超-1/2010審査用チェックリスト
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大原さんが小学三年生の頃というから、もう三十年も前の話だ。 当時、学校では『だるまさんがころんだ』という遊びが流行っていた。鬼ごっこの一種である。鬼が背中を向けて「だるまさんがころんだ」と唱える間に、他の者は少しづつ近づいていく。唱え終わった鬼が振り向いた時に、少しでも身動きしたら捕まってしまう。単純だが、緊張感に満ちた遊びである。 大原さんは鬼の役目が好きだったという。振り向いた瞬間の、皆の様子が面白くて仕方なかったそうだ。 冬休みを一週間後に控えた土曜の午後。大原さんと友人達は、例によって『だるまさんがころんだ』で遊ぼうと学校を出た。 ところが、いつもの広場を町内の自衛消防隊が使っており、仕方なく大原さんは仲間と共に少し離れた所にある空き地へ向かった。 ついこの間まで廃屋が建っていた場所だ。 例によって鬼の役を引き受け、早速開始。 「だるまさんがころんだ! 」 振り向く。神妙な顔つきの者、わざとおかしな顔をする者、大原さんは笑いを堪えながら全体を見渡した。まずは一回目終了。 もう一度、皆に背中を向けようとしたその時、何かが視野の片隅に入った。 「だるまさんがころんだ」 振り向く。先ほどより僅かに近づいた友達の背後にそれはいた。 真っ黒な人だ。背丈は皆と同じぐらい。口の辺りが笑った形に開いている。 何も言わない大原さんを仲間たちが訝しげに見つめている。喋るのも禁止にしていた為、表立って抗議する者はいないが、これ以上は待たせられない。大原さんは、皆の視線に押されるようにして背中を向けた。 なかなか振り向けない。さっきのは気のせいだとは思うが、もしもまた、あれが見えたらどうしよう。 恐る恐る振り向く。 いた。 さっきよりも近い。どうしよう、皆に言うべきだろうか。迷う大原さんの前で、仲間の一人がバランスを失って転んだ。 「てっちゃん、アウト! 」 習慣が言わせた。大原さんは自分の言葉につられ、またもや背中を向けてしまった。 そのまま固まる。どうしても振り向けない。振り向いたら、また見てしまう。 とうとう、皆が文句を言い始めた。 「なんだよ、どうしたんだよ」 「早く次行けってば」 「何してんだよ」 それでもどうしても振り向けない。 「続けてよ」 かすれた声が聞こえた。一度も聞いたことが無い声だったという。大原さんは悲鳴をあげて、振り向かずにその場から逃げた。 「後で友達には事情を説明しましたけどね、そんな馬鹿なって言われるだけで」 照れ臭そうに頭を掻きながら、大原さんは残っていた酒を飲み干した。
電話があったのは、次の日の夕方である。 あの夜、別れてから大原さんは電車に飛び乗った。空き始めた電車だが、座れそうにない。電車のドアに額をつけて、冷たい感触を楽しんでいた大原さんは、ふと気まぐれに目を閉じて呟いた。 「だるまさんがころんだ」 その途端、背後で誰かの声がした。反対側のドアの辺りだ。 「待ってたよ」 酔いが一気に醒めた。それは、確かにあの日聞いた声だったという。目を開ければ、ドアのガラスに映っているだろう。どうすればいい、どうすれば。必死で考える大原さんの前でドアが開いた。大原さんは転げ落ちるように電車から離れると、振り向かずに発車するのを待ったそうだ。
だるまさんがころんだという鬼ごっこは、近づいてきた者が鬼にタッチしてから逃げる。鬼は、その者にタッチしなければならない。できなければ永遠に鬼の役のままだ。
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» [超−1]【+1】だるまさんがころんだ [幽鬼の源から] × この作品の怪異の本質は、子供時代の体験そのものではなく、時間を超えて現在に同じ怪異と遭遇したところにある。 この展開をいかに自然にそして衝撃的に見せるのかがポイントになるところである。 その点で言えば、この作品はかなり大きなミスを犯していると考えられ .. ... 続きを読む
受信: 12:02, Friday, Feb 05, 2010
» 【+3】だるまさんがころんだ [【超-1】講評専用ブログ 〜闇夜に鴉がにゃあと啼く〜から] × どちらかと言えば好みの文章だが、やや小説っぽい書き方になってしまっているような。文章の組み立てはかなり巧みであると思う。場面転換がスムーズではないのが少々残念なところではあるが、前半の終わりを「大原さんは照れ臭そうに頭を掻いた」で締め、後半の電話があ .. ... 続きを読む
受信: 01:56, Sunday, Feb 07, 2010
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受信: 11:22, Wednesday, Feb 10, 2010
