超-1/2010審査用チェックリスト
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「部下の大住って奴のことなんだけどさ」 土木工事会社に勤めている北見は、大住の処遇について頭を悩ませている。
「友達とバンジージャンプしに行くんスよ」 盆休みに入る前、大住は嬉しそうに周囲へ触れ回っていた。とあるキャンプ場の近くに、バンジージャンプを楽しめるスポットがあるのだという。 「吊橋から三十メートル下の川に向かって飛び込むみたいなんスよ。すげー面白そうだと思いませんか?」 「高い場所なんて、仕事で登り慣れてるだろ?」 「違うんスよ、北見さん。仕事じゃ、高い所から飛び降りるなんて絶対できないじゃないッスか。それを遊びとして楽しめるからいいんですよ」 そういうものか。北見はそれ以上深くつっこまないことにした。 やがて盆休みも終わり、通常の業務が始まった。北見は大住と一緒にビルの建設現場へ向かうことになった。 「どうだった、バンジーは?」 現場へ向かう車内で、大住に問うてみた。しかし、どうも大住の表情が優れない。 「どうした? 思ったほど面白くなかったか?」 「そういうわけじゃないんスけど……」 躊躇いを見せながらも、大住はバンジージャンプでの出来事を語り始めた。
盆休みということもあり、バンジージャンプ会場では、数秒間のスリルを求める人々が長蛇の列をなしていた。 炎天下でふらふらになりながら待つこと二時間。いよいよ大住の番になった。 慣れているとはいえ、さすがに三十メートルの高さは足が竦みそうになった。だが、友人たちの手前醜態を晒すわけにもいかない。 「スリー、ツー、ワン、バンジーッ!」 係員の掛け声と共に、宙へ身を躍らせる。 ほんの束の間、無重力を味わう。 間もなく視界が逆さになり、速度を増しながら頭から水面目掛けて落下していく。 突如、大住の視界が塞がれた。 灰褐色の顔面が、鼻先すれすれの位置に現れたのだ。あまりに近かったので、男女いずれだったのかまでは判別できなかった。ただ、虚ろな目に見据えられたのだけは覚えている。 顔が眼前にあったのは、ほんの数秒のことだった。 ゴムロープの反動で宙へと引き上げられたときには、もう顔は消えていた。 川面を見回してみたが、収容用のゴムボートの乗員以外は誰もいなかったという。
「何かの見間違いじゃね?」 「絶対言うと思った! 見間違いじゃないっスよ! 本当に見たんですって!」 色をなして反論する大住を宥めている間に、現場へと着いた。 晩夏の陽光に身を焦がされながら作業に没頭する。 ふと、隣で作業している大住が気になり、顔をそちらへ向けてみた。 大住は、足場から飛び降りようとしていた。安全帯はすでに外されていた。 北見は咄嗟に大住に背中から組み付き、羽交い絞めにした。 「馬鹿、何やってんだよお前っ!」 怒鳴りつけると、大住はきょとんとした表情を北見へ向けた。 「あれ……あの、俺、ここから飛び降りようとしたんスよね……」 そう言って、二十メートル下の地面を指差した。
訊けば、作業をしているときに、耳元で掛け声がしたという。 「スリー、ツー、ワン、バンジーッ!」 反射的に「あ、飛ばなきゃ」と思い、安全帯を外して飛び込もうとしたところで北見に制止されたのである。 「何の疑いもなかったんスよ。飛ぶのが当たり前のような気がして」 大住はそう語った。
「たまたま俺がその場にいたからよかったけど、また同じようなことが起きたらヤバイな、て思ったんだ」 大住はまだ会社に在籍している。しかし、高い場所での作業はさせていない。 辞めさせるという選択肢もあったが、他の会社で高所作業に従事した時のことを考えると、それも憚られるのだ。 「だから悩んでるんだよ」 北見は苦虫を噛み潰したような表情になり、溜息をついた。
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» 【+4】バンジージャンプ [【超-1】講評専用ブログ 〜闇夜に烏がにゃあと啼く〜から] × わーっ、堪らん。こんなのに魅入られたらひとたまりもないな。高層マンションに住んでた日にゃ、とんでもない事になりそうだ。未然に防ぐ事が出来て何より。北見氏の苦悩もさもありなんである。飛び降りようとするのは高い所に登らせなければ防げるが、そのうち自ら「登 ... 続きを読む
