟りやで」 「あんなもん飲むよってにさぁ」 と噂になった。 当時そのあたりは医者どころか産婆もいない様なところで、村の女性は月が満ちれば一人でお産をするのが普通とされ、初産やお産が重い時は妊婦の母親や近所の経産婦がお産を手伝うならわしになっていた。 出産のたびに誰かの手伝いを必要とする様な女性は 「子供を一人で産めん様ではおなごとはいえん」 などと陰口を言われる土地だった。 お嫁さんはよその土地から嫁入りしてきた人だったが、やはり病院等ではなく嫁入り先で出産し、初産だったので義母や近所の女性たちが手伝いをした。 生まれてきた赤ん坊の姿に皆が驚いているなか、赤ん坊は生まれてすぐに亡くなったという。 当時そのあたりは土葬だったので、赤ん坊の亡骸は家人がその日のうちに寺へと運び、墓地に葬られた。 しかし村人の間では、本当はすぐに死んだのではなく、赤ん坊の姿を忌んだ家人が生きたまま山に捨てた、いや川に流した、などという酷い噂までたった。 そういった噂と奇異の目のなか、お嫁さんは出産後様子がおかしくなり、部屋にこもったまま一日中何かブツブツと言っていたり、時には大声を出して泣きながら暴れる様になってしまい、家族はそのお嫁さんを納屋の二階に軟禁してしまった。 お嫁さんの様子も現在では心因性のものとして説明がつくのだろうが、当時の人達はこれも蛇憑きの祟りだマムシの呪いだといっそう騒ぎたて、小さな村は噂で持ちきりになった。 困った家族は蛇憑きのお祓いとお嫁さんの気の病を治してもらうために、村の<拝み屋さん>を呼ぶ事にした。 雨乞いや怪異があった時に祈祷、お祓いを行うのも拝み屋さんの仕事だが、当時の医師もいない様な村では、薬草などから薬を作り、村人たちの病や怪我の“治療”をする事も拝み屋さんの仕事だった。 拝み屋さんはふたつ返事ですぐに件の家にやってきた。 そして出迎えた家人に玄関先で挨拶をし、納屋の敷居をまたごうとした時、 ドガンッ!バリバリバリッ! という大きな音がした。 音がしたのは納屋の屋根か天井のあたりで、天井の梁でも折れて崩れたかの様な凄い音だったという。 家人が驚いていると拝み屋さんは 「おお、ワシが来る前に逃げ出しよった。賢いやっちゃ」 と笑った。 拝み屋さんと家人がお嫁さんの様子を見に行くと、お嫁さんは納屋の二階の部屋で、白目を剥き、泡をふいて倒れていた。 拝み屋さんはそのお嫁さんの半身を起こす様に家人に言うと、数珠を巻いた手で何事かを唱えながらお嫁さんの背中をパンパンと叩き、次にはお嫁さんの額に御札を当ててまた何事かを唱えながらポンポンと頭頂部を叩くと、そのまま目を覚ますまで休ませておく様にと言った。
家人は納屋の屋根や天井裏に上がり、音が轟いたあたりを見てみたが、どこにも異常はなかった。 あの凄い音は何だったのか、と家人が拝み屋さんに言うと、拝み屋さんはその家とお嫁さんに取り憑いていたたちの悪いものが逃げて行った時の音だ、と言った。 たちの悪いものというのはやはり蛇だったのか、と家人が言うと 「蛇もやが、他にも色々憑いとったみたいやな。あんたら自身の欲も。あんたらは、はじめに産むのは男の子でないとならんとか、お産ぐらいはひとりで出来んとおなごやないとか、よそから来た若い嫁さんに可哀相な事を色々言うとったやろ。だからこんな事になったんや」 いつもは感情を表に出さない拝み屋さんは、珍しく語気を強めて言った。 「誰でもやないが、人によってはそういう事を考えとったらロクなもんは呼び込まん。本人の中にも悪いもんがたまる。ここの嫁さんにはそういうもんが憑いてしもたんやろ」 拝み屋さんはそう言うと煎じ薬をいくつか渡しただけで、お祓いはせずに帰って行った。 しばらくするとお嫁さんは元どおりになり、次に生まれた子供は普通の、五体満足な子供だったという。
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■講評
この怪異にマムシ栄養剤は関係あるのだろうか。 ますそこが気になった。 拝み屋がいうように蛇や他にも色々憑いていたのだと思うので、前半の説明はもう少しカットしても良かったのでは・・・。 拝み屋が出てきて理由を述べているのになんか最後すっきりしない感じ。 悪いものが溜まっていただけかぁ・・・
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名前: 黒蜜椿 ¦ 07:12, Friday, Mar 13, 2009 ×
うう〜ん、自分で「今では〜と言うことで説明出来るかもしれないが」 としてしまうと、後の怪異がすんなり入って来なくなっちゃうような。 折角、文章は整然とするなか、そこが際立ってしまった気がします。
文章1 |
名前: ほおづき ¦ 12:54, Friday, Mar 13, 2009 ×
怪異というより、因習あふれる山村の排他的な人の心がまねいた悲劇という感じが強くしました。何かお嫁さんの鬱積した怒りがサイコキネシス的にバクハツした感じがするんですよ。
でもそうやって読むと、拝み屋さんは今で言う“精神科医”であり、祓ったのは村人の心だった、と納得ができる気がしました。 |
名前: 魔音 ¦ 16:55, Friday, Mar 13, 2009 ×
| いくら生まれてくる子供は、男でないとならんといっては、マムシ栄養剤を飲ませていたら全身に鱗がはえている蛇児もうまれるし、そんな理由で殺されたマムシのたたりがあっても当然、また、お産くらい一人で出来んとおなごやないとか、現代の医学では、考えられないようなことだから。こんなことが起きても仕方がないから。 |
名前: ジャック ¦ 20:09, Friday, Mar 13, 2009 ×
あれ? マムシドリンクは…? 怪異のきっかけとなるように思わせておきながら、あっさりと消えてしまって以降出てこないので、ちょっと戸惑いました。