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受信: 02:48, Saturday, Feb 13, 2010
» 【+1】だるまさんがころんだ [闇夜に紛れて覗く者から] × 怪異の起きる状況が面白い。これは話をしたことにより、呼び起こされたと考えるのが妥当であろう。気になった点は、現在と過去の場面の展開。文章からして、修正できる力があるように思えるだけに勿体無い。また、ラストの件も必要ないように思える。雰囲気を加える ... 続きを読む
受信: 09:13, Sunday, Feb 14, 2010
» 【+1】だるまさんがころんだ [超-1/2010講評用ブログから] × 怖さ+1、文章−1、後味の悪さ+1何とも嫌な終わり方のする話だと思いました。昔の出来事だったはずなのに、筆者に話した瞬間に、怪異が再開されるという。ラスト二行が、もしかしたら怪異が続くのかもしれない……という嫌な後味を残していて良いと思いま .. ... 続きを読む
受信: 20:33, Friday, Feb 19, 2010
■講評
静かに情景を積み上げていき、最終的に怖くなる構成が気に入りました。特に、電車の中に場所を移してからが盛り上がりました。大原さんが、徐々に恐怖を感じていく過程が丁寧に描かれてあるので、話に入り込みやすかったです。 この鬼ごっこ、終わらせるのは難しいかも… ネタ・1 構成・1 文章・0 恐怖・1 |
名前: 一反木綿豆腐 ¦ 13:53, Wednesday, Feb 03, 2010 ×
おお、これはなかなか面白い話ですね。 内容としては申し分ありません。じんわりと怖いです。 その後の大原さんが気になります。 来年、改めて取材して頂きたいくらいです。
惜しむらくは、場面転換が解り辛かった点でしょうか。 “次の日の夕方”が、まだ子供時代の話だと思っていたので、途中まで混乱したまま読んでしまいました。 終盤で怪異の場面を現代に移すのならば、冒頭で取材時の状況を軽く描写するなどで、読者を意識させておく必要があったかと思います。
文章:1 希少性:2
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名前: ていさつUFO ¦ 20:14, Wednesday, Feb 03, 2010 ×
出来過ぎな感もあるが、素直にぞくっとした。 気になった点は二箇所。 ひとつは幼少期から現代への場面転換がなく地続きになってしまっている点。 一拍置いて、きっちり過去と現在を切り離すべきである。 もうひとつは最後の数行。 蛇足以外の何者でもない。 これが酒席で大原氏が語った言葉であれば重要な意味合いを持つが、そうでなければ只の感想である。 怪談でひとり語りは厳禁である。ともすれば、話全体を壊しかねない。 |
名前: amorphous ¦ 20:34, Wednesday, Feb 03, 2010 ×
おおう。 読み終わった時に,なかなかの寒気が走りました。 三十数年待ち続けた怪の粘着がたまらんです。 そういえば,怪異にとっては,時間の概念はちょっとばかり違うみたいですからこういうこともあり得るのですね。 これは大変勉強になりました。 |
名前: 捨て石 ¦ 23:26, Wednesday, Feb 03, 2010 ×
「真っ黒な人は付近で亡くなった子供でした」、か?なんて温い先読みをしてたら、とんでもない。三十年越しの再会に寒気が。(+1) そして最後の締めでまた寒気が。 ちょっと今、呟いてみたい。でも振り向くの怖い。 無邪気な仲間と、迫ってくる黒い子供に怯える大原さんとの温度差も伝わってきました。(+2)
三十年前なのか現在なのか戸惑うところがあります。遊んだ翌日の夕方に大原さんの家に電話があったのか。と思ったら、あれ?夜になってて電車に乗ってる!現在か!と。(-1)
小学生の大原さんが酒を飲み干したのかとも思ってしまった…。これは私だけかもしれませんが。 |
名前: 雨四光 ¦ 03:21, Friday, Feb 05, 2010 ×
文章0 内容1 怖さ1 ネタ1
文章:恐る恐る振り向いたときにさっきより近かった。この描写を一人称で表現するのはもったいない。飲んだ後別れたという場面展開が少しわかりにくい。他が非常に読みやすい分気になった。
内容:大原さんは恐怖で逃げてしまった後、大人になるまで、だるまさんが転んだをしなかったのだろうか。それが飲んで帰った後、懐かしさで呟いてしまう辺りに繋がっていない気がする。それまでの封印を解いてつぶやいてしまった後の恐怖を表現するにはいい材料だと思うのだが。
怖さ:意外性が怖い。意識してないうちもずっと続いているという恐怖を感じた。
ネタ:よく聞くような話だと、みんなを置いて逃げたという辺りで話は終わる。そこから怪異が続くところは非常に面白い。その後どうなっているのか知りたいところだ。 |
