超-1/2010審査用チェックリスト
・個別作品順ランキング
・暫定戦績表
・著者推奨
・最信任講評者推奨
← |
2023年10月 |
→ |
日 |
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
土 |
1 |
2 |
3 |
4 |
|
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
19 |
20 |
21 |
22 |
23 |
24 |
25 |
26 |
27 |
28 |
29 |
30 |
31 |
|
|
|
|
|
松本さんの田舎には、近郊では有名な観光地となっているダムが存在している。 そのダムに向かう道の丁度中間地点で、道路から海岸に向かって草木を分け入り下りていくと廃線に到達する。地元の人でも若い世代はその存在を知らないと云う。 かく云う提供者の松本さんもその一人だった。 大学生になり初めての夏休み。 松本さんは帰省した際に、偶々郷土史を目にする機会に恵まれた。 中学、高校と歴史に関心があった為、地元の移り変わりにも興味が湧き、貪るように読み漁った。 そんな松本さんが一番興味を持ったのが、廃線についての歴史だった。 昭和三年。地元の十一町村を結ぶ路線の工事が始まる。 昭和七年に全路線を開通するが、その蔭には多くの犠牲者が当然の如く存在していた。 工事中の事故等は勿論、それ以外の公にされない存在。 ――タコ部屋労働者。 過酷な労働に加え、満足な食事も与えられずに狭い空間に押し詰められる。 それに堪えきれずに脱走を試みた者は見せしめとして処罰を受けた。地中から顔だけ出した状態で殴る蹴るの暴行を受ける。事切れた者は、人知れず現場近くに埋葬された。 疚しい事実は闇へと葬り去られていたのである。 昭和五十年になり、郷土史を纏めようとしていた教職員のグループの手により十三体の遺骨が発掘された。しっかりと身元が確認できたのは僅かにそれだけで、その後有志を募り鎮魂の慰霊碑が建立された。 実際にはもっと多くの犠牲者が居たらしい。しかし、時間の流れが関係者の記憶を消し去っていた。 それ以上、犠牲者についての口伝は残されていなかったと云う。 不謹慎な話だが、松本さんはこの史実に興奮した。 何の娯楽も無い田舎町。その地元に心霊スポットと為り得る存在が実はあったのだ。 犠牲者の霊が廃線を彷徨っていると、勝手に決め付けた形になる。 カメラと懐中電灯をリュックに仕舞い込み、家族が寝静まる夜中を見計らう。 深夜二時過ぎに目的地へと車を走らせた。 二十分程走った頃、郷土史の内容を照らし合わせ、多分この辺りと予想を付ける。 路肩に車を寄せ、ヘッドライトを消すと身支度を整えた。 その日は月も照らさぬ曇り空。周囲は漆黒の闇に包まれていた。 取り出した懐中電灯の明かりでは心許ない中、慎重な足取りで草を掻き分けながら斜面を下りていく。 五分ほど掛けて下りきると、砂利に覆われた少し開けた場所に行き着いた。 開けたと云っても、精々、十メートル四方のスペース。 様子を窺う為に電灯で周囲を照らしていると、突如、雲がさーっと切れ、月明かりが周囲の風景を影絵の様に浮かび上がらせた。 朧気ながらもその明かりは手にする電灯よりも心強く、漆黒の闇に心細さを感じていた松本さんは、正直ホッとした。 濃淡の闇景色の中、少し先に地面が途切れた場所が見える。そこには梯子の様な道が続いていた。 ――目的の廃線だった。 錆び付いているが、踏み付けてみてもビクともせず、路線の鉄骨はまだまだ立派な強度を保っていた。恐る恐る廃線の橋を伝い、向こう岸へと渡っていく。 渡り終えた先に視えたのは、一層深い闇を描く、岩を削り上げたトンネル。 残念ながら入り口には柵が設けられ、進入することは叶わなかったが、松本さんはせめて写真に何かが写らないかと、柵の隙間から闇雲にシャッターを切った。 