あとこれ、伴さん、話にまったく絡んでいませんね。 話の内容的には随分と詳しく書かれているので、伴さんがその場にいたものと思われるので、伴さん目線で書いた方が良かったように思えます。
文章:-1 怪異:1
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名前: PM ¦ 22:01, Friday, Mar 13, 2009 ×
一見のどかな田舎の裏側にある暗い根強い因習と、それゆえに起こった怪異というか。 そういった因習や、祟りだ呪いだと騒がれた出来事の犠牲になった人は沢山いるんだろうな。 亡くなった赤ちゃんのご冥福を。もう生まれかわっているのかもしれませんが。
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名前: ひぐらし ¦ 22:07, Friday, Mar 13, 2009 ×
拝み屋さんてお祓い以外にも色々任されていたんですね。 昔の生活や迷信などを知ることができるお話だったと思います。 途中に挟み込まれている「今なら・・・」という文章は、怪談としては雰囲気を 壊してしまうものだと分かってはいるのですが、投稿者さんはあまりの出来事に 書かずにはいられなかったんだろうなと思いました。
げに恐ろしきは生きてる人の無責任な悪意ですね。 講評と称して無責任にあーだこーだ書いてる私が言う事じゃないですが・・・
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名前: ゑな ¦ 23:02, Friday, Mar 13, 2009 ×
文章 1 怪異 0 怖さ 0 衝撃 0
魚鱗癬の赤ちゃんだったの… 昔は医学知識などなかった時代だからそういう発想もあり得ただろうが、本当にこの手の話はやりきれない。 蝮ドリンクだとか、ドカンバリバリ、とか道具立ては整っている割に、拝み屋さんがセラピストみたいで現代的。 時代背景からすると戦中から戦後くらいの時のようだが、そういう昔って初産の人は里(実家)に帰るんじゃないのかなあ。
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名前: くりちゃん ¦ 20:40, Saturday, Mar 14, 2009 ×
怪奇1 文章0 心因性のものが原因とするならば、心霊現象とはあまり関係ないかもしれません。 特殊な村社会の風習が生んだ悲劇とでもいいましょうか。 ラストは一応めでたしでよかったですね。 |
名前: じゅりんだ ¦ 13:13, Sunday, Mar 15, 2009 ×
なんとなくダラダラした文章です。これといった怪異も見当たらず、印象の薄いものになりました。 ちなみに私、マムシドリンクは好きで良く飲んでましたけどw 文章・0 構成・0 ネタ・0 恐怖・0 |
名前: 暗沌子 ¦ 14:32, Monday, Mar 23, 2009 ×
前半の怨念話のような重さと、後半の民話調の展開がちぐはぐ。いろいろなアイテムやネタが盛り込まれているわりに、たいして意味をなしていない。語り手が整理せず話したものを皆書き連ねてしまった感じ。 「現代では」という言わずもがなの説明も興を殺ぐ効果しか生み出していない。 そして何より怪異としては音のみ、それとてお嫁さん(あるいは他の何か)が出した現実の(怪異ではない)音ではない、ということが全く検証されていない。拝み屋さんの解釈しか存在していないので。 |
名前: ときの ¦ 16:13, Friday, Apr 03, 2009 ×
| 「現在では説明がつく」とあれば、怪異ではなくなります。どう読めばいいのかわからなくなります。 |
名前: 悪夢狂乱丸 ¦ 16:29, Monday, Apr 06, 2009 ×
筆者さんは怪異よりも、悪しき因習を糾弾することに文字を費やしてしまったようです。 「鱗のある子供の誕生(但し噂の域を出ていない)」「お嫁さんの変化」「怪音」のうち、 怪異と呼べるものは「怪音」だけでは・・・・・
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名前: ひ ¦ 15:51, Tuesday, Apr 14, 2009 ×
何となく間延びした文章のような印象を受けました。 怪異がちょっと弱いです。 |
名前: SPダイスケ ¦ 00:19, Monday, Apr 27, 2009 ×
昔話のようなお話ですね。 拝み屋さん、良い事を仰る。 鬱も人の良からぬ念が関係しているということですかね。 でも蛇は憑いてたんだ…。 |
名前: 緋咲 ¦ 04:33, Tuesday, Apr 28, 2009 ×
文章・・・-1 希少度・・・0
怪異らしい出来事が起こるたびに、それは遺伝子の問題だの心因性のものだのと科学的考察を加え、自ら怪異を駆逐していってます。 まあ確かにそういうことなんでしょうが、作中で書き手がそう言ってしまっては元も子もないのでは? そして最後に登場する拝み屋さんまでもが、まるでストレスか何かが原因であるかのような解説をしてお祓いもせず薬を渡して帰っていきます。 元々が微かな怪異であったところをその全てを抹消してしまう勢いです。 結局書かれた方はこの作品で何が言いたかったのでしょう? 一昔前の田舎の無知蒙昧を指摘したかったのでしょうか?
ところで「蛇児」という言葉、久しぶりに聞きました。 子供の頃に読んだ中岡俊哉著「悪霊 その恐ろしき霊体験」以来です。 |
名前: 鹿太郎 ¦ 01:36, Thursday, Apr 30, 2009 ×
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