超-1/2010審査用チェックリスト
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中村さんは会社の健康診断で引っ掛かり、せめてもの対策にとウォーキングを始めた。世間体を考慮し、昼間は避けた。もっぱら夜遅く歩く。 一日、二日、少しづつ距離と時間を延ばしていく。なかなか快調である。いつの間にやら、仲間もできた。近所に住む吉川という男性で、中村さんと同じく太り気味だ。 歩きだして丁度三週間目の夜。 十一月とはいえ、少々肌寒い。歩いているうちに温かくなるだろうと家を出た。星の綺麗な夜だったという。 いつものように吉川さんと待ち合わせたが、たまにはいつもと違う道を行こうと決め、遠くの公園を目指す。 到着した公園は、森に囲まれ静まりかえっている。 少々気味が悪くなってきた中村さんは、早々に帰途につくことに決めた。 池のほとりに差し掛かった時、道の向こう側に人影が現れた。大柄な男性である。 どうやらジョギング中らしいが、犬を連れているようだ。足元にも黒い影がある。 ぽつんと立っている外灯が、姿を浮かび上がらせた。 その瞬間、中村さんは息を呑んで立ちすくんだ。 男性の足元にいるのは犬などではなかった。四つん這いの老婆である。着物の裾を乱し、異様に長い舌をでろりと垂らしている。 後ろで結わえられた白髪頭を振る度に、その舌がぶらぶらと揺れたという。老婆は、男性の背中に飛び乗ろうとしているようであった。 蛙のように飛びついては、その都度、何かに弾き返されて四つん這いに戻る。 男性は老婆には気付かない様子で、中村さん達をちらりと見やると、そのまま走っていった。 中村さんは吉川さんを促し、出来る限りさり気なくその場を離れた。 「今の見ましたか? あれ、あのお婆さん。化け物かな」 「お婆さんて? 」 「え? 見ませんでした? 四つん這いの御婆さんがね、男の人に着いてた」 説明する中村さんに吉川さんは首を傾げた。
もしかしたら、自分にしか見えないのか。 そう思った中村さんは、恐る恐る後ろを振り返ったのだが、男性の姿は闇に隠れて見えなかった。 後ろ髪を引かれながら、中村さんは視線を吉川さんに戻した。 思わず、悲鳴がこぼれた。 先ほどの老婆が吉川さんの背中に負ぶさっているのだ。その長い舌を吉川さんの首に巻きつけていたという。 それなのに、吉川さんはお構いなしに歩いている。全く気がつかない様子だ。どうしたらいいか判らず、中村さんはそのまま後ろをついて歩き、町内まで戻った。 「すいません、なんだか頭が痛いんで、明日は休みます」 そう言い残し、家に戻る吉川さんの背中には、まだ老婆がしがみついている。 曖昧に返事し、中村さんも家に戻った。
一週間後。 吉川さんの葬儀から帰宅した中村さんは、その日からウォーキングを止めた。
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受信: 12:44, Saturday, Feb 06, 2010
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受信: 17:06, Monday, Feb 08, 2010
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受信: 12:51, Wednesday, Feb 10, 2010
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受信: 23:06, Wednesday, Feb 10, 2010
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受信: 18:21, Sunday, Feb 14, 2010
» 【+3】止めた理由 [超-1/2010講評用ブログから] × 怖さ 2、ビジュアル 1終盤の、背中に負ぶさる老婆のビジュアルを想像して、背筋がぞくりとしました。やっぱり、王道ですが、老婆の霊は怖いです。それと、最後の一行のそっけなさが、怖さを更に引き立たせていると思いました。 ... 続きを読む
受信: 22:29, Saturday, Apr 17, 2010
■講評
王道ですが老婆の描写がなかなかいい具合でした。 このパターンで毎回思うのですが,吉川さんの家に入った老婆はそれからどうやって次の人に移るんでしょう。いつも不思議に思います。 |
名前: 捨て石 ¦ 09:51, Thursday, Feb 04, 2010 ×
過不足ない文章で上手くまとまっていて読み易かったです。 怪異描写も巧みで申し分ない……と言いたいところなのですが、肝心なものが足りません。 老婆の表情です。 男性の背中に飛び移ろうとしていた時、そして、吉川さんの背中にいる時、それぞれ顔は見えていたようですので、その時の老婆の表情を描写して頂ければ、この怪異がより深くなったかと思います。