霊感を持ち合わせていない松本さんはここに到達するまで、全く霊的な恐怖を感じなかったと云う。その松本さんが突如、冷静になる。 額に水滴が飛んできたというのだ。 位置的に上から水滴が落ちてくるような物は、一切見当たらない。 夢中でシャッターを切る松本さんは、ファインダーを覗き込んでいる。その姿勢に対し、ある程度の勢いを保ちながら、真正面から一直線に飛んできたように感じた。 それも氷水を思わせる程、冷たさを感じるレベルの水滴が、三度も連続して飛んできたと云う。 松本さんもここで漸く、拙いのでは? と感じた。 早々にカメラをリュックに仕舞い、そそくさと来た道を戻る。 廃線の橋を慎重に渡っている時に突然、スッと背中が軽くなった。何故かリュックが外れ、一瞬の内に崖下へと吸い込まれていったと云う。 手を伸ばしたところで届くような距離ではない。それよりも背後から徐々に迫り来る、無言の圧力に怯えながら、泣く泣く帰途を急いだ。 家路までの道すがら、バックミラーに何度も白い靄が映り込む。 恐怖心に襲われながらも、全ては気の所為だと、自分に言い聞かせながら車の運転に集中した。 自宅に到着すると、両親を起こさないように気を遣いながら、二階の自室へ滑り込む。素早く万年床に潜り込むと、躰を丸めて蹲った。 その姿勢のまま恐怖心を堪えていると、何時の間にか周囲に満ち溢れている殺意に似た気配に気付く。布団越しでも判る濃密な気配。 どうしようもない松本さんは、ひたすらガタガタと震えていた。 莫迦な事をした、と後悔しても遅いことは判っていた。 ただ、朝だ。朝まで逃げ切ればなんとかなるだろう、という根拠の無い考えが、頭の中を満たしていた。 ――ドッ 潜り込んだ布団の上から重さを感じた。丁度、背中の辺りに十キロ以上の重石を乗せられた感覚があった。 (やばい!) そう思った瞬間に、躰の自由は奪われた。金縛りのように、完全に固まってしまった。 感じる重さはどんどんと増していく。呼吸が苦しくなり、躰中の血流が感じ取れる程に、得体のしれない何かに押し潰されていた。 もうだめだ…、そう思った瞬間、後頭部に鈍器で殴られたような激痛が走った。 松本さんは、そのまま意識を失った。 朝になり、母親に松本さんは叩き起こされる。 「何時まで寝てんの?! いい加減起きなさい!」 起きてこない松本さんの掛け布団を捲り上げた母親は、酷く驚いた。息子は躰を丸めた状態で呻いていた。 「どうしたの? 具合悪いの?」 慌てる母親に対し、躰中が痛いと伝えるのがやっとだったと云う。 尋常ではない姿に救急車を呼ぼうとする母親を制し、寝てれば治ると言い張る。松本さんは痛みを堪え、力を振り絞り布団を被り直した。 気が付くと、いつの間にか、金縛りは解けていた。 息子の行動を訝しがりながらも母親は、「何かあったら、言いなさいよ」と部屋を出て行ってくれた。 松本さんは、本能的に他の人に知られてはいけないと思っていた。 理由の一つに、躰に表現の出来ない違和感があったと云う。 その違和感が何なのかと、シャツを托し上げると肌が汚れていた。 シャツの表面的には目立ったものは見当たらない。ただ服に隠れた部分が全身、土塗れになっていた。 恐る恐る土の汚れを手で拭い取ると、肌には青紫色に変色した青痣があちこちにみられた。漸く、痛みの原因が理解出来たと云う。 松本さんは、完全に呪われたと思った。 通じるかどうかは判らないが、謝罪に行かないと殺されると思った。 そこで止むを得ず決意する。 母親には病院に行くと告げ、痛みの残る不自由な躰を無理矢理動かし、近所のスーパーで線香、花、供物を買いまわる。後は目的地まで、慎重に車を走らせた。 やっとの思いで昨夜訪れたトンネル前まで辿り着いた時には、家を出てから二時間が過ぎていた。 線香に火を付け、花と供物を目の前に並べ、自分の行動をひたすら詫びた。 