超-1/2010審査用チェックリスト
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救急車がよく通る町だという。 時間帯は決まって深夜。山辺さん宅のある住宅街を慌てたサイレンが駆け抜けていく。 寝入りばなを起こされることもしばしばだそうだ。 「こんな何もないとこで、どうして事故が起こるのか不思議だったよ」
その晩、同僚の送別会に出た山辺さんは終電を逃しタクシーで帰宅した。 時刻は午前2時頃。 痛む頭を押さえつつ壁伝いに歩いていた山辺さんの耳が、微かな呻き声を捉えた。 不審に思い角を曲がると、横転したバイクが目に飛び込んできた。その10mほど向こうで、誰かが壁に凭れ苦悶の声をあげている。山辺さんは慌てて駆け寄った。 「大丈夫ですか」 「ああ…すみません」声は若い男のものだった。フルフェイスで顔は見えないが呼吸が酷く荒い。見れば右足の膝関節は逆に折れ曲がっていた。 救急車を呼ぼうと携帯を取り出した山辺さんの腕を男が掴んだ。 「こ…こどもは大丈夫ですか。僕の撥ねたこどもは」 「子供?」 「あそこの影から飛び出してきて、避け切れなくて…ああ…」 必死に訴える男を落ち着かせつつ、その指差す電信柱を見て山辺さんは息を飲んだ。 情報提供を求める立て札と献花。 「ピンと来たよ。ああ『出る』んだなあって。そもそも子供なんている筈無い時間帯だしな」 山辺さんは戦慄を覚えながらも、兎に角救急車を呼んだ。
いつも家の前を通り過ぎるサイレン音が近付いてきた。 苦しそうな呼吸を漏らす青年を励まし、山辺さんは路地から出て、赤色灯に手を振った。 「怪我人は向こうです。足を折ってます」 「そうですか。ところでその運転手は子供を撥ねたと言っていませんか」 出し抜けな質問に山辺さんは愕然とした。やはり同じような事故が頻発しているのか。 路地へ飛び込んだ隊員が、何も乗せずに戻ってくる。助からなかったのか。路地を覗いた山辺さんは唖然とした。 何も無かった。 男の姿どころか、大破したバイク、血のあと、スリップ痕さえ残っていない。 絶句する山辺さんを尻目に、隊員が手馴れた様子で片付けを始めた。 誰かが「またかよ」と呟いた。
「あの路地の事故で死んだのは、バイクの運転手のほうだったんだ」 粟立てた腕を擦りながら、山辺さんは頭を振った。 「見えたし触れた。会話もできた。そりゃあ誰だって救急車呼ぶわな」 現在も時折、救急車が駆け抜けていくという。慌てたサイレンを片道だけ鳴らして。
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» [超−1]【+3】多発地帯 [幽鬼の源から] × 文章の表現については、明らかに説明不足ではないかと思わせる記述があったりと、少々瑕疵が多いようにも感じるのであるが、ただそれを補って余りある怪異の内容と展開は純粋に評価できる。 特に霊感があるとは言えないような体験者が、霊と会話し、さらには触感までも .. ... 続きを読む
受信: 11:34, Saturday, Feb 06, 2010
» 【+2】多発地帯 [【超-1】講評専用ブログ 〜闇夜に鴉がにゃあと啼く〜から] × あ、これは良い。構成も長さも丁度良い。ちょっと意外な展開で、良い意味で読者を裏切っている。これは構成の妙かな。ラストの一文のみを残し、冒頭部分と最後の台詞部分は省いても、シンプルで良いかも。要は体験者の主観を入れるか入れないかの手法の違いだけで、あと ... 続きを読む
受信: 04:39, Monday, Feb 08, 2010
» 【+2】多発地帯 [闇夜に紛れて覗く者から] × 全体を通して、上手く纏まっているように思える。その上での感想です。序文は要りません。ラストの一行も不要。誰かが「またかよ」と呟いた。も空気を壊すので不要です。この点を整理するだけで、すっきりとした話になる筈です。次回作にも期待しております。〔 ... 続きを読む
受信: 13:55, Monday, Feb 08, 2010
» 【+3】多発地帯 [2010超−1 講評から] × 文章+2 怪異+1文章がすんなりと読むことが出来、頭に入ることが出来ました。さらに文章が最後のオチへスムーズに繋がっていて、気謖... ... 続きを読む
受信: 11:43, Wednesday, Feb 10, 2010
