超-1/2010審査用チェックリスト
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現在、地元で家庭教師をしている小田さんが、小学生だった頃の話である。 その当時、小田さんは学校から帰った後、いつも一人で遊んでいた。 小田さんの両親は仕事で帰ってくるのが遅く、祖父母には畑仕事があり、二人とも日が暮れるまで畑に出ていた。 以前は曾祖父が家にいて、小田さんが帰ってくるとよく遊んでくれたのだが、その曾祖父も二年前に他界してしまっていた。 友達も皆、彼女の家からかなり離れたところに住んでいた。
小田さんの家は江戸時代から続く旧家で、家屋は元々広い上に増改築を繰り返してきたので、かなり大きく、横に長かった。 幼い小田さんには、その古く大きな家の中で一人きりでいることが怖かった。 剥き出しで黒く煤けた天井の梁や、床の間に飾ってある狐や雉子の剥製が、家族といる時の姿とまるで違って見えて、たまらなく怖かった。 そのため学校から帰ると、小田さんは大抵外の庭でボール遊びをしたり、縄跳びをしたり、わざわざ家の外で家族の帰りを待ったりしていた。 その日も小田さんは一人、庭で遊びながら家族の帰りを待っていた。 なんとなく空を見上げると、真夏の午後四時の太陽は、まだ強く輝いていた。 小田さんはその太陽をじっと見つめた。 すると、強い光を受けた小田さんの目に、太陽の形が焼きついたようになった。 どこを見ても、チカチカした点が視界のどこかについてきた。 小田さんにはそれが思いがけず面白く、そのチカチカの点を色々なものの上に写しては遊んでいた。 そうして遊んでいるうちにふと、 ――このチカチカを太陽に重ねたらどうなるんだろうか。 と思った小田さんは、視界の中に焼きついた点を太陽と重ねようと試みた。 それがけっこう難しく、なかなかしっかりと重ね合わせる事ができない。 なんとか成功させようとしばらく太陽を見つめ続けていると、ようやく太陽とチカチカをきちんと重ねることができた。 その瞬間、重なった二つの光の上に、亡くなった曾祖父の笑った顔が浮かび上がった。 ――あっ、ひいじいちゃんだ! 驚いた小田さんはつい太陽から目を逸らしてしまった。 チカチカが太陽からずれて、曾祖父の顔は見えなくなった。 ――もう一回やれば、ひいじいちゃんをまた見られるかも知れない。 小田さんは再び太陽とチカチカを重ねようとした。 しかし次に太陽とチカチカの上に浮かんできたものは、つい先日に亡くなった近所のお婆さんの無表情な顔だった。 小田さんはなんとか曾祖父の顔を見ようと、太陽とチカチカを重ね続けた。 しかしなかなか曾祖父は現れず、代わりに二年前に事故で亡くなった同じ集落の若い男や、去年病気の末に亡くなった親戚ばかりが次々と現れ、それでも諦めずに何度も試していると、そのうちに現れる顔は小田さんの全く知らない人たちのものに変わっていった。現れる全ての顔には、なんの表情もなかった。 小田さんは取り憑かれたように太陽とチカチカを重ね続けた。 知らない誰かの無表情な顔が浮かぶ。目を逸らす。またチカチカと太陽を重ねる。知らない顔が浮かぶ。それを延々と繰り返した。 「奈々ちゃーん。ただいまー。」 祖母が帰ってきて、小田さんの遊びは終わった。
太陽とチカチカの上に人の顔が見えたのは、今のところ、あの日だけのことだと小田さんは言う。 今、小田さんは両目の視力が極端に悪い。
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» 【+4】チカチカ [2010超−1 講評から] × 文章+2 怪異+2文章はすんなりと読むことが出来ました。後述しますが、恐らく最後の言葉へ集約させるための文章ではないかと思います�... ... 続きを読む
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受信: 21:38, Friday, Feb 12, 2010
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受信: 23:13, Saturday, Feb 13, 2010
» 【+2】チカチカ [実話怪談大好き!から] × JUGEMテーマ:実話怪談コンテスト 最初に大好きだった曽祖父の笑顔が見えた、というのが何とも小ざかしい。それから近所の見知った人の顔になりだんだんと見知らぬ顔になって行く、しかも無表情。これは気味悪い。 それらが死人であると分っているからなお更不気味だ .. ... 続きを読む
受信: 00:40, Saturday, Mar 06, 2010
■講評
これをやると本当に目が悪くなりますよ。恐ろしいことです。 ただ、怪異としては本人の申告のみになっていますので、余り食指を動かされませんでした。 直接太陽を見ちゃいけないよ! と、ちょっとうちの子供に言い聞かせてきます。 |
名前: 捨て石 ¦ 11:52, Sunday, Feb 07, 2010 ×
この小田さんが、太陽と見えたチカチカの上に亡くなった人を見たから、両目の視力が極端に弱くなったのでは? |
名前: 天国 ¦ 21:37, Sunday, Feb 07, 2010 ×
昔、瞬きを連続していると幽霊が見えるとかありましたが、そういった類のものですかね。 なかなか珍しいとは思いますが、さすがに太陽の直視は、あまり人にオススメしたくない方法ですね。 小田さんはまぶしくはなかったんでしょうかね?
