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岡川さんは不思議な体験とは一切無縁の女性だ。 しかしただ一度だけ、こんなことがあったという。
それは数年前、友人と二人でサイパンに旅行した時のことだ。 旅行社のパッケージツアーを利用したのだが、用意されたホテルはなかなか豪華なところだった。 広い部屋に寝心地の良さそうなベッド、大きな窓からは美しい海が見渡せる。 ところが二人がその部屋に入って思わず発した最初の言葉は「きれい」でも「広い」でもなかった。 「なに、この部屋、すっごい湿気!」 部屋の中がなんだかジメジメしている。 空調の調子が悪いのだろうか? ベッドもソファもなんとなくじっとりとしており、どうにも気持ちが悪い。 しかし他に楽しみはいくらでもある。 岡川さんにとってそんなことは取るに足りないことだった。 「やっぱり熱帯だから湿気が多いのかな」 そんないい加減な解釈で笑って済ませた二人はダイビングやスパを大いに満喫した。 楽しい時間はあっという間に過ぎ、やがて帰る日になった。 ホテルの部屋を出ようと岡川さんが荷造りを終えたスーツケースを持つと、これが異様に重い。 持ち上げるのもやっとだ。 確かにお土産も買ったので荷物は来た時よりも増えたとはいえ、ここまで重くなることはないはずだ。 友人の物と比べてみても明らかに異常だ。 「部屋が湿気てたから、服とかが水分吸っちゃったのかな」 本気とも冗談ともつかない理由で無理矢理自分を納得させ、岡川さんは重いスーツケースを引きずって日本まで帰ってきた。
自宅に着く頃にはもう夜になっていた。 岡川さんはスーツケースを開けて衣類を確かめてみた。 思った通りじっとりと湿っている。 だがそれだけではあの重さの説明にはならない。 何だか訳が分からなかったがその日は疲れもあり、荷物の片付けは翌日にして岡川さんはそのまま床に就いた。
ふと目が覚めた。 部屋の空気がいつもと違っている。 足元に気配を感じ、そちらに目をやると薄暗い中誰かが立っているのが見えた。 あっと驚いて起き上がろうとするが、全身が固まったように動かない。 もがきながらも目を凝らすと、それはどうやら日本兵のようだ。 日差しを避ける為の帽垂れ布が付いた帽子を被り、半袖の軍服を着ている。 岡川さんと目が合うと、その日本兵はゆっくりと右手を額に持っていき、敬礼した。 満面の笑顔だった。 そしてそのまま煙のようにすーっと消えていった。
翌日、スーツケースに入っていた衣類を確認すると湿り気は全くなくなっていた。 検証のためもう一度スーツケースに荷物を詰めてみると、昨日の重さが嘘のように軽くなっていたという。
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受信: 06:55, Sunday, Apr 26, 2009
■講評
文章 1 怪異 1 怖さ 0 衝撃 0
兵隊さんを連れてくる話はよく聞くが、この作品はじめじめしていないところがイイ。女の子達もあっけらかんと健康的だし、帰国の嬉しさのせいか兵隊さんも笑顔だし。
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名前: くりちゃん ¦ 14:07, Tuesday, Mar 31, 2009 ×
あ、便乗して帰ってこれたんですね。 意外にも爽やかな展開でした。 しかし、お礼言う時まで金縛りになるんですね…。 ちょっと前半、モタモタした印象がありましたが、なかなか面白い話だったかと思います。
文章:1 怪異:1
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名前: PM ¦ 19:20, Tuesday, Mar 31, 2009 ×
すごくおどろおどろしい怪異が、と思いきや。 兵隊さんは笑顔で消えてゆかれたのですか。 やっと帰れてうれしかったのかな… 長い長い間ご苦労様でした。 お帰りなさい。
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名前: ひぐらし ¦ 20:10, Tuesday, Mar 31, 2009 ×
| この岡川さんとその友人が体験した心霊現象は、サイパンという戦争を経験した土地柄で同じ日本人にあった嬉しさで、最初は部屋の空気にそのうちスーツケースに乗り移ったんではないのかと思ったから。 |
名前: ジャック ¦ 21:54, Tuesday, Mar 31, 2009 ×
前半を読んでいる時は良くある話かと思っていましたが 最後の怪異部分がとても好きでした。 日本に帰ってこれて本当に嬉しかったんだろうなと・・・ |
名前: ゑな ¦ 00:21, Wednesday, Apr 01, 2009 ×
帰りたかったんですね。 グアムの怪談としては大定番とも言えますが、 すんなりと読めた事、 押しつけがましくなく、感情移入が出来た事からこの点です。
文章1 |
名前: ほおづき ¦ 15:04, Wednesday, Apr 01, 2009 ×
特に破綻もなく、それぞれの感情も丁寧に表現されている。好感の持てる話です。検証のために再度スーツケースに荷物を詰めてみたという一文が効いています。 文章・1 構成・1 ネタ・0 恐怖・0 |
名前: 暗沌子 ¦ 09:30, Sunday, Apr 05, 2009 ×
怪奇-2 文章0 向こうから連れて帰ってきたお話ですね。類和が多くてあまりオリジナリティが感じられなかったです。 |
名前: じゅりんだ ¦ 23:50, Sunday, Apr 12, 2009 ×
ははぁ、スーツケースに隠れて日本に帰ってきたんですね。 スーツケースの異常な重さは日本に帰りたいという日本兵の思い=重いになったのかも。 戦争のお話にしては暗さがなくて実にすっきりとまとめてあって読みやすいです。 満面の笑顔の兵隊さん、ほんとによかった。 |
名前: 桜子 ¦ 20:16, Thursday, Apr 16, 2009 ×
類話も多いだけに怖さの度合いは半減してしまうのは仕方がないかなと感じた。 ただ「湿り気」として訴えてくるところはなかなか興味深かった。 最後に確認しているところに、「本当に不自然なほど重かったのだなぁ」と納得した。 |
名前: 黒蜜椿 ¦ 06:39, Friday, Apr 17, 2009 ×
いい話。タイトルと違ってすがすがしい。 アイデアマンな幽霊さんですね。黙って消えないし。いや、その方がいいか。 |
名前: 悪夢狂乱丸 ¦ 18:33, Saturday, Apr 18, 2009 ×
これはたまたま、彼女たち二人ともがその日本兵の霊と波長が合ったから、帰国できたということなのでしょうか。
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名前: ひ ¦ 17:52, Sunday, Apr 26, 2009 ×
文章・・・1 希少度・・・1
サイパンやグアム旅行とくればこの類の話になりますね。 定番中の定番です。 ところがこの話の場合、荷物が重くなっていることと、日本兵が部屋に現れ、それが満面の笑顔というところが新鮮、というよりも面白いと思いました。 帰ってこれてよっぽど嬉しかったんでしょうねぇ。 そういった感情が伝わってくる話は良いものです。 |
名前: 鹿太郎 ¦ 01:12, Wednesday, Apr 29, 2009 ×
| いい話なのですが類話も多くインパクトに欠けました。 |
名前: SPダイスケ ¦ 15:18, Wednesday, Apr 29, 2009 ×
日本兵さん、日本に帰りたかったのですね。 でも、魂がそんなに重いものだったとは。 読後がすっきり爽やかで、何だか私まで嬉しくなってしまいました。 |
名前: 緋咲 ¦ 03:28, Thursday, Apr 30, 2009 ×
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