「二度と同じことはしません。許してください。ごめんなさい」 延々と同じ言葉を繰り返した。 それからどのくらいの時間が経っていたのだろう。 気が付くと線香は全て灰になり、躰の痛みも和らいだ様に感じられた。 (許してもらえた) 松本さんは、トンネルに向かい深々とお辞儀をすると、その場を離れた。 家に帰ると、母親が心配そうに待っていた。 「診察の結果はなんでもなかった」と嘘を吐き、すっきりしたいからとシャワーを浴びる。 土に汚れた洗濯物も母親にバレないように、自分で洗濯した。 全てを終え自室に戻ると、昨夜からの疲れが一気に噴き出た。 布団の上に倒れこむようにして、そのまま眠りについた。 階下から叫ぶ母親の晩御飯を知らせる声に目が覚めた。 (おや…?!) 痛みが酷くなっている。躰を起こすのもやっとの状態だ。 ――ざらっ 厭な予感が頭を走り、シャツの中に手を入れる。 ざらざらとした感触。シャツを托し上げるとそこには土塗れの肌が見えていた。 そこへタイミング悪く、ご飯に降りてこない息子を呼びに来た母親がドアを開けた。 「…あんた、なにそれ?!」 結局、信じてもらえないことを覚悟の上で、全てのあらましを話すことになった。 父親と母親は黙って訊いていたと云う。 暫くの沈黙の後、「行くぞ」と父親が口を開いた。 母親にあれこれと指示を出し、一家揃って車に乗り込んだ。 車中は静まり返っている。 暫くすると、ハンドルを握る父親が呟くように口を開いた。 「莫迦なことをしたもんだ…」 何も言えない松本さんはただ黙って、助手席の窓から闇に染まった景色を眺めていた。 (あれ?!) 廃線に降りるポイントを過ぎても、車のスピードは落ちる気配が無い。 どんどんと、道を加速しながら進んでいく。 「父さん! 過ぎてる! 行き過ぎてる!!」 必死に止まるように促すが、お構いなしに車は進む。 「いいんだ。こっちに謝るしかない…」 父親の重い口調にそれ以降は何も話せないまま、ただ前だけを見続けていた。 それから暫くして車が止まった場所は、山道の中。 観光地と化したダムの直ぐ脇道に、車は乗り捨てられた。 懐中電灯を片手に、先に歩を進める父親の後を、松本さんと母親が付いていく。 十分ほど歩くと、目の前に石碑が見えてきた。 立派な四角いコンクリートの台座に、一メートルを超える石が置かれている。 表面には何やら文字が彫られている。 父親はその前で手際よく蝋燭に火を点し線香を焚くと、深々と頭を下げた。 「家の莫迦息子が失礼を働きました。二度とさせませんから許してください。お願い致します」 続くように母親も頭を垂れる。その姿を見た松本さんも慌てて続いた。 ――ガゴッ 音と同時に、松本さんは宙を舞った。 右頬に尋常ではない痛みが走る。何が起きたのか理解できなかったが、仰向けに倒れたまま、頬をおさえた。 ――ガッ、ガッ 間髪入れずに、右目と左目に次々と殴られたような衝撃が襲った。 「うぅぅぅっ」呻くのが、やっとだった。 「すみませんでした。失礼します」 目が開けられない状態の中、父親の声が聴こえた。 「ほら、いくぞ!」 父親の肩を借り、車まで歩いて戻る。 帰りの車中は誰一人、口を開くことはなく、家に着くと早々に布団の上に転がされた。 躰のあちこちは痛いままで、更に顔面にまで怪我が増えた。目も満足に開けられない。 松本さんは、痛みと理解できない出来事に悶々としながら朝を迎えた。 翌朝、鏡に映った自分の姿は最悪だった。 右頬は赤紫に変色し腫れ上がり、僅かにしか開かない両目の周りも、丸く赤色に変色していた。眼球も血走り、その姿は異形の者のように見えた。 松本さんは焦って病院に行こうとしたが、「大人しくしてろ!」という父親の一喝に従うより方法はなかった。 それから三日間、痛みが続き、ひたすら耐え続けた。 四日目の朝になると、痛みは嘘のように引いていた。 腫れ上がった頬も変色した目も、全てが元通りになっていた。 しかしその夜、松本さんは父親に懇々と説教をされる。 そして慰霊碑の前で、何が起きていたのかも教えてもらった。 「父さんと母さんは、あの時の光景を見ていたらしいんです。青白い人型の靄が一人分だけ、ヌッと慰霊碑から出てきて、僕を殴っていたらしいんです。でも、一人だけっていうのも、考えてみると変な話ですよね」 慰霊碑は廃線の歴史を知る人達の手で、今もひっそりと供養され続けている。 松本さんは父親が有志の一人であったことを、今回の件で初めて知ったのだった。