さて、文章の方ですが、全体的に「〜た」で終わる文章が多く、読んでいて一貫性に欠けるようなテンポの悪さを感じました。 この辺はバランスが重要にもなりますが、少し意識するだけで意外と全体の印象が変わるので、もう少し工夫いただければな、と思います。
文章:0 希少性:1
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名前: ていさつUFO ¦ 22:25, Sunday, Feb 07, 2010 ×
落ちが予想通りだった。 実のところ、怪そのものよりもそちらの方が心配になってしまい、話に集中できなかった。 怪は実に奇妙で原因も理由もわからないが、それが幼少期らしくもあり、不思議な楽しさも感じられた。
もし傑作選に収録された折には、「よい子は決して真似をしないで下さい」の注意書きが必須であろう。 勿論お笑いの約束事的な意味で、である。 |
名前: amorphous ¦ 00:00, Monday, Feb 08, 2010 ×
そりゃ視力も落ちるでしょうに。下手すると失明してたんじゃないかな。そっちの方が怖くて話に今ひとつ身が入りませんでした。『た』を多く使った文章は、なんとなく目が滑りますね。 ネタ・0 構成・0 文章・0 恐怖・0 |
名前: 一反木綿豆腐 ¦ 20:32, Monday, Feb 08, 2010 ×
お日様の力をなめてはいけません。直視するのはやめましょう。
だんだんと縁のない人の顔になっていくのが怖い。 チカチカを太陽と合わせてみようと思いつくところからして、何かに誘われているようで怖い。これは単に、子供ならではの奇抜な発想なのかもしれませんが。 「もうやめときなよ…」から「マジでやめとけって!」と、やけに焦りました。 お祖母さんが帰ってきて良かった!!と心から思います。 何だろう、これ。自分でもよくわからない。理屈抜きでとにかく怖かった。(+4)
新たな恐怖のツボを突かれて取り乱してしまいましたが、冷静な感想も。 前半の、家庭環境と家屋の説明はなくても良いですね。関連性が感じられないので、剥製が怖いことなどを強調するのは逆効果かも。(-1) |
名前: 雨四光 ¦ 17:38, Tuesday, Feb 09, 2010 ×
文章0 内容0 怖さ0 ネタ1
非常に長く古い家屋の描写があったので、舞台はその家屋の中かと思っただけに拍子抜けした。小田さんが不思議な体験をしたのは外なので、家屋の描写は少なくてよかったと思う。太陽の中を覗いて、無表情な個人を見るという不思議譚は今まで聞いたことがなく面白い。 |
名前: ぬんた ¦ 20:20, Tuesday, Feb 09, 2010 ×
文章力 +1 稀少度 +1 怖さ 0 衝撃度 0
視力が極端に悪いのは怪異の所為ではなくて、医学的な理由からだと思う。なんでもかんでもオバケとからめちゃいかんよ。 さて始めの方で家の説明があるが、これはもっとさらりと書けばよいのであって、この一段落があるためにお化け屋敷譚かと思った。 太陽とチカチカとの上に重なって見える顔が段々知らない人の顔になって行くところが不気味だ。 |
名前: つなき ¦ 21:42, Tuesday, Feb 09, 2010 ×
前半の小田さんの境遇やお家の描写が暗いイメージなので、太陽やチカチカの明るいイメージの後半との対比が面白いと思いました。チカチカというタイトルも効いていますね。
太陽直視は失明の危機と隣り合わせなので、この遊びを再現する気には到底なれませんが、こんな簡単なことで死者を見ることができるかもしれないというのはインパクトがあります。チカチカ遊びがこの日だけで終わって、本当によかったですね。死者が次々と現れてくる描写は、強く印象に残りました。
・臨場感+1 ・没入度0 ・表現+1 ・恐怖0 |
名前: ダイタイダイダイ ¦ 00:54, Monday, Feb 15, 2010 ×
今、私の目もチカチカしてます。目の心配ばかりしてしまって、見える人物の事は二の次になってしまいました。ちょっとしつこかったかもしれません。
しかし太陽の中に死んだ人を見るというのは聞いた事がないので面白いと思います。
マッチ売りの少女の話の様に、メルヘン怪談を目指し、 最初は曽祖父、二回目は若い男、三回目は親戚、、、最後は目が悪くなりました。ってのはどうでしょう?でしゃばってすみません。
文章=−1 怪異=+1 心情=+1 合計=+1
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名前: 鏡餅 ¦ 20:17, Monday, Feb 15, 2010 ×
