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きっかけ
 「秀の奴、おっせーなー。ライブが始まっちゃうっての」

今日は友人の秀人とライブを見に行く約束をしていた。最寄りの駅前で待ち合わせをしたものの、時間を過ぎても一向に現れる気配が無い。苛つきながら携帯をかけるが全然電話に出てくれない。

 (遅れるなら遅れると、電話の一本でもよこせよな。大体、あいつがチケットを持ってるんだから、会場に入る事も出来無いっての)

腕時計を見るともう、午後六時半を過ぎていた。ライブ開始は午後七時。もう会場に向かわないと間に合わないギリギリの時間だ。目の前を流れて行く人込みの中から、必死で秀人の姿を探す。と、一人の少年と目が合った。野球帽をかぶり、黄色と青色のボ−ダ−のシャツ、茶色の短パンをはいた、どこか昭和の臭いを感じる子供だった。
少年も目が合ったのを気付いたのか、へらへらと笑いながら近付いてきた。
俺の目の前に立つと、
「お兄ちゃん、見えるんだ。見えてるんでしょ」と突然、言い出した。

(気持ちの悪いガキだなぁ)と思いながら「はい、はい、見えてるよ」と答えた途端、少年は俺の左手を両手で握り締め、グイッと下の方へ引き下げた。

(ぐあっっ!)身体の隅々まで電流が走ったような痛みを一瞬だけ感じた。
我に返ると四つん這いになって顔を歪めていた。

 「このクソガキ、なにすんだ!」立ち上がり、少年を睨みつけるが、周りの様子がおかしい。俺を中心にした、人だかりの輪が出来上がっている。「キャー」という悲鳴や「救急車!」という声が飛び交っている。辺りを良く見てみると、俺の足元に崩れ落ちた状態の『俺』が横たわっていた。通行人は『俺』に必死に声を掛けている。

(なんだ、これは…)


「頭、悪いんだねぇー。アンタ、死んだんだよ」少年は俺の横で薄ら笑いを浮かべて、事の有様を眺めている。口調が変わったせいか、見かけとは違い大人びて見える。口には言えない怖さを感じた。

 「な、なんで、俺が死ななきゃならないんだよ!」必死で言葉を搾り出すと、少年はポカーンとした表情をした後「見たから!」と言いゲラゲラ笑い出した。

 それ以上何も言えないでいると、少年は笑い終え「悪い、悪い。でも、そういう決まりだから勘弁しろよ。でもよう、人間は死んだら終わりとよく言うが、終わってないだろ。お前の意識ははっきりしてるだろ。なら、不自由な身体よりこっちの方がいいじゃないか」

 この少年の正体が子供なのか大人なのか、全く異質な存在なのか何もかもが分からなくなってきた。言い知れぬ恐怖を抑える為に必死で自分を落ち着かせる様に努めた。
(正直、ショックは抜けきれないが、この様子だと生き返る事は無理そうだ。それならばこの身体と付き合って行くしかない。それよりも一刻も早くこの場を離れるべきだ。)

 少年に「それじゃあ」と言い、立ち去ろうとすると、「待てよ!」と呼び止められた。
おそるおそる、振り返ると青龍刀の様な大刀を手にしている。どこからそんな物を取り出したのかと驚いているとおもむろに大きく振り上げた。

 「あっ!」と言葉を発すると同時にバッサリと切り倒された。

新しい身体は真っ二つになり、転がっている。
俺の次の意識は身体の中に埋まっている丸い緑の珠にあった。

 少年は切り口から手を突っ込み、俺の意識の入った珠を掴むと「ふん、緑か。最近は緑色ばっかりだな。これじゃあ、評価が上がらないっての」

珠になった俺はおそるおそる、再度聞く「あの〜この後は、どうなるんでしょうか?」

「知らね〜よ!これが、流れだ!別にいいだろ意識はあるんだから。この後は運次第だな。なにしろ、管轄外だ!まあ、元気でやれや!」

 ビュ−ンと凄い勢いで投げつけられた。


気が付くと森の中で一本の木になっていた。
誰も来ない森の中。
意識がある分、時間という物がとても苦痛だ。
一日中、何も変わらない景色。
自分で死ぬ事も出来ない。
段々と考え事をする時間が少なくなっていった。