|
■講評を書く
■ Trackback Ping URL
外国のスパマーへのトラップです(本物は下のほうを使ってください)
http://www.kyofubako.com/cho-1/2010/entry-blog/trackback.cgi20100403080250
■トラックバック
この記事へのトラックバックURL(こちらが本物):
http://www.kyofubako.com/cho-1/2010/entry-blog/blog.cgi/20100403080250
» 【+4】闇線歴 [【超-1】講評専用ブログ 〜闇夜に烏がにゃあと啼く〜から] × 「タコ部屋」「ダム」「架線工事」から検索してみた。北海道に似たような場所を見つけた。ただ、数ヶ所ヒットしたため詳しい場所はどこかわからないが、大凡この辺かな〜と見当付けながら読んだ。怖い、というよりは痛ましい。遺体はゴミのように穴の中に遺棄されたり、ト ... 続きを読む
受信: 21:53, Tuesday, Apr 13, 2010
» 【+4】闇線歴 [闇夜に紛れて覗く者から] × 強烈な怪異といえる。時代背景からも、恨みは相当のものと感じる。恐らく松本さんの体験した痛みは、犠牲者の痛みであったのだろう。父親が有志の存在でなければ、果たして無事であったのかと疑問になる。気になったのは、父親の対応。慰霊碑に謝罪に訪れるのだが、 ... 続きを読む
受信: 23:58, Saturday, Apr 17, 2010
» [超−1]【+5】闇線歴 [幽鬼の源から] × “タコ部屋”という言葉から北海道の裏面史を思い出し、手がかりとなる土地関連の表記を洗い出すことで、おおよその場所を確認できた。 完全に合致する場所はなかったが、“観光地のダム”はS湖、“十一町村結び、昭和7年に全線開通の路線”はH線ではないかと推測す .. ... 続きを読む
受信: 13:08, Saturday, Apr 24, 2010
» 【+4】闇線歴 [2010超−1 講評から] × 文章+2 怪異+2全体的な文章量は覆いにも拘らず、全く読むのに苦ではありませんでした。すっきりと情報が整理され、怪異についての謠... ... 続きを読む
受信: 03:57, Monday, Apr 26, 2010
■講評
この文に出てくる松本さんの心霊スポット巡りの話は、前回でも多分読んだ記憶があるから。 |
名前: 天国 ¦ 22:27, Saturday, Apr 03, 2010 ×
これは強烈な体験をされましたね。 この場所にはよほどの怨念が渦巻いているのでしょうか。 ここまで物理的な攻撃をされると、他と違った怖さを感じます。 ご両親が解決策をご存知で何よりです。 心霊スポットに行った方が亡くなられる話をよく聞きますが、その既の所を垣間見たような気がしました。
文章の方ですが、怪異の威圧感や、松本さんの切羽詰った心情等、非常にリアルに伝わってきました。 惜しむらくは、所々で演出過剰な感があったところと、進行形で終わる文末が不自然な箇所で用いられているのが目に付いたところでしょうか。 大きく目立ったわけではありませんが、もうちょっとだけ、気持ち抑えてもらえると、話がより引き立ってきたかなぁと思います。
