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小雪さんは、数年前に鬱病になったことがあるという。 今は元気で明るくそんな過去があったようには見えないが、当時の病状は酷くトイレに行くのがやっとという状態だった。 通院をしばらく続けていたのだが、ある日その病院の待合室でひとつの張り紙が目に留まる。 『猫がたくさん生まれてしまい困っています。引き取っていただける方はこちらまで連絡をください』 というものだった。 元々動物が好きな小雪さんは、もしかしたら今の病気を治すきっかけになるかもと思い、連絡を入れてみた。 「一匹なら引き取れますが・・・」 小雪さんがそう電話口で告げると、相手は「今から伺ってよろしいですか?」と訊き、すぐに小雪さんの家に訪れた。
訪ねてきた女性は、一匹の仔猫を箱に入れたまま小雪さんに渡すと 「ありがとうございます。野良猫がたくさん産んでしまって・・・。よろしくお願いします」 とだけ告げ、逃げるように帰っていってしまった。 子猫は汚れていた。 その上、とにかく人を怖がっている様子で、抱くことはもちろん、撫でることすらままならないような状態だった。 ノミも酷く、動物病院に連れて行ってノミをとってもらったのだが、それすらも大変な作業だった。 小雪さんはそのメスの茶トラの仔猫を『ぷりん』と名付け、また子供を作られても困ると思い、家の中で飼うことに決めた。
小雪さんはぷりんを可愛がったが、ぷりんはいつまで経っても小雪さんに懐かなかった。 触れようとすると毛を逆立てうなり声をあげる。 食事すら小雪さんが見ている前では摂ろうとしなかった。 だが小雪さん自身も当時は極度の人間不信に陥っており、ぷりんの気持ちがわかるような気がしていた。 小雪さんも無理にぷりんに接しようとはせず、食事を出すと寝たふりをしてひとりで食べさせるようにしていた。 どんなにぷりんが懐かなくても、ぷりんへの愛情は日増しに膨らんでいった。
ぷりんとの生活が続いていたある日、小雪さんのちょっとした不注意からぷりんは外に逃げ出してしまった。 慌てて追いかけたが捕まえられるはずもなく、ぷりんはあっという間に夜の町並みに溶け込んでいった。 ぷりんは数日経っても帰ってこなかった。 小雪さんは寂しかったが、狭い部屋に嫌がるぷりんを閉じ込めて育てるよりも、このほうがよかったのかもしれないと思うようになっていた。
小雪さんは以前と同じひとりに戻った。 病状が快方に向かう気配も皆無だった。 そんなある日、テレビで聞いたちょっとした言葉がきっかけで、小雪さんは自殺することを決める。 元々生きている意味はなかった。 死ねば楽になれる。 なんで今までそれをしなかったのかが不思議に思えるくらいのあっさりとした感情が、突然小雪さんの中に芽生えた。 紐を吊るし、ちょうどいい高さに『輪』を作る。 椅子の上に乗り『輪』に首を通し、あとは椅子を蹴るだけの状態になった。
暗い部屋で心の準備ができた小雪さんが目を瞑ると・・・・・・。 ふいに足元から「ミーミー」と猫の鳴く声が聞こえた。 驚いて下を見ると、椅子の足元には今まで自分から小雪さんに寄ってきたことのないぷりんが、小雪さんを見上げて必死に鳴いていた。 部屋のドアは閉め切ってあり、ぷりんが戻ってこられるはずはなかった。 だが確かに足元にはぷりんがいる。 小雪さんは『輪』に入れてあった首を引き抜くと、椅子から降りてぷりんに手を差し伸べた。 ぷりんは嬉しそうに小雪さんの胸に飛び込んできた。 と同時に姿が消えた。
暗い部屋の中にひとり取り残された小雪さんは、もしかしたらぷりんもどこかで死んでしまっているのではないかと考えた。 それならば、なおさら生きている意味はないと思えた。 小雪さんがもう一度椅子に乗ろうとしたとき。 玄関の外から先ほどと同じ「ミーミー」という声が幽かに聞こえた気がした。 まさかと思いながらも小雪さんがドアを開けると、そこには寒さに震えるように小さく丸くなったぷりんがいた。 小雪さんを見詰めながら、今まで発したことのないような甘えた声で「ミーミー」ともう一度鳴くと、小雪さんの差し出す手に乗っかってきた。
小雪さんはぷりんを抱きしめた。 今度は幻ではなかった。 いつまでも甘えた声で鳴き続けるぷりんを、小雪さんは涙を流しながら抱き締め続けた。 自分が死んだらぷりんはどうなるのかと思うと、自然に「ごめんね。ぷりん」という言葉が小雪さんの口から洩れていた。 その夜は泣き疲れて、ぷりんを抱きながら一緒に眠った。