受信: 19:23, Thursday, Apr 15, 2010
» 【+2】バンジージャンプ [闇夜に紛れて覗く者から] × 類話として存在するパターンは、崖下に顔を目撃する。魅入られたように飛び降りようとするところを、周りの人に止められるという話だ。その場から離れることによって、その後は障りがないのが基本形といえる。しかし、この話の突出したところは、どうも完全に取り憑いてい ... 続きを読む
受信: 22:32, Tuesday, Apr 20, 2010
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受信: 20:38, Monday, Apr 26, 2010
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受信: 09:23, Wednesday, Apr 28, 2010
■講評
これは不幸な。仕事でなくとも、高いところに行く事もあるでしょうに。例えば、東尋坊とか絶対に行けませんね。文章もそつなく、するすると頭に入ってきました。 ネタ・1 構成・0 文章・1 恐怖・1 |
名前: 一反木綿豆腐 ¦ 15:41, Monday, Apr 05, 2010 ×
ここで大住に死なれたら、北見さんものすごく後味悪いですもんね ちょっとユーモアのある話ですね 文章もよくまとまっていて読みやすいです |
名前: ゼリコ ¦ 22:39, Monday, Apr 05, 2010 ×
バンジージャンプは、人間が極限状態に陥った時にも似ているので、落ちていく鼻先寸前で灰褐色の顔を目撃したんでは?でもその顔、川が現場であるため水死した人?ともとれるから。 |
名前: 天国 ¦ 01:05, Tuesday, Apr 06, 2010 ×
「あ、飛ばなきゃ」じゃなくて! 本当にやめなさい!!と叫びたくなった。 灰褐色の顔面はやはりそこで亡くなられた方 なのだろうか。 反動でまた落ちた時はもう見えなかったのか。 下がる度に何回も見えなくて良かった。
コミカルな文章とは言え、本当に飛びこまれたら 大変悲惨な事件になってしまう紙一重の緊張感。
最初、何かおもわせぶりに大住さんの名をちらりと出し 最後で、だから悩んでいるのだと終わる構成の上手さ。 その悩みも一緒に(うむ・・)と考え込むような内容である。 テンポも良く、さくさく読めた。
文章のリズム:1 ネタ:1 |
名前: RON ¦ 20:23, Tuesday, Apr 06, 2010 ×
なるほど。 これは確かに頭を悩ませますね。 何に目を付けられてしまったんでしょうか……。 高所で作業する人を選んでるんですかね。 この無意識に操られてる感が不気味に思えました。
文章の方ですが、全体的に状況が解り易く、怪異の不気味さも充分伝わってきました。 ちょっと気になったのは、バンジージャンプ中そのものが数秒の間であるにも拘らず、顔が現れた時間も数秒と示されているところにちょっと不自然さを感じました。 大筋としては大きな問題ではないのですが、ここは動きのある場面であるため、時間描写はもう少しだけ気をつけて頂ければな、と思います。
文章:1 希少性:1
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名前: ていさつUFO ¦ 22:10, Tuesday, Apr 06, 2010 ×
文章力 +1 稀少度 +1 怖さ +1 衝撃度 0
街なかで綱無しバンジーをやられた日にゃ、やった本人だけでなく回りの者が皆いたたまれなくなる。 灰色の顔に魅入られたのだろうか。飛ばなきゃと思わされてしまうとは恐ろしい。灰色の顔の持ち主は以前その川で命を落とした者なのか。 バンジージャンプをするつもりならば、普通は命綱を「つけて」と思うのだろうが、いそいそと安全帯を外してしまうところなどはゾッとする。 |