文章:1 希少性:2
|
名前: ていさつUFO ¦ 23:09, Saturday, Apr 03, 2010 ×
父親がいなかったら松本さんは確実にとりころされていましたね 霊にぼこぼこに殴られるというのは新鮮な恐怖です |
名前: ゼリコ ¦ 23:49, Saturday, Apr 03, 2010 ×
つまるところ郷土史に興味を持った若者が 地元の廃線の歴史を知り、霊スポットを探検する 感覚で赴いた為に大怪我を負わされた。 親の知るところとなり、大元である石碑に謝罪。 石碑から出てきた霊に殴られはしたものの何 とか許してもらえ事無きを得る・・と言うことで あろうか。
この話を執筆するにあたっての著者の採話力と 構成、表現力に感服した次第。
最初に、過去になされた路線工事の過酷で悲惨な 歴史を記していることが後の怪の見事な伏線となって おり読み手に説得力を与えている。
垂直に飛んできた水滴や落とされたリュック、 ミラーに映った白い霞や土塗れの身体などの 小さな怪現象をも散りばめ、見事な筆力で 情景や体験者の心情を余すところなく書きあげている。
そして父親の何もかも見抜いたような行動も 最後の一文で納得がいく。
ただ、これは私個人の恐怖のツボの違いだろうか。
下手をすれば死に追いやられたかも知れぬ恐怖 は確かに感じる。痛さも充分伝わってくる。 しかし視覚的に現れたものが無い為、または 石碑から出てきて殴っていただけの霊の描写が 薄い為、怖さを感じとれなかった。 最後の体験者の言葉も、今までのせっぱつまった ような描写に対し、何かのんびりした感があり、 スピードが緩んでしまった。
物見有山に訪れた者に対しての霊達の激しい嫌悪 と命をも奪いかねない仕打ちに対しての恐怖はある ものの何かきっちりした体験レポートを読んだ感覚が して、心の底からは怖がれなかった。
怪:1 表現力:1 構成:1 |
名前: RON ¦ 09:09, Monday, Apr 05, 2010 ×
これだけの内容を聞き取るのは、さぞかし大変だったろうと思います。私なら、ここまでの話にまとめられるかどうか…。ただ、その筆力に頼るあまり、やや演出過剰な気がします。 それはともかく、霊に凹られるってのは大変に珍しい体験ですね。私ならガード固めて顔面だけは守りますが。 ネタ・1 構成・−1 文章・0 恐怖・1 |
名前: 一反木綿豆腐 ¦ 13:15, Thursday, Apr 08, 2010 ×
文章力 +1 稀少度 +1 怖さ +1 衝撃度 +1
長かったが一気に読めた。段落わけや行間も適度で読みやすい。 とっかかりが心霊探訪という不謹慎なものであったために霊達の怒りをかったというわけだが、生半可なお詫びでは許してもらえなかったというところが怨みの深さを思わせる。 お父さんの必死の謝罪と日頃の行動(有志として供養している)で救われたが、これだけ執拗に暴行を加える霊の話は初めて見た。
|
名前: つなき ¦ 19:23, Thursday, Apr 08, 2010 ×
所謂心霊スポット怪談とは異なる、重みのある話である。 場所に纏わる歴史も過不足なく書かれ、そして話者を襲う怪の凄まじさもきちんと描かれている。 その激しい霊障こそ、生前に彼らが受けた暴行そのものなのだろうと思える。 解決を見たかと思えた直後からの展開には驚かされると同時に、怪が矛を収めた理由も解った。 もし話者の父が有志の一人でなかったなら。 そう考えると、この話の重みと恐ろしさがより強く伝わってくる。 |
名前: amorphous ¦ 01:25, Sunday, Apr 11, 2010 ×
体験者さんが、身近に心霊スポットがあったんだ、と出かけて行ったところでオチのおおかたはわかってしまいますね。 よく書けたお話だとは思いますが、何か体験レポートでも読んでいる様で、内容は凄いのに生々しさは伝わってきませんでした。