朝、目が覚めてもぷりんは昨夜のままだった。 あんなに小雪さんのことを怖がっていたぷりんは、その日以来小雪さんにべったりになってしまった。 それがきっかけとなり、小雪さんの鬱病も憑き物が落ちたように忽ち完治した。
ぷりんは今八歳になっている。 「鬱のときってね、本当に何もできないの。今思えばそれなのに猫を飼おうと思えたことも不思議なのよね。縁があったとしか言いようがないかな」 嬉しそうに微笑む小雪さんは、今も命の恩人と共に幸せに暮らしている。
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受信: 13:34, Thursday, Apr 16, 2009
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受信: 16:35, Tuesday, May 19, 2009
■講評
文章 1 怪異 1 怖さ 0 衝撃 0
「ぷりん」はツンデレですかw 動物を飼うことによって病気が好転したのは大変よかったと思います。 あわや、という時に「ぷりん」が現れてという展開に出来すぎ感もありますが、愛情をたっぷり注がれた動物ならばご主人の一大事を察知することもあり得ると思います。 ただ全然怖くなくて、私の中では「動物にまつわる不思議な話」という位置づけですね<笑
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名前: くりちゃん ¦ 08:10, Tuesday, Mar 24, 2009 ×
これは凄くいい話なのですが、怪異自体は小粒な気がします。 鬱病は大変だと思いますが、その病気自体は憑物でもなく、小雪さん自身の問題というところも怪異を検証する上で弱くなったと考えます。 少し綺麗に書きすぎて出来すぎな感じがする。 |
名前: 黒蜜椿 ¦ 10:10, Tuesday, Mar 24, 2009 ×
あれ? 猫をくれた人の態度から、何かワケアリな猫なのかと思っていましたが、それが明らかにならないまま、なんだか思わせぶりに終わってしまったように思えます。 他にも意味がありそうで無い描写がある割りに、縄で輪を作った状況描写とか、肝心の肝になる部分が希薄で、全体的にバランスが整っていないような印象を受けました。 読み易くはあるんですけどねぇ…。
良い話ではあるのですが、怪異としては小粒な方かなぁと思います。
文章:0 怪異:0
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名前: PM ¦ 19:14, Tuesday, Mar 24, 2009 ×
| まさに小雪さんに生きる勇気と希望を与えてくれたプリン。これからもその関係を大切にしてください!人間と動物の心温まる話であるから。 |
名前: ジャック ¦ 19:49, Tuesday, Mar 24, 2009 ×
“不思議なちょっと良い話・動物編”の様な話ですね。 読んでいて、話がドラマの様に綺麗に都合よくまとまり過ぎている様に思えました。 また、猫を飼っている者としては“ミーミー”とないた猫がいったいどのくらいに成長していたのか(そこそこ成長していたのなら“ミーミー”というなき方はおかしいのでは?)、この話がここ数年の事で、仔猫を獣医に診せたのなら、犬猫の蚤の駆除は最近では大変なものではなく、望まない繁殖を防ぐには部屋に閉じ込めて飼うのではなく違った方法を獣医にすすめられるのに?、といった細かい事が気になってしまい、話の信憑性に疑いを持ってしまいました。
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名前: ひぐらし ¦ 21:33, Tuesday, Mar 24, 2009 ×
| 文章も丁寧だし読みやすかったのですが、私の中では「怪談」でなく「いい話」になってしまいました。ごめんなさい。 |
名前: ゑな ¦ 23:22, Tuesday, Mar 24, 2009 ×
今回だけでなく、 ずっと言われている事ですが、 「鬱病」と出てしまうと、話が微妙になってしまいます。 幻覚を見る事もある症状かもしれないので。 そうではないと、確信させる物が欲しいです。 その上、小粒で、その…もう、猫ネタもお腹いっぱいです。