名前: つなき ¦ 21:49, Friday, Apr 09, 2010 ×
冒頭のやりとりで嫌な予感がしたが、まさか予想通りの展開になるとは思わなかった。 悪い意味ではない。 北見氏には当初から魅入られる素養があったのだろう。 まんまと魅入られ、論理的判断のリミッターを外される様子は、かなりの怖気を覚えた。
筆者に専門家のつてがあることを願うばかりである。 |
名前: amorphous ¦ 21:08, Saturday, Apr 10, 2010 ×
あちゃー。魅入られましたか。 もしかしたら飛び降りをする人の中には、軽やかに紐無しバンジーをしてしまった人が含まれているのかもしれませんね。 大住さんには落ち度は無かった以上、これもまた通り魔的なものの一種なのでしょうか。安全な所はどこにも無さそうです。
しかし列になるほどですから、他にもバンジー体験者は多いと思うのですが、この手のことに巻き込まれてしまう率というのはどんなものなんでしょうかね。
そこだけが気になりました。 文章はすらすらと読ませていただきました。 |
名前: 捨て石 ¦ 16:57, Sunday, Apr 11, 2010 ×
うーわー。 こういうところにも怪異が。 とても緊張していた時の一瞬の出来事で、後日談の飛び降りようとしていた事も怪異とは言えないのかもしれないですが… 個人的には怖くて厭な話に思えました。
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名前: どくだみ茶 ¦ 19:07, Wednesday, Apr 14, 2010 ×
うわー、大住さん運が悪かったですね。 これってバンジーで見た灰褐色顔の怖さより、日常生活で高所に行けない方が怖い。(心がけても高所に行かない生活ってあり得ないし) ある程度の高さから、いつかけ声が聞こえてくるか分からない怖さ、誰も知らない所ならまだしも、事情を知っている人の前で止められなかった場合の後味の悪さ、最悪ですね。
いつ呼ばれるか分からない恐怖 +1 |
名前: ume ¦ 22:31, Thursday, Apr 15, 2010 ×
無事で良かったですね、大住さん。
バンジーで落下した時に人の顔が見える、というのは実話でも創作でもよく聞く類ですが、その後も魅入られてしまって本当に飛ぼうとしたのを間一髪止められる、というのは希少だと思いました。
というか実際にその場に北見さんがいてくれて本当に良かったですね。
一刻も早く御祓いなり専門家を頼るなり何らかの対処を取られた方が良いと思います。
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名前: 鶴斗 密喜 ¦ 20:39, Sunday, Apr 18, 2010 ×
これは周囲の人がしっかり見ててあげないと、とんでもないことになりますね(その場合労災はおりるのだろうか……)。 早くもとの状態に戻られることを祈ります。 現実みのあるお話で怖いです。 |
名前: キャザリー ¦ 20:12, Monday, Apr 26, 2010 ×
ネタ・恐怖度:1 文章・構成 :0
文章がやや飛び気味だが、怪異そのものは性質が悪い内容だ。 騙す、という範疇を通り越して、心神をコントロールして死に誘う点に、滲み出る悪意が感じられる。 大住さんには、他の業界へ移ってほしいと祈らざるをえない。 |
名前: オーヴィル ¦ 03:28, Wednesday, Apr 28, 2010 ×
あっ、バンジージャンプ。やってみたかったのに…。こんなお話を読んだら、迷ってしまいます。
とんでもない後日談が出てきて驚きました。 大住さん、この先大丈夫なんでしょうか。仕事以外でも高所に上る機会はいくらでもあるわけで。 陽気な掛け声とのギャップが恐ろしいです。とり憑いた者は、遊びのバンジーで亡くなったわけではないだろうに。(+2)