|
名前: どくだみ茶 ¦ 15:39, Wednesday, Apr 14, 2010 ×
こういう時代背景がしっかりと書かれていて、それでいて怪異もしっかり起きているという話は個人的に好みです。
そして内容がまた昔の過酷な労働に対する扱いの酷さ。 労働者の辛さなどは自分が思う以上に苦しいものだったと思うので簡単には書けないのですが…。
それを興味本位で行ってしまい、てっきりお線香をあげて謝って終わり、だと思って読み進めていったらそうではなかった。 最後はぼこぼこにされ、それを敢えて見守る父親。 そのくらいで済んで良かったと思うべきか。
色々考えさせられた作品でした。 |
名前: 鶴斗 密喜 ¦ 17:17, Sunday, Apr 18, 2010 ×
仰々しくてちょっと疲れた、というのが正直なところです。すらすら読めたとは言えません。個人的にリズムが合わないのかも…。 手当たり次第に漢字に変換している向きがあります。あえて常用外を選んでいたり。そのせいかやたらと硬い文章に見えるのですが、「青紫色に変色した青痣」といったポカもあり、背伸びをして書いているように思えました(筆者さんがおいくつなのかも分からないのにごめんなさい)。(-1)
というわけで、やや苦戦したものの、読み応えがありました。 歴史にハマったという松本さんの情報のみに頼らず、筆者さんも綿密に調べ上げたのではないでしょうか。
興味本位で曰く付きの土地へ出向き、現地でちょっと怖い目に遭い、帰ってからさらに怖い目に遭う。ここまではお約束とも言える流れです。 その後の展開がすごい。ご両親に痺れました。 お父さんは、今までにもこうした仕打ちを受けた者を見たことがあるのでしょう。だからこそ、松本さんに廃線の存在を教えなかったのだと思います。 しかし息子が関わってしまった以上、慰霊碑へ連れていくしかない。気が済むまで殴ってもらうしかない。傷は三日もすれば治るから、と。 松本さんにも、そんなお父さんの血を引いているのだな〜と思わせる一面がありますね。お祓いなどは考えずに、謝罪に行こうと即決するあたり。
松本さんが自室で負った怪我が、亡くなった方々による仕返しなのか、事故の追体験なのかは分からないけれど、このまま隠し続けていたらどうなっていたことか。バッドエンドを想像するとぞっとします。(+4) |
名前: 雨四光 ¦ 05:10, Saturday, Apr 24, 2010 ×
このお話に「怪異としての」恐怖を感じることはできません。ただただ「人間」が怖いです。ここで描かれている過去の惨事は、もちろんここだけの話ではなくこの国中に溢れていた出来事で、いえ、現在進行形で行われているかもしれません。部外者の顔で、安全圏から感想を述べることも不謹慎なことかもしれません。
慰霊碑や供養を軽んじるつもりはありませんが、そのようなものでは取り返しのつかないことをしてしまっているという事実は忘れてはならないと思います。それでも取り返しのつかない目に遭わされて亡くなってしまった方々は、怒りや無念を必死に抑えようとしてくれていると思うと堪らない気持ちになります。
松本さんやご両親の真摯な謝罪を受け止め、三日で治るくらいの暴力で堪えてくれた犠牲者の方に確かな理性と義を感じました。松本さんのこのお話を、たくさんの人に知って欲しいと思います。読みやすく、判りやすい描写で描いていただいているので、お話の内容がストレートに入ってきました。
・臨場感+1 ・没入度+1 ・表現+1 ・恐怖0
|
名前: ダイタイダイダイ ¦ 22:16, Tuesday, Apr 27, 2010 ×
ネタ・恐怖度:1 文章・構成 :1