名前: ぬんた ¦ 21:13, Friday, Feb 05, 2010 ×
文章力 0 稀少度 +1 怖さ +1 衝撃度 +1
幼少時に出会った物の怪が、言葉に出して語られることによって「呼ばれたか」と動き出す…これは不気味だ。 ただ場面転換がわかりづらく、小学生が酒?と戸惑った。次に、大人が子供時代を懐かしんで敢えて昔の仲間と子供の遊びをしたのか?と。これはつじつまがあわないな、と読み返すと実は数十年の月日が経っていた。 ともあれ、執念深く大原さんの背後につきまとっているモノが怖い。もしそれにタッチされたら、大原さんはどうなるのか。
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名前: つなき ¦ 12:46, Sunday, Feb 07, 2010 ×
この大原さんが、だるまさんがころんだの時、「続けてよ」と、電車のドアに額をつけて冷たい感触を楽しんでいた時、反対側のドアから聞こえた「待っていたよ」の声は、どうして起きたのか理解に苦しむから。もっとわかりやすく書いてもらいたいものであるから。 |
名前: 天国 ¦ 00:51, Wednesday, Feb 10, 2010 ×
文章0 恐怖1 希少1 魅力0
今の話なのか、過去の話なのか、少しだけ混乱した箇所がありました。 時系列ごとに行間をあけてみてはどうでしょうか。
ただの幼少時代の不思議な体験だと思いきや、取材の後にも怪異が。 彼らにとって時間の概念は生きている者とは違うことはわかりますが、ここまで執念深い物の怪もなかなか珍しいのでは……。 このだるまさんがころんだ、いつまで続くのでしょうか。 是非投稿者様も混ざってみていただきたいものです。 |
名前: 幻灯花 ¦ 02:24, Wednesday, Feb 10, 2010 ×
>「てっちゃん、アウト! 」 習慣が言わせた。 この一文が、すごく効いてると思いました。恐怖にかられながらも、再び遊戯に戻るさまがリアルに理解できて、心拍数も上がりました。 後日談は全然予想していなかったので、想定外の恐怖、しかも「ずっと続いていた」という事実にゾクッときました。体験者の方には申し訳ありませんが、さらなる後日談を期待してしまいます。…二度と言わない方が賢明なんでしょうけど。ラストの一文、大原さんが鬼になったなら…という不謹慎な想像をしてしまうことが止められません。
・臨場感+1 ・没入度0 ・表現+1 ・恐怖+1 |
名前: ダイタイダイダイ ¦ 18:12, Friday, Feb 12, 2010 ×
後ろを振り向く度にだんだん近づいている。 生きている人間でもコワイのに異形のモノまで参加していたら その恐怖は如何ばかりか。 しかも子供世界の中での[言い終わるまで振り向いてはいけない]というその遊びの掟の厳しさよ。 そんな子供時代の大原さんの心理がよく描かれていて共感出来ました。 ただ、現在と過去の場面の切り替わりが解りにくかった所もありました。(-1) [電話があったのは、次の日の夕方である。]という一文は要らないと思います。 しかし、30年の時を経ても (まだやってたんかい!?)という[真黒な人]の執念の怖さの描き方。 [だるまさんがころんだ]を知らない人がいるかどうかは別として 最初のその遊びの解説があって、本文を挟み、最後も念を押すような解説。同じ遊びの説明なのに本文読後に読むとすごく恐い遊びに思えてしまうというサンドウィッチ法。(そんな言い方か知らないけど) 上手い方だな・・と思いました。(+4)
あれかな。 「だーるーまーさんがーころんだー」と言う時にフェイントで物凄く早く言って突然振り向いたら、その真黒い人もコケてたら面白いな。 恐いか。それでも。
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名前: RON ¦ 13:11, Saturday, Feb 13, 2010 ×
よく見る遊びに混じる子供の怪異と典型的ではあるが、最後の一文でこう、「振り向いていたらどうなっていたんだろう」「タッチされたらどうやって追えばいいの」と一気に想像が広がる演出になっているのは文章的にうまいと思う。 |
名前: b ¦ 16:36, Saturday, Feb 13, 2010 ×
どうも引っ掛かるところが多い話でした。 まず、大原さんは黒い人のことを、今まで誰かに話したことはなかったのでしょうか。過去に類似した経験はなかったかが気になります。 他にも大原さんのその後の安否、廃屋の謂れ、場面転換の際の曖昧な文章など、疑問に思う箇所が多く、いまひとつ入り込めませんでした。 かなり恐ろしい体験だと思うので、ぜひ詳細を聞いていただきたいところです。
文章-1 構成+1 希少性+1 |
名前: ランプ ¦ 22:29, Sunday, Feb 14, 2010 ×
怖い!!