» 【+4】多発地帯 [実話怪談大好き!から] × JUGEMテーマ:実話怪談コンテスト なかなか、うまく騙されました。 こういう裏切られ方好き。 しかしながら、書き出しから怪異が起きるまでの導入部が何とも、まどろっこしい。 多分通行量も少ない郊外の住宅地の道路(であろう)。その更に車も通らないであろう時 .. ... 続きを読む
受信: 01:26, Sunday, Feb 14, 2010
» 【+3】多発地帯 [超-1/2010講評用ブログから] × 怖さ 1、文章 1、珍しさ 1幽霊も頭使いますね。何かこの幽霊は、普通の怪異ではもう怖がらなくなってしまった、僕らのような怪談ジャンキーに挑戦状を突きつけた気がします。驚きました。 ... 続きを読む
受信: 21:41, Saturday, Apr 17, 2010
■講評
子供もバイクの青年もまだそこにいて,事故を繰り返しているのかと思うとやり切れない気分になりますね。 よくあるパターンかなと思わせつつ,二段落ちになっているところが怪談としては面白いですが,怖さよりも切なさが先に立ってしまいました。 こういう場合でも救急隊員は「またかよ」って言わないと思います。そこだけ気になりました。 |
名前: 捨て石 ¦ 10:09, Thursday, Feb 04, 2010 ×
おっと、よくある話かと思っていたら、虚を衝かれました。 そっちが幽霊なんですね。 読み終わって考えると、切ない話ですね……。 文章も読み易く上手くまとまっていて、状況がよく解ります。 恐怖こそ小さいものの、これはちょっと誰かに話したくなる怪談かと思います。
文章:2 希少性:1
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名前: ていさつUFO ¦ 19:03, Thursday, Feb 04, 2010 ×
体験者ほどではないがこの展開には驚かされた。 バイク青年の様子や、馴れてしまった救急隊員の描写も良い。 ひとつだけ気になったのは、前後の体験者の語りは必要だったのかという点。 台詞→前置き→本題→台詞→締めの流れは超怖のテンプレートと化しているが、どの部分を台詞として残し、どの部分を地の文に溶け込ませるかで大幅に印象が変わってくる、 この話の場合、「見えたし触れた。会話もできた。そりゃあ誰だって救急車呼ぶわな」の台詞のみを残し、他の台詞を地の文に溶け込ませるとより良くなると思われる。 |
名前: amorphous ¦ 22:39, Thursday, Feb 04, 2010 ×
お話としては満足のいくものなのですが、ただ一点だけ納得できません。知り合いに救急隊員がいるのですが、例えば一人きりになった時などに「またかよ」と言うかもしれませんが、事故の現場では有り得ないと言ってました。場所によっては違うのかもしれませんが、その点が気になりました。 ネタ・0 構成・0 文章・0 恐怖・0 |
名前: 一反木綿豆腐 ¦ 09:58, Friday, Feb 05, 2010 ×
文章0 内容1 怖さ1 ネタ1
文章:文章はすごくうまいと思う。ただ、気になる点がある。「こんな何もないとこ」といわれてもどういう風に何もないところかわからないために言葉だけの説明になっている。「慌てたサイレン」というのも気になる。こまかいことかもしれない。「痛む頭を押さえつつ」とあるが、なぜ痛いのか説明しないなら別に要らない文章であると思う。「誰かが「またかよ」と」の部分も誰かと書かなくとも救急隊員であるから不自然ではある。
内容:まず最初にバイクで事故った男性と遭遇、子供を引いたと証言があるが子供がいない。二番目に救急隊員から、子供を引いたって聞いたんでしょといわれる。三番目にバイクで事故った男性自身が幽霊だった。そこに至るまでの積み重ねが非常にうまく、読ませる力がある。
怖さ:怖さはジワリと来る。毎夜ならされるサイレンが、自分が死んだことに気づかないバイカーによるものだという怖さは切なくもある。
ネタ:子供を引いてしまったという自責に打ちひしがれる幽霊というのも、何とも哀れである。と同時に怪談バカである私にとっては非常に面白いと思える内容だった。 |
名前: ぬんた ¦ 23:52, Friday, Feb 05, 2010 ×
情報提供を求めてるってことは轢き逃げで、立て札と献花は、亡くなった男性に関するものではないですよね? 亡くなった男性とは別に、最近轢き逃げをされた子供がいて、その子供の霊を男性の霊が撥ねてしまった? あれ、なんかわからなくなってきた。
