遺伝記/2008
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神木の見つけ方
 深い渓谷に切り立った岩山。
 霞に煙る中、老松の緑の五本の針のような葉がそよいでいる。
 山腹の、陽当りの良い斜面に張り出した棚の上、甘い馨を醸し出す真紅の実を付けた桃の木が、枝葉を繁らす其の下に、其の庵はあった。
 草葺の八角屋根の其れは、庵と言うより東屋の様にも見え、間口一間ほどの、扉とも窓ともつかない造作である。
 開け放たれた其れを、桃の香を乗せた谷風が通り抜けていく。
 谷側に身を乗り出し、渓流を見下ろせば、沢音すら聞こえず、唯、風に木樹が応え啼くのみである。
 其の風の音に、人の声が騒がしく重なってきた。

 「なみる〜の和尚〜さ〜ん。寅ですよ〜。居られますか〜。」
 (たく!あの莫迦。いざなみ流の師匠だっ!て言ってるのに。解らん奴だ。)
 そう心に思いながらも、口元を綻ばせ、満更でもない顔で、しかし、返事もせずに瞑目を続けている。
 程なく、息一つ乱す事無く庵の前に現れた彼は、人懐こい無邪気な笑顔で、
 「を!いらっしゃいましたね。今日も又一つ、ご教授願いたいと思いまして、参上仕りました。」
 「お前のは推参だよ。何時にも増してやけに騒々しい。」と言いつつ、内心の嬉しさを繕うかのごとく、困惑顔をして見せ、
 「此処に来られたと言う事は、人間には戻らないで済んだ様だね。」
 照れながら、バツの悪そうな、それでいて真剣な口調で、
 「エヘヘ、肝心のモノが見つからなかったもので・・・。」
 「寅吉。お前も、以前は仙童と呼ばれておったに、修行を怠けて居るから、物事の道理が解らなくなるのだ。」
 と、叱っておいて、お神酒を呼び出す。
 「こりゃ、どうも。例の御神木なんですがね。真贋というか見分け方と言うか・・、どうやって見つけたら宜しいんでしょうかね?」
 「まだ拘って居るのか?」
 「いえ、もう恨みなんてものはからきしなんですが、ちょいとこの、なんです。」
 「なんだい、今度は何をやらかそうとしているんだ。」

 寅吉の言うには、御神木で家を建てれば、長持ちして、台風や雷、地震や火事等からも、身を護れるのではないかと・・・。
 「愚か者!其の前に罰が当るわ!」である。

 本来、木の寿命と言うのは、切り出された時が、折り返しなのである。
 千年生きてきた木は、切られて後、千年はいき続ける。因って、建材となり建物となっても、千年保つと言う事である。(法隆寺を見よ!)
 真の御神木は、ひとのに手で触れられるものではない。切り倒すなどもっての外。因って、切り出されてしまうモノは、御神木ではないのである。
 祝詞を挙げようが、御祭しようが、無駄なのである。
 (何時であったか、豊国の秀吉が、軍船を造るとか言うて切り出そうとしたが、怪我人は続出するは、死人は出るは。途中まで切り込んでも、傷痕は翌日には元通りに成ってしまい、最初からやり直しでな。あの時も、儂の所に頼ってきたな。尤も、あの木は、御神木ならぬ、〔妖木〕であったからな。あんなもので造った船なぞ、役に立つどころか祟りを撒き散らして大勢が贄にされてしまったがな。)
 
 神殿造営に使用する神木は、何年も前から選んで、鎮まるのを待っているものだ。鎌や矢で目安を付けておいてな。
 注連縄なぞで、結界を張ってあるものがあるが、あれは、外からの進入を拒む物ではない。神威の、外に漏れ出すのを抑えて居るのである。

 「ん?おまえ、その腰にぶら提げている御幣の付いたのは何だ?結界破りをしたのか!」
 驚く師匠が眼を上げると、バツが悪そうに、小さくなって頭を掻く寅吉の後ろに、

 何時の間に入って来たのか、はにかみ笑顔のモノ達が、窮屈そうに後から後からゾロゾロと・・・・・




03:52, Friday, Jul 25, 2008 ¦ 固定リンク ¦ 講評(15) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(7) ¦ 携帯


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■講評

2
ご神木の勉強になりました。ありがとうございました。最後に出てきたハニカミ笑顔のもの達って何でしょうか?結界破りをして溢れ出てきた何かでしょうか?ちょっと正体がわからなかったかな。
【アイデア】1 【描写力】0 【構成力】0 【恐怖度】1

名前: 如来 ¦ 14:09, Friday, Jul 25, 2008 ×


0
説明に欠けている部分が多くてわかりにくいです。
寅は仙童だったのかぁ。
最後のは何でしょう?
次回で判明したりするのでしょうか?