読んでいた私まで目がチカチカしてあまりの不思議さに 頭がクラクラだ。 小田さんは危険な遊びで目を悪くしてしまったものの 現在はちゃんと家庭教師をやられているとのこと。 少し安心しました。 危険だという認識はあったでしょうが、それよりも次々と 死者の顔が出てくる不思議さに思わずやめられなかった 子供ならではの心情がよく出ていて・・ あ。いや。もしかしたら大人の私もやり続けてしまうかも! 畳かけるように次々と顔が現れる部分はスピード感があって 引き込まれてしまった。 両親も友達もそばにいず、かわいがってくれた曾祖父にも 去られてしまった淋しく、恐がりな少年の心が 何かとリンクしてしまったのか。 物悲しく不思議で印象に残る作品です。
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名前: RON ¦ 10:35, Tuesday, Feb 16, 2010 ×
一回目のひいおじいさんは、何者かの罠でしょうか。 だとすればかなり性質が悪いですね。 類話は聞いたことがなく、興味深く読めました。 小田さんが太陽をじっと見つめられたことにまず驚きを感じました。 眩しさは我慢しておられたのでしょうか。気になります。 ラストにも、恐怖を覚えるよりは納得してしまいました。
希少性+1 構成-1 文章+1 |
名前: ランプ ¦ 21:25, Tuesday, Feb 23, 2010 ×
文章0 恐怖0 希少1 魅力0
それは確かに目が悪くなるかも。 とういか読んでる間もずっと失明したらどうしようとハラハラしっぱなしで別の意味で怖かったです。 不思議なお話ですね。 現れる顔全部が無表情はちょっと怖いけど、ひいおじいちゃんだけが笑っていた、というのが少しホッとする。
【他の方の講評を読んでから思ったこと】 あ、そうか、ひいおじいちゃんの顔で誘った罠だったのかも。 和むような文章から、そこまで怖い発想に頭が回りませんでした。 視力を落とさせるのが目的だったとしたら怖いよぅ。 |
名前: 幻灯花 ¦ 02:18, Wednesday, Feb 24, 2010 ×
「――このチカチカを太陽に重ねたらどうなるんだろうか。」 そうなんですよね! 子供の時ってついついこんなことを考えてしまうんですよね。 で、後々のことを考えずに好奇心の赴くままそれを実行してしまう、と。
今思えば絶対にしないようなことでもやってしまったりしちゃうんですよね。
おばあさんが帰ってこなかったらどうなっていたんだろうと思うと色んな意味でぞっとしますね。
怪異自体が珍しいと思ったので、そこを重点的に書いて、最初の部分を削ったならもっとインパクトのある作品になったと思います。
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名前: 鶴斗 密喜 ¦ 23:17, Sunday, Feb 28, 2010 ×
目が悪くなったのは太陽を見たせいでも、死んだ人の顔を見たのは太陽のせいではないから。 |
名前: 極楽 ¦ 15:58, Wednesday, Mar 03, 2010 ×
うーん。 どういった事象なのでしょうか。 面白いお話ですね。 |
名前: どくだみ茶 ¦ 18:08, Wednesday, Apr 07, 2010 ×
チカチカは小田さんの視力を弱らせるために現れたもの? もし親族の霊ならば、ひどいなぁ…… |
名前: ゼリコ ¦ 00:31, Saturday, Apr 10, 2010 ×
怪談点…0 文章点…0
太陽を直接見てはいけないとは、少し前にあった皆既日食の際に散々テレビ等で言ってましたね。 そりゃあ目も悪くなるでしょう。
さて、そのチカチカと太陽を重ねると亡くなった人の顔が見えるという話は珍しい。 まあ太陽を凝視する人自体がそんなにいないからかもしれませんが、聞かない話であることは間違いありません。 ただ、怪談としての面白味があるかというとどうでしょう。 文章には大きな加点要素もないと判断し、この点数にしました。 ただ、「チカチカ」という表現はいかにも子供らしくて良いと思いました。 |
名前: C班 山田 ¦ 17:00, Sunday, Apr 11, 2010 ×
死者を変わった方法で見た話。一度見た者が二度と見られないのがリアルに感じた。怖さに目新しさを加味して、この点数になった。 |
名前: 丸野都 ¦ 01:17, Monday, Apr 26, 2010 ×
ネタ・恐怖度:1 文章・構成 :0
読みながら「そんなことやって、目は大丈夫なのか?」と思っていたら案の定……そうなるまで続けるほど、この一人遊びに魅入られたということか。 見知らぬ顔が現れ続けた辺りで、よからぬ方向へ突き進んでいるように思え、不安が募ってきた。祖母の声で中断されなかったら、どこまでこの遊びを続けていたのだろう。 整理された文章は読みやすいが、前半部が冗長なように思える。
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名前: オーヴィル ¦ 23:40, Thursday, Apr 29, 2010 ×
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