 (なんで、こうなったんだろう?いや、むかしからここにいたような、きもする。)

(…そうだろうか?…いや、いたのだ。…そうに違いない。)


(そう、わしは森の主。森の全てを見守りつづける者。森の民よ、安心して暮らすが良い)



10:50, Saturday, Aug 23, 2008 ¦ 固定リンク ¦ 講評(13) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(5) ¦ 携帯


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前半のくだりはとても興味深く読めた。あまりに突然、非情に理不尽。通り魔のような不幸は降って沸いたようにやってくるというところがとってもリアルで怖い。しかし、後半が支離滅裂。思いつきの連想ゲーム。同じ作者の作品なのかと思うほど。統一的な.... ... 続きを読む

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前半はなかなか面白く読んでいたのだが、後半はちょっと戴けない。色々とアイデアを出したはいいが、ちゃんと纏められずに放り出したという感じである。青龍刀が出て来る前に、主人公に新しい体で何か一つ二つやらせて、その後再び少年に出会わせるという形にした方がま .. ... 続きを読む

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冒頭からなかなか不条理満載で恐ろしげな展開だったのに、「緑の珠」から派手なぶっ飛び具合でびっくりした。せめて遺伝元が怖い話に繋がっていれば…と思わなくもないが、作者氏のイメージが森の主で終わるなら仕方ない。この設定の捩れ具合も遺伝記らしいか? きっか .. ... 続きを読む

受信: 23:08, Thursday, Oct 16, 2008

■講評

-長所-
・主人公の俺が、かわった少年を見た事から始まる実話怪談風の掴みで、話に入りやすい。

-短所-
・序盤で少年と遭遇するまでは良かったのだが、出会ってから以降がマンガを意識したような展開で彼の説明続きになり、変なことが立て続けに起こっただけで終わっている。意味不明の怖さを狙ったのかもと思うが、終盤の展開を見ると思いつきのアイデアを繋げたような感じがあるので、やはり構成の見直しが必要だと思う。
・少年が出てくるまでの描写は分かり易かったのだが、それ以降の書き方が急に雑になっている。

【アイデア】-1、【描写力】-1、【構成力】-1、【恐怖度】-1

名前: 廻転寿司 ¦ 12:40, Saturday, Aug 23, 2008 ×


うーん。理不尽な話としてはなかなか面白い発想だったと思うのですが、少年?から離れた途端少し突拍子もない展開にいってしまったかな、と思います。ちょうど境目の所で、もう少し繋げる描写、説明があると全体を通して筋道が出来るのかな、と。読み易く書かれていただけに勿体無かったかな、と思いました。

【アイデア】+1、【描写力】0、【構成力】0、【恐怖度】0

名前: 茶毛 ¦ 15:29, Saturday, Aug 23, 2008 ×


アイデア +1
描写力 ±0
構成力 −1
恐怖度 ±0

始めのうちは通り魔にやられたような理不尽な出来事に怖さを感じたが、青龍刀のようなものが出てきてからは「え?あれ?」と急に話が別方向に転がっていく違和感を覚える。
しかも最後の「森の主」というところは突然すぎる。
ホント始めは面白かったのに惜しい。

名前: くりちゃん ¦ 20:42, Saturday, Aug 23, 2008 ×


ううーん、途中までは面白かったんですけど…。
主人公が死んでからが急展開過ぎて、ちょっとついていけませんでした。
後半部分はもう少し、綺麗にまとめる必要があるんじゃないかなぁと思います。