怪異だけでは「少し怖い話」に留まったろうが、時代の闇に埋もれた史実が恐怖の度合いを引き立てている佳作である。 顔面への殴打に、半世紀以上を経てなお消えない怨嗟の念が現れていて、この話の根が相当に深いことを物語っているように思う。 怪談は純粋な怖さだけでなく、バックボーンもまた重要なファクターであることを認識させられた。
|
名前: オーヴィル ¦ 17:35, Wednesday, Apr 28, 2010 ×
大変読み応えのある内容でした。 歴史的な背景をきちんと踏まえながらの労作です。 この話を取材してまとめ上げた労力に敬意を表します。 しかし一方で、怪談というよりは報告書を読んだような読後感でした。 すさまじい体験だと思います。 ただ、一点だけ。 初回から夜中に行くものではありません。下見ぐらいはして欲しいです。 でないと心霊的な意味ではなくて、割と本気で命が危ないことがあります。 |
名前: 捨て石 ¦ 22:05, Wednesday, Apr 28, 2010 ×
文章1 恐怖1 希少1 魅力1
冒頭から精錬された文章にすごいすごいと夢中になって読んでいました。 松本さんの恐怖もリアルに伝わってきたところで、拙いのでは?でちょっと苦笑してしまった。 長いんですが、全く苦もなく読めたどころか、もっともっと読みたいと思ってしまった。 はっきり何かを見たわけではないですし、霊に暴行を加えられるというのはなかなか凄いことなのですが、それにしてもここまで恐怖感が伝わってくるのは背景までばっちり抑えてあって、起承転結から綺麗に起こせる著者様の筆力あってのものだと思います。 そういう歴史に興味はあるのですが、正直あまり好きな部類の話ではありませんでした。 でもそんなのどうでも良くなるくらい。凄いです。 タイトルセンスも素晴らしいです。 すみません、素晴らしい以外に言葉が出ません。
|
名前: 幻灯花 ¦ 02:00, Thursday, Apr 29, 2010 ×
忌まわしい過去の在る心霊スポットでの罰当たりな肝試し。当然、何が起こるのかを戦々恐々と読み進めるわけですが、私の期待が過剰に高かったのか、「その程度ですんで良かった」と思ってしまいました。霊にボコボコにされるというのは新しい話だとは思いましたが。 |
名前: 丸野都 ¦ 00:30, Friday, Apr 30, 2010 ×
怪談点…1.5 文章点…1.5
文章や構成、全体のバランスが絶妙でした。 冒頭の歴史的背景の説明が本文で起こる怪異に説得力を持たせることに成功しています。
戦争や災害などの歴史上の大きな出来事と直接関連付いている体験談というのはとても重いものですが、この作品の場合その背景にある事実とそこに存在した多くの犠牲者までをも読む者に想起させ、非常に読み応えがありました。 特に当時行われていたという処罰を彷彿とさせる物理的な攻撃の数々。その凄まじさは犠牲者の悲しみと無念さを見事に表しています。
書き手はこの作品をどれ程の時間を掛けて書き上げたのでしょう。 随所に体験者とその家族だけでなく、その場所で犠牲となった方々への心配りと、この話を通してそういった歴史的事実があったことを訴えようとする強い思いが感じられました。 |
名前: C班 山田 ¦ 02:41, Friday, Apr 30, 2010 ×
悲しい歴史があったんですね。 松本さん、命を取られなかっただけマシでしたね。 怖いけれど、悲しいお話でした。 |
名前: 極楽 ¦ 16:00, Friday, Apr 30, 2010 ×
悲惨な史実を巧緻な怪談へと活かした作品です。 松本さんの体験部分に比べると史実の記述が少々簡素なために、障りの顛末がやや長く感じはしますが、締めくくりの数行でうまく作品を引き立たせていると思います。 |
名前: しまうま ¦ 23:09, Friday, Apr 30, 2010 ×
|
携帯で読む |
|
|
QRコードの中だけにある怖い話

|
■■■ ◆◆◆
|