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今日もいつも通りの朝と、変わらない一日が始まると思っていた。 「早く起きなさいっ。いつまで寝てるのっ!」 起こしに来た母の頭のてっぺんに長さ10cm位の太い竹の棒が突き刺さっていた。 「何、その頭につけてるの…痛くないの?」 寝ぼけ眼だった俺は一気に眠気も吹き飛んで母に聞いた。 「何バカな事言ってんの。寝ぼけてないで早く起きなさいよっ。あんたが食べないと後片付けも出来ないんだからねっ」 毎朝の日課になっているお小言を言われ、俺はもそもそとベッドから起き出した。 うん、ここまでは何時もと同じだ。唯一母の頭に竹が刺さっている以外は。 一階に下りて、洗面所に行くと父がトイレから出て来た。 頭には母よりも少し長い竹が刺さっていた。慌てて俺も洗面所の鏡を見るが、俺の頭には何も刺さってはいない。 俺の眼がおかしくなったのかと隅々まで鏡で確認するが、見た目には異常はなさそうだ。 リビングに行くと、母がせっせと俺の朝食の準備をしていた。よく見てみると、頭の竹は何かにぶつかってもすり抜けてしまう様だった。実際、テーブルを拭いている母の竹が父にぶつかってもすり抜けてしまっていたから。 試しに新聞を読んでいる父の竹を触ってみた。 (触れるっ!?) 俺はその竹を触る事が出来た。竹の感触もはっきりと判る。好奇心旺盛の俺は思った。 (この竹を引っこ抜いたらどうなるんだろう)と。 そう思ったら居てもたってもいられなく、好奇心に負けて思わず父の頭の竹を引き抜いてしまった。父は何事もないように新聞を読み続けている。どうやら痛みは無さそうだ。 引き抜いた竹は実体化し、俺の手の中にしっかりとあった。慌てて父の頭を見ると、穴がぽっこりと開いていた。何処まで深いのか確かめようとしたが穴の中は真っ暗で深さは判らなかった。 「お?何だか今日は身体がスッキリしてるなー」 父が、気持ち良さそうにウーンと大きく伸びをした。 「あんた、何なのそれ?竹の棒なんか持ってきて」 母が呆れ顔で言った。そうか、この頭に生えている竹は俺が取ったら皆にも見えるんだ。 試しに母の竹も取ってみた。 「あら、私も今日は調子がいいわ。さっきまでの肩こりが嘘みたい」 と喜んでいる。 何で生えたのかは判らないが、この竹を取ったら身体の調子が良くなるらしい。 俺は、朝食もそこそこに早速外へ出てみた。こんな日に予備校なんて行ってられない。 外に出ると、見る人見る人みんな頭に竹の棒が突き刺さっていた。それぞれ長さは違うものの、父や母と同じ物だった。 俺は、後ろからその人に気付かれないようにそっと竹を引き抜く。竹が実体化する。するとその人は身体の調子が良くなったように軽々とした足取りになる。 俺は考えた。なぜ突然俺にだけこんな物が見えるようになったんだろうと。 他の人には一切見えていない。なら引き抜いてその人の身体の調子を良くさせる事が出来るのは俺だけなのだ。 よく世界中にもいるではないか。心霊治療やヒーリングなどといった特殊な力を持つ人が。 俺もその中の1人になったのだ。だが俺は自慢などして回らない。俺1人が知っていればいいのだ。そう、そんな謙虚な気持ちを持つ俺に神様が力をくれたのだ、と本気でそう思った。 その日から、俺は予備校にも行かず、知り合いだろうがそうでなかろうが頭の竹を取って回る毎日を送った。竹は取ったら実体化してしまう為、リュックを背負い街へ繰り出した。不思議な事に、一度竹を取っても疲れが溜まったりするとまた頭の穴の中から生えてきた。これは俺の両親で実証済みだった。 初めは人込みの中でこっそり竹を取るのが難しく、人から奇異な目で見られたりもしたが、何回もの練習の結果、まるでマジシャンのように自然に出来るようになった。 今では俺の部屋は様々な人から取った竹で一杯になった。 捨てる事も考えたが、これは俺の『これだけの人を救ったのだ』という勲章の証で、もしこの力をくれた人が現れたら全部見せてやろうと思っていた。 どんなに両親に怒鳴られようと、一本たりとも竹を捨てる事はしなかった。 だが、小さな竹といえど部屋を一杯にするにはそう時間はかからなかった。 俺の部屋はベッドからドアまでの一部分を除き、全てが竹まみれになった。どんどんうずたかく積まれていく竹を見ては、優越感に浸っていた。 ある夜、小さな地震が起きた。殆どの人が寝ていて気付かない程の小さな地震だったが、高く積もった竹を崩すには充分だった。 突然、ガラガラと音が聞こえたかと思うと、竹が一斉に俺の頭上から崩れ、倒れてきた。 「うわあああぁっ!」 身動きが取れず、真っ暗な中俺は必死にもがいた。今まで集めた竹が身体の自由を