内容的にはまあ、割とよく聞く類のものではありますが、ちゃんと怖いのでアリかと思います。 ホント、全国にはいろんなお婆ちゃん幽霊?がいますね……。
文章:1 希少性:1
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名前: ていさつUFO ¦ 19:28, Thursday, Feb 04, 2010 ×
発生している出来事は相当なものだが、描写が乾きすぎている。 老婆の薄気味悪さや中村氏の苦悩が文章から伝わってこない。 中村氏の語りを元に文章を起こした際、綺麗に出来事だけを切り出してしまったのだと思われる。 勿論、発生した出来事の時系列を整理し書き出すことは最重要であるが、それだけでは事務的な報告書になってしまう。 そこに中村氏が体感したものを重ねて、はじめて怪談として成立するのだ。 |
名前: amorphous ¦ 23:08, Thursday, Feb 04, 2010 ×
著者は、あえて乾いた文体を選んだのではないでしょうか。粘っこく描くのも一つの手段ですが、こういうドライな文体にすると『納得できない死』の怖さが増すのでは。 ネタ・0 構成・0 文章・1 恐怖・1 |
名前: 一反木綿豆腐 ¦ 10:54, Friday, Feb 05, 2010 ×
最も気になるのは、走り去った男性の正体です。 老婆が「何か」に弾かれて背中に乗れないということから、寄せ付けない力を持つ人のように見えます。 あるいは男性も物の怪の類で、老婆の飼い主?だったら凄いネタだなと。老婆に気付かないフリまでしちゃって、なかなかの役者ぶりです。(+2)
吉川さんの死が、あまりガツーンとこないなあ。 老婆の関連を思わせる記述がないのです。あえて死因などを伏せてあるのだとしても、ヒントのひとつくらいはほしいところ。 かなり近距離で老婆を見ている場面になって、舌を巻きつけていることしか書かれていないのも物足りないです。 冒頭の男性がいちばん気になるのは、終盤に近付くにつれてトーンダウンしている感があるからかも。(-1) |
名前: 雨四光 ¦ 13:22, Friday, Feb 05, 2010 ×
文章1 内容0 怖さ1 ネタ1
文章:状況描写がうまい。表現力もある。
内容:少しずつ明らかになる怪異の経緯がうまく説明されている。構成も申し分ない。欲を言えば、吉川さんに取り憑いて以降の老婆の活躍をもっと知りたかった。
怖さ:老婆の描写が半端なく怖い。しかも、連れの吉川さんを振り返ったときの恐怖を思うと、ゾクゾクしてたまらない。吉川さんの突然の死がこの老婆のせいかもしれないと思うと、怖いの一言に尽きる。
ネタ:最初の男は弾き飛ばされて取り憑かれなかった。吉川さんは運悪く取り憑かれてしまう。はたして中村さんは? と考えてしまう。 |
名前: ぬんた ¦ 02:48, Saturday, Feb 06, 2010 ×
文章力 0 稀少度 +1 怖さ +1 衝撃度 +1
ふと視線を戻すと同行者の背中に…というのは怖い。 本筋にはいるまでの前置きも適度だし、すらすら読める。 ただ、「思わず、悲鳴がこぼれた」時の吉川さんのリアクションがどうだったのかが描かれていない。連れだって歩いていたのではないのか。 たまたま通りかかったために遭遇してしまった災い事だが、命まで取られてはかなわない。
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名前: つなき ¦ 17:36, Sunday, Feb 07, 2010 ×
要するにこの中村さんが見た吉川さんにしがみ付いている老婆は、死神とでもいうのであろうか? |
名前: 天国 ¦ 02:27, Tuesday, Feb 09, 2010 ×
文章1 恐怖1 希少1 魅力0
うわぁ……気持ち悪い。 そして最悪の後味。 文章はお上手で、つまづく事なく読むことが出来ました。 老婆の表情が気になるところですが、淡々とした語り口が逆に薄気味悪さを誘います。
しかしどうして最初に老婆に追いかけられていた男性にははじかれていたんでしょう…。 |
名前: 幻灯花 ¦ 06:26, Wednesday, Feb 10, 2010 ×
中村さんが吉川さんから視線を外して、再度戻したときにお婆さんが…というくだりにはドキッとしました。文章の巧さから、すっかり中村さん視点でお話に入り込んでいたので、まるで自分が振り返ったかのような追体験の感覚があったのです。 お婆さんは無差別にとり憑く人を選別していたのか、最初の男性が「守られていたかなにかで」憑けなかったのか、吉川さんは通り魔的に憑かれたのか、中村さんはなぜ免れたのか。いろいろと恐怖のポイントが見られて嬉しいです。
中村さんがあんな体験をしたわりには一週間もウォーキングを続けていたことにちょっと驚きましたが、「吉川さんの葬儀」から帰宅して辞めたあたり、彼の死因が決意をさせるようなものだったのかもしれないと想像をたくましくしました。
・臨場感+1 ・没入度+1 ・表現+1 ・恐怖+1 |