そして大原さんのキャラクターに拍手。 みんなの表情を楽しむために鬼になり、大人になっても電車に飛び乗ったり、ガラスの冷たさを楽しむのが素敵です。
文章=0 怪異=+2 心情=+1 合計=+3 |
名前: 鏡餅 ¦ 16:40, Monday, Feb 15, 2010 ×
ずっと憑いていたのでしょうか…? 振り向いていたらどうなっていたんだろう…という怖さがよく出ていたと思います。
場面の切り替えがそのまま繋がったように感じて読んでしまったので、読み直して「なるほど」と納得。
最後の文章がいい味を出しているのかもしれないのですが、それが尚更小説じみたような印象を受けました。 それは読み手が感じるものであり、どうしても 蛇足に思った、というのが正直な感想です。 |
名前: 鶴斗 密喜 ¦ 21:15, Thursday, Feb 25, 2010 ×
名前: 極楽 ¦ 14:06, Wednesday, Mar 03, 2010 ×
話は面白く読みやすかったが 小説のような書き方が現実味を薄くした感じがあった
文章−1 希少+1 |
名前: 205 ¦ 01:11, Friday, Apr 02, 2010 ×
気持ちの悪い話ですね。 しかしオチが心霊ドラマの様な… |
名前: どくだみ茶 ¦ 15:28, Wednesday, Apr 07, 2010 ×
怪談点…1 文章…1
「だるまさんが転んだ」という遊びが怪異にピタリと嵌っており、怪談としての面白さと怖さを演出するのに成功しています。 結局それが何者なのか分からないまま、今も続いているというのが良いですね。
文章は少々説明的で押し付けの強い部分があるものの、作品としては良く書けていると思いました。 一つ気になったのは、途中で過去の体験から現在に移るところです。 著者は居酒屋なんでしょうか、そこで取材されたんでしょうが、こういう書き方をするのなら、まず冒頭でその状況描写を入れておくべきでした。 そうでないと現在の体験者がいきなり登場すると面食らってしまいます。 |
名前: C班 山田 ¦ 04:33, Thursday, Apr 08, 2010 ×
子供時代の不思議な話、だけで終わるのかと思っていたら、大人になって話しを語った途端例のものが近づいてきて、しかもこれからずっと追いかけられる……という巧みなオチに繋がっていて、楽しめました。 |
名前: ゼリコ ¦ 21:13, Sunday, Apr 11, 2010 ×
名前: 丸野都 ¦ 04:59, Monday, Apr 19, 2010 ×
ネタ・恐怖度:1 文章・構成 :0
オチは秀逸だが、そこにたどり着くまで、特に昔日の「だるまさんがころんだ」の場面が少々くどい 全体的に、物語じみているかな、という印象を受ける。 導入部のだるまさんがころんだのルールを細かく書く必要はあったのだろうか。おそらくは結びの文へ繋げるための演出だったのだろうが、省いても良かったのでは、と思う。
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名前: オーヴィル ¦ 00:41, Friday, Apr 30, 2010 ×
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