【アイデア】0【描写力】0【構成力】0【恐怖度】0


名前: ぼりす ¦ 15:00, Friday, Jul 25, 2008 ×


0
アイデア ±0 
描写力 ±0
構成力 ±0
恐怖度 ±0

この「寅」のシリーズは「ご教授願いたいと思いまして」といいながら何を訊きたいのか全然わからん。

名前: くりちゃん ¦ 20:30, Friday, Jul 25, 2008 ×


-2
「はにかみ笑顔のモノ達」とは何か。書き方があいまいすぎて、オチがオチになっていない。

名前: ナルミ ¦ 00:22, Saturday, Jul 26, 2008 ×


-2
読み辛かったです。舞台設定上、文体は仕方ないと思うのですが、( )の多様はあまり好感を得られません。最後のオチも意味不明のまま終了しちゃってます。三部作で三作目にて完結という発想なのかもしれませんが、単作勝負の遺伝記では評価されづらいものがあります。

【アイデア】0、【描写力】-1、【構成力】-1、【恐怖度】0

名前: 茶毛 ¦ 02:47, Saturday, Jul 26, 2008 ×


1
薀蓄が面白い。ただそれに終始してしまっているので、お話としては辛いかな。


【アイデア】+1 【描写力】 0 【構成力】 0 【恐怖度】 0

名前: 猫塚イスマ ¦ 08:48, Saturday, Jul 26, 2008 ×


1
このなんていうかトントンとしたノリは好きです。
が、この話単体ではよく解らない事が多く、結末も何なのか解らないまま終わっていて消化不良感が残りました。

【アイデア】+1 【描写力】 0 【構成力】 0 【恐怖度】 0


名前: PM ¦ 19:20, Saturday, Jul 26, 2008 ×


2
いろいろ知識があり、言葉を知っていてかいているのかなと思いました。
なんか凄いです。
ただ最後がよく分からなかった。

【アイデア】+1 【描写力】+1 【構成力】+1 【恐怖度】-1

名前: 華鹿 ¦ 17:28, Monday, Jul 28, 2008 ×


-3
前半のどうでもいい部分に対して無駄とも思える描写が施され、その割に肝心の後半部分が師匠の説明で殆ど終わっている。神木の話から結界に話題を移すあたりは工夫したように見られるが、師匠の蘊蓄も珍しい話ではなく、後半の駆け足な展開が特に全体の完成度としてみると低く感じる。

結局この作品は、前半の無駄な描写を省いても2人の会話だけで済みそうな話であるのに、漫談のような前振りで勿体つけて話を延ばしたりと、小説らしい話に装飾しようとした努力の跡しか見えてこない。時間的な流れを持たせたり、サブストーリーの挿入など、話に深みや奥行きを持たせる方向に味付けを変えてみる必要があるように思う。

【アイデア】0、【描写力】-1、【構成力】-1、【恐怖度】-1

名前: 廻転寿司 ¦ 18:46, Monday, Jul 28, 2008 ×


1
 お師匠様の言うことも聞かんといらんことして余計なモノを連れてきてしまって、実は何とかして欲しいとお願いするつもりでやってきた、と。
 オチは良くわかりましたよ。

 ただまあ、そのオチにつなげるのにどうお話を持って行くか、ですね。
 実はさらっとわかりやすい話だけにネタフリが難しいですよね。
 ほのぼのとしてて面白いんですが。

【アイデア】+1 【描写力】 0 【構成力】 0 【恐怖度】 0

名前: ユージーン ¦ 23:16, Monday, Jul 28, 2008 ×


0
落語の「ぞろぞろ」のようなオチ?
どうせなら、後半も会話にしてしまえば・・・。

【アイデア】0、【描写力】0、【構成力】0、【恐怖度】0

名前: 尚休 ¦ 16:40, Tuesday, Jul 29, 2008 ×


-4
読者にある程度の知識と、何らかのノリを求める作品だと思います。
知識が乏しく、この世界観に入り込めない読者は置いてきぼりです。

残念ながら、自己満足の域を脱していないのではないでしょうか。

発想・−1 文章・−1 構成・−1 恐怖・−1

名前: 暗沌子 ¦ 14:31, Wednesday, Jul 30, 2008 ×


1
師匠さん、人変わってますよね?
一言目とか…んな短気で仙人になれるんかいな…。
前回分かり難かった所が改善されてる所も
あるんだけど、直して欲しいのはそこじゃ
ないっていうか…。
仙童も、そんなアホアホでなれるのかしら…?
なれるんですかね…。
勉強不足でどうも、分からないです。
「察してくれ」
「そんな知識のないヤツには分からない」
って事でしょうか…?

名前: ちゅん ¦ 21:58, Wednesday, Aug 13, 2008 ×


0
純粋に御神木についてのあれこれを書き記したかった? それに寅吉との絡みを入れる構成は特にまずくはないと思うのですが、何故か散漫な印象の作品に仕上がってしまった。可能ならば自分以外の人にまず読んでもらえばすぐに改良点は見付かると思います。当たり前すぎる講評でちょっとはずかしいのですが。

【アイデア】1【描写力】0【構成力】−1【恐怖度】0

名前: 蓮 ¦ 19:01, Friday, Sep 26, 2008 ×


-2
描写ー1 構成ー1
まず、冒頭部分の漢字がくどい。表現自体は悪くないが、難しい漢字を多用すれば良いというものでもない。漢字とかなのバランスを考えないと、ただ読みにくい文章になってしまう。
話も前作のそのまんまの続きで、やはりまた講釈で引っ張っただけで終わってしまっている。
オチは何だか好きではあるが。

名前: 戯作三昧 ¦ 05:47, Sunday, Sep 28, 2008 ×


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