体験者さん以外の視点で書かれているのに、「怖い!」とモロに感じられるお話はあまりなかったような気がします。 北見さん視点であることを踏まえた構成になっていて、同じ気持ちになれました。(+1)
※配点漏れにつき再送信。失礼しました。 |
名前: 雨四光 ¦ 01:49, Thursday, Apr 29, 2010 ×
文章1 恐怖0 希少1 魅力0
「何かの見間違いじゃね?」 「絶対言うと思った!本当に見たんですって!」
この見慣れたやりとりに思わず笑ってしまいました。 しかし何故その大勢の客の中から大住さんだけが選ばれてしまったのでしょう。 私は5メートルのプールの飛び込み台からですら足が竦んで飛べなかったので、バンジーなんて一生やらないとは思いますが、余計にやりたくなくなりました。 そこで落下事故でもあったんでしょうか。 軽快な文章のためかそこまでの恐怖は感じませんでした。 鈍いんでしょうね、私。 大住さん、お祓いしてもらえるならしてもらった方が良いですよね。 危ない。 |
名前: 幻灯花 ¦ 04:33, Thursday, Apr 29, 2010 ×
バンジーでは安全帯を外すなんてことは絶対ないのに、「スリー、ツー、ワン、バンジーッ!」で外してしまう、そこがもう憑かれてることの何よりの証明ですね。
文章が読みやすく、流れるように状況を思い描きつつ、お話を読み進めることができました。冒頭と〆部分で、北見さんが大住さんの処遇に頭を抱えている構成はいいなと思いました。会社の効率と情の部分と、真剣に悩んでいらっしゃる北見さんは素敵な上司だなと思います。そして大住さんに、まったく危機感がないという事実が堪らなく不安感を煽り、恐ろしいです。
短いお話の中に、北見さんと大住さんのキャラクターがしっかりと描かれていることが、とても好みでした。
・臨場感+1 ・没入度0 ・表現+1 ・恐怖+1 |
名前: ダイタイダイダイ ¦ 16:43, Thursday, Apr 29, 2010 ×
飛び降りさせようとする幽霊の掛け声が新しかったと感じたので、この点数です。 |
名前: 丸野都 ¦ 01:15, Friday, Apr 30, 2010 ×
大住さん、何に魅入られてしまったんでしょう。 自ら高い場所に登るようにならないよう願うばかりです。 |
名前: 極楽 ¦ 17:38, Friday, Apr 30, 2010 ×
怪談点…2 文章点…1
これは怖い! 命がいくつあっても足りん!
まずバンジー・ジャンプ中の怪異というのが新鮮でした。 バンジー・ジャンプって飛び降りたらその人の体は常に落ちてるか上がってるかで中空を移動している状態になるわけです。 それなのに目の前すれすれに顔があり続けることの異常さ。
そして高所作業中に気が付いたら安全ベルトなしで飛ぼうとしている。 厄介なのに魅入られたってことなんでしょうね。
そんな彼を持て余している上司のぼやきも作品に面白さを加味しています。 |
名前: C班 山田 ¦ 21:38, Friday, Apr 30, 2010 ×
友人とバンジージャンプにいくと言っていた時点で、すでに大住さんは病んでいたのではないだろうか。そして水面に見えたのは、大住さん本人ではないだろうか。そして、自分で自分に暗示をかけた。 心配してもらうためなら、その後のそういう行動にでるかもしれない。 などと書かれていない水面下でのやりとりをあれこれ考えると面白かった。 怪異を見るのは人。怪異を見ておかしくなったのか、怪異をみるまえにおかしくなっていたのかは誰にもわからない。何かに”つかれ”ては、いるのだと思う。 北見さんは優しいが、上司としては失格かもしれないなと思う。この先の大変さを思って勝手に心配してしまった。 個人的心情的に、話としては迷惑な話しであるし、大住さん、北見さんの立場にたっても共感ができず、この点とさせていただく。
文章=0 怪異=0 心情=−1 合計=−1 |
名前: 鏡餅 ¦ 23:04, Friday, Apr 30, 2010 ×
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