名前: ダイタイダイダイ ¦ 20:54, Friday, Feb 12, 2010 ×
カメレオン婆さん、出ましたか!(驚) その長い舌を吉川さんの首に巻きつけていたというところ。 [巻きつけていたという]・・と書くと急に第三者が出てきてしまったので臨場感が薄れてしまった。 そこは言い切ってしまってよいと思います。 都市伝説を読んでいるような感じだったので、吉川さんが亡くなったというところのインパクトが薄い気がしました。 これは、もう信じるか信じないかで怖さが分かれるところ。 立証のしようがない話ですし。 私は好きです。
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名前: RON ¦ 17:58, Saturday, Feb 13, 2010 ×
影をつれていてイヌじゃなく老婆だったというのが、ちょっとわかりにくかったです。 飛び乗っては振り落とされる描写は目に浮かぶようで怖ろしくもこっけいでしたが・・・。 吉川さんの背中に・・・うわあ強烈ですね。 しかし、明日は休みます、でそのあと一週間後に葬儀でその日からウォーキングをやめた、ですか?ではその間3人でウォーキングしてたってことですかね。そっちの方が怖いですよ。 休んで、それきり行かなくなって、葬儀の後にウォーキングシューズを捨てただとキレイなきがします。
文章=0 怪異=+2 心情=+1 合計=+3 |
名前: 鏡餅 ¦ 17:42, Monday, Feb 15, 2010 ×
オチの切れ味が凄まじいですね。 そりゃあ止めるだろうなあと納得しました。 文章も読みやすいので、悲鳴を上げた中村さんに対する吉川さんのリアクションなど、老婆以外の登場人物様子をもう少し詳しく書いていただきたかったです。
文章+1 ラスト+1 |
名前: ランプ ¦ 00:02, Friday, Feb 19, 2010 ×
オチがとても印象的でした。 まさかそうくるとは思わなかったので、そこにびっくりです。
お婆さんって、普通の大きさと変わらなかったのかな? 「犬」と思ったくらいだから大型犬くらいの大きさのイメージが。
文章は淡々と読み進めてしまったので、怪異の部分にもっと重点を置いて書かれた方が良かったのかも、と。
お婆さんの描写がもう少し詳しく書かれていたらもっと評価が違っていたと思うと勿体無い感じでした。
描写不足、という感が否めませんが、希少度、ということで。
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名前: 鶴斗 密喜 ¦ 01:50, Saturday, Feb 27, 2010 ×
名前: 極楽 ¦ 13:18, Wednesday, Mar 03, 2010 ×
訳のわからないものにあっさり殺されてしまうのはやはり怖い いろいろな推測が出来るのもよかった
文章+1 希少+2 |
名前: 205 ¦ 21:52, Friday, Apr 02, 2010 ×
気味の悪い話ですね。 しかし、怪異に遭っている当人が気づいていないという話も、よく聞くパターンだと思います。 |
名前: どくだみ茶 ¦ 15:55, Wednesday, Apr 07, 2010 ×
怪談点…1 文章点…1
珍しい話ではありませんが、書き手のさらりとした語り口のお陰で素直に読めました。 最後の一文も効いています。
適度な表現が作品を活き活きとさせる好例だと思います。
吉川さん、ウォーキング自体を止めなくてもいいんじゃないですかねぇ。 まだ日のあるうちにやるとか。 人の目なんか気にしてちゃあ健康は保てませんよ。 |
名前: C班 山田 ¦ 18:09, Saturday, Apr 10, 2010 ×
全体的に短い文で構成されていて、しかも内容も適確に伝わり非常に読みやすかった。 吉川さんの死をさらっと表現しているのも意表をつかれた。 |
名前: ゼリコ ¦ 20:58, Sunday, Apr 11, 2010 ×
やっぱり死神なんですかね。お婆さんの姿をした異形というと怪談話・都市伝説で出尽くした感がありますが、まだまだ恐ろしいお婆さんはたくさんいらっしゃるんですね。中盤からの展開が実話だから仕方ないとはいえ予想が付いてしまったのでこの点数ですが……私も同じ状況になったら言えないかな、とか思ったりしました。 |
名前: 丸野都 ¦ 21:23, Sunday, Apr 25, 2010 ×
ネタ・恐怖度:1 文章・構成 :0
唐突な結末に唖然とした。 気が触れた婆さんかと思ったら、死を齎す存在だったとは。おぶさるだけの存在かと高を括っていただけに、衝撃を感じた。 文章は特にクセもなく、内容が把握しやすい。
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名前: オーヴィル ¦ 00:27, Friday, Apr 30, 2010 ×
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