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名前: ほおづき ¦ 21:08, Wednesday, Mar 25, 2009 ×
名前: 竹内邦夫 ¦ 16:09, Tuesday, Mar 31, 2009 ×
怪異と呼べるのは、辛うじて一つぐらいかと思われる。猫を書けば良かろうものでもなかろうに。『優しさの結束』があれほどの高評価を得たのは、猫の話だからではないことに気づいていただきたい。 文章・0 構成・0 ネタ・0 恐怖・0 |
名前: 暗沌子 ¦ 16:41, Thursday, Apr 02, 2009 ×
名前: 悪夢狂乱丸 ¦ 22:46, Thursday, Apr 09, 2009 ×
怪奇0 文章0 いいお話なのかもしれませんが、あまりにもお涙頂戴的な展開で、怖く感じられませんでした。 それに意外性がない。とてもよくできたお話、予定調和的な展開よりももっと人をぎょっとさせたり不快にさせたりするぐらいの個性が欲しい。 |
名前: じゅりんだ ¦ 04:07, Friday, Apr 10, 2009 ×
残念ながら、家の中から「声が聞こえた気がする」とされており、極限状況における幻覚である、との疑いを捨てきれない。 事を美談にしようとする意識と描写が多過ぎ、怪異だったとしてもあまりに饒舌過ぎる。 |
名前: ときの ¦ 15:05, Friday, Apr 17, 2009 ×
小粒ながらもいい話だとは思うのですが、体験者さんはともかく、 筆者のほうが感情過多気味な気がしますので、抑えて。
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名前: ひ ¦ 13:24, Wednesday, Apr 22, 2009 ×
小雪さんはお優しい方なのですねぇ。 どんな心境の変化かわからないけど、ぷりんちゃんが帰ってきてくれて本当に良かった。 |
名前: 緋咲 ¦ 17:23, Tuesday, Apr 28, 2009 ×
| いい話ではあるのですが、内容的には小粒だという印象しか持てませんでした。 |
名前: SPダイスケ ¦ 14:23, Wednesday, Apr 29, 2009 ×
面白いと思います。 ぷりんの想いが生霊となり小雪さんを助けるという展開は、愛情の上での怪異と感じ、実話怪談として非常に興味が湧きます。 それがきっかけとなり仲良くなるというのも、私にはむしろ自然な展開に思えます。 今後もたくさん愛情を注いであげてもらいたいです。 |
名前: へみ ¦ 17:34, Wednesday, Apr 29, 2009 ×
すいません、「ミーミー」の泣き声あたりで号泣です。 動物が人を思う気持ちに弱いんです。小雪さんがぷりんを助けてあげたように、ぷりんも小雪さんを助けてあげたんですね。 いつまでも二人が幸せでありますように。 |
名前: わんぴー ¦ 19:40, Thursday, Apr 30, 2009 ×
文章・・・-1 希少度・・・0
無駄が多く、思わせぶりな文章のため読むのが少ししんどかった。 怪異に関しては猫の生霊が先回りして自殺を止めたようにも見えますが、今まさに自ら命を断とうとしている人の極限状態の心が見せた幻だったとも考えられます。 ただしそのお陰で体験者が自殺を取り止めたのも確かです。 幻であったとしても、それ自体を怪異と呼んでもいいかもしれません。 ということで希少度はマイナスにはしませんでした。 |
名前: 鹿太郎 ¦ 21:29, Thursday, Apr 30, 2009 ×
猫って癒し系だから。快方に向かって良かった。 うつは治りかけが危ないんですよ。動ける様になったら自殺行動にでるから。 ひどい時は寝てるか無気力に起きてるだけだから動かないし。でも、変に神経が研ぎすまされてるから色んな物を感知するかもしれない、と思ってます。
【文章技術評価】 +1 【体験談希少度評価】+1 【話の構成】 0 【怖さ】 0
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名前: ミミちゃん ¦ 23:59, Thursday, Apr 30, 2009 ×
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