【アイデア】+1 【描写力】 0 【構成力】-1 【恐怖度】 0

名前: PM ¦ 21:45, Saturday, Aug 23, 2008 ×


 いきなり死ぬって所が実に面白いんだよね。
 はじまりを感じさせる。

 反面、ブラックながらもワクワクさせられたのが木になる事で退屈なオチになってしまってがっかりさせられる。

 この理由を説明するのは難しいんだけど、少年が「なら、不自由な身体よりこっちの方がいいじゃないか」って大きくネタフリをしてるんだけど、そのネタはどっかに行っちゃってるんだよね。
 意図(糸)がつながっていなくて読み手を上手く連れて行ってくれない。
 登場人物じゃなくて書き手の意図ね。

 それとたぶん、群集の中でいきなり死体をさらすって生々しさと木になるファンタジックな展開ももうちょっと座りが悪いのかな。
 
 また少年自体も面白いんだけど、オチに絡まないしね。
 変な言い方だけど前半がおもしろすぎて後半でがっかり来るんだよね。
 もったいない。

【アイデア】+1 【描写力】 0 【構成力】 0 【恐怖度】 0

名前: ユージーン ¦ 22:03, Saturday, Aug 23, 2008 ×


オチが辛い。つなぎ方が唐突に思う。

【アイデア】0、【描写力】0、【構成力】0、【恐怖度】0

名前: 尚休 ¦ 16:00, Tuesday, Aug 26, 2008 ×


少年が出てきて、いきなり死んで、珠になって、木になって…展開が唐突ですね。
面白いといえば面白いのですが、ハンバーグのつなぎの卵的要素が欲しいかな。
【アイデア】0 【描写力】0 【構成力】0 【恐怖度】0

名前: 如来 ¦ 16:26, Wednesday, Aug 27, 2008 ×


話がぽんぽんと進んでしまい、細かい説明が不足。
身体の隅々まで電流が走ったような痛みだけの説明で、人一人死なせる原因としては言葉が足りない気がする。
理不尽さを狙っているとは思うのだが、話の繋ぎが弱いと?と感じてしまう。

【アイデア】+1 【描写力】 -1 【構成力】 0 【恐怖度】 0

名前: 華鹿 ¦ 20:23, Wednesday, Aug 27, 2008 ×


悪い意味で急展開過ぎる気が・・・。
追い返したい客にとっとと説明して、
「ハイ、終わり!」
とドアをしめる見たいな文章だと思うのは
私だけでしょうか・・・。
面白くなりそうな話の中核が、
やはり急展開で進んでいくので、
ワケが分からなくなってしまっています…。
核は面白そうなのに。

名前: ちゅん ¦ 11:44, Wednesday, Sep 03, 2008 ×


やはり珠から木になってしまった部分がどうにも唐突でした。
それまでは非常に面白そうな展開だっただけに、ここに何か
あったのなら著者の方に聞いてみたいです。

【アイデア】1 【描写力】0 【構成力】−1 【恐怖度】0

名前: 蓮 ¦ 23:01, Monday, Sep 15, 2008 ×


展開が急というか、破綻しているというか。
せっかくの不条理なネタが、ただ単に【わけのわからない話】になってしまってます。

話の芯は良い発想に裏打ちされているのですから、もう少し練り上げて欲しかったですね。


発想・1 文章・−1 構成・−1 恐怖・−1

名前: 暗沌子 ¦ 00:32, Sunday, Sep 21, 2008 ×


不条理な展開に何故か惹かれます。後半書き急いでしまったのかな?


【アイデア】+1 【描写力】0 【構成力】0 【恐怖度】0

名前: 猫塚イスマ ¦ 19:05, Thursday, Sep 25, 2008 ×


アイデア+1
面白い展開で期待していたのだが、オチでがっかりしてしまう。
もっと練れば良い作品になったと思うのだが。なぜ青龍刀が・・・。

名前: 戯作三昧 ¦ 21:56, Monday, Oct 13, 2008 ×


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