…と、読後に混乱したものの、読んでいる最中は、生身の男性が子供の霊を撥ねてしまったのだと思い込んでいました。(+1) それを引っ繰り返されて、驚いているうちにスパッと終わってしまうのが心地良い。山辺さんの短い台詞でリアリティが増しているのも良いです。(+1)
※以下、急に気付いたので追記で再送信。 「情報提供を求めてるってことは轢き逃げ?」と書きましたが、正確に事故の状況を把握するための場合もあり、「=轢き逃げ」とは限りませんよね。 勝手に混乱してすみませんでした…。 配点は変わらずです。 |
名前: 雨四光 ¦ 02:52, Sunday, Feb 07, 2010 ×
文章力 0 稀少度 +1 怖さ +1 衝撃度 +1
その青年はきっと責任感の強い性格だったのだろう。今でも子供の救護を頼むためにそこに留まっているのだろうか。気の毒に。 子供の幽霊を見て運転を誤ったと思われた青年が実は…という意外性が無理なく描かれている。 最後の段落は蛇足と見る。同様に導入部の段落もない方がスッキリする。 この作品が『「超」怖い話』に入っていても違和感はない。 |
名前: つなき ¦ 13:16, Sunday, Feb 07, 2010 ×
交通事故の現場では、比較的よく聞く話で、幽霊という物は、目で見て触れて、触りもできる、足もあるし、ただ体重はどうかな?という所であるから。 これもよく聞く話であるから。 |
名前: 天国 ¦ 00:02, Wednesday, Feb 10, 2010 ×
文章1 恐怖1 希少1 魅力1
凄くゾッとしました。 そっちなの!?という衝撃と共に鳥肌がぞぞぞぞぞ……。
文章もとてもお上手で、状況がとてもわかりやすくすんなり読めました。
まぁ言ってはいけないと思ってはいても、そう毎回呼ばれた救急隊員もつい「またか」と言いたくなってしまう気持ちはわからないでもないです……。
「慌てたサイレンを片道だけ鳴らして」 という表現がとても好きです。 |
名前: 幻灯花 ¦ 05:08, Wednesday, Feb 10, 2010 ×
怖いと切ないが入り混じった読後感を味わっております。 バイクの運転者が現実と変わりない存在に見えた上に感じられた、バイクまで再現されていたということが、死者の後悔の深さと強さを感じさせて堪らない気分になりました。
最後の段落を見るに、子どもは生きているんですよね? その子どもがここを通りかかったら何が起こるのか、不謹慎な興味が湧いております。 冒頭と〆の文章が繋がっているのは、再読時に切なさが増す効果になっていると思いました。
・臨場感+1 ・没入度0 ・表現0 ・恐怖+1 |
名前: ダイタイダイダイ ¦ 18:58, Friday, Feb 12, 2010 ×
子供は生きているのか?やはりその子供もとっくに霊で それを見たバイクの人がその子供を霊と知らずによけようとして 事故って亡くなったのかも。 轢いた相手がいないから何故事故が起こったのか検証出来ず、 情報提供を呼び掛けているのでは・・ 霊が霊を呼び、謎が謎を呼ぶ。 まだあるぞ、これは・・とか。 いろいろムダに考えてしまいました。
文章は無駄も無く会話もすっきりとしていてラストのどんでん返しまで うっかり騙されていた感じも心地良いです。何かミステリー小説でも読んでいるような気すらしました。 卓越した筆力のある方だと思います。(+4)
もし、実際に子供が生きているなら頼むからもう一つ立て看板を立て [ここでバイクの人に子供のことを聞かれたら生きているから大丈夫ですよ・・と教えてあげてください] と書いて欲しいです! えぇ。
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名前: RON ¦ 15:16, Saturday, Feb 13, 2010 ×
出たのはバイクの兄ちゃんの霊でしたー! というのは怪談ではよく耳にする気もするが、構成がうまいためかすんなりと読んですんなりと騙された。 |
名前: b ¦ 16:58, Saturday, Feb 13, 2010 ×
タクシーで帰宅したら家の前につけませんか? 痛む頭というのは飲みすぎでしょうか?このあたりすっきりしませんがオチが良かったです。 情報提供がひき逃げの犯人捜しでないとしたら、何なのか最後に書いて欲しかったですね。書くと変になってしまうのかな。
文章=0 怪異=+1 心情=+1 合計=+2 |
名前: 鏡餅 ¦ 17:11, Monday, Feb 15, 2010 ×
ところどころ引っ掛かる箇所(救急隊員の呟き、タクシー、立て札の内容)等がありました。もう少し正確かつ詳細な描写が欲しかったです。 体験者の話は最後の一言のみ(「見えたし〜」)でもよいと感じました。 構成はよくできていますが、それ以外の部分にも気を配っていただきたいです。
構成+1 |
名前: ランプ ¦ 22:13, Thursday, Feb 18, 2010 ×
とても惹き込まれる内容で、また最後のオチで「そうきたか!」と。
文章も読みやすくすっきりと纏められていたと思います。 だからこそ疑問点も多いものになっている気がして、読み終わってすぐは「おぉ!」と思っても、よく考えると「あれ?」と。
最初に「痛む頭」の説明もされていないままなので、それが飲んだ為なのか、場所が悪かったのかそこは書いて欲しかったな、と。
そして「立て札と献花」は残っていたのか、という部分。 「何も無かった」と書かれているので、それらまで無くなっていたのかな、とも思ってしまいました。
内容がとても面白かったからこそ勿体無かったな、という印象でした。
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名前: 鶴斗 密喜 ¦ 00:59, Saturday, Feb 27, 2010 ×
見るだけならよくあることだが抱き上げて会話するのはあまりないことだから。 |
名前: 極楽 ¦ 13:03, Wednesday, Mar 03, 2010 ×
そっちだったのか、文章の読みやすさや内容の珍しさもあって すっかりだまされました
文章+1 希少+2 |
名前: 205 ¦ 01:13, Friday, Apr 02, 2010 ×
会話をした人物が実は…という話も珍しくはなくなってきましたね。 しかし要請があれば出動しないといけない救急隊員さんたちは気の毒。 連絡があるたび 「あぁー、またアレだよ、きっと」 とか言いながら出動なさってるんだろな…
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名前: どくだみ茶 ¦ 15:44, Wednesday, Apr 07, 2010 ×
怪談点…2 文章点…2
少し視点はことなるが良くある話、と油断させておいて最後に意表を突く展開。 良くある話と視点が異なっているのは、その最後の仕掛けのためだったと分かった時にはもう遅い。
怪異体験談にも色々ありまして、作品にするのに適しているのとそうでないのがあります。 この体験談などは作品化されるべくして生まれてきたようなものでしょう。 こういう話と巡り合えた書き手の幸運は賞賛されるべきだと思います。
そしてそれを最後まで流れるように一気に描き切り、最後の一文に余韻を持たせて怪談的清清しさを読み手に味わわせることに成功している点もまた素晴らしい点です。 |
名前: C班 山田 ¦ 17:51, Saturday, Apr 10, 2010 ×
死に切れていない運転手が罪の意識から轢いてしまった子供を救おうとしているのですね。 哀しい話ですが、付近の住民からしたら迷惑だという事実もよく表されています。 |
名前: ゼリコ ¦ 21:06, Sunday, Apr 11, 2010 ×
奥成達さんの「怪談のいたずら」で「実はこっちが幽霊でした」オチの創作タクシー怪談があるのですが、そんな事って実際にあるんだな、とびっくり。私個人の独りよがりな既視感のために、この点数ですが、どんでん返しに至る文章構成など的確で、面白かったです。 |
名前: 丸野都 ¦ 21:13, Sunday, Apr 25, 2010 ×
ネタ・恐怖度:1 文章・構成 :0
意表をつかれる展開だった。この展開に誘導する筆力は評価したい。 誰だって、子供のほうが怪異だと思うわなあ。 結びの文が、この怪異が反復性を伴うものであることを示唆しているのも巧みである。
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名前: オーヴィル ¦ 00:29, Friday, Apr 30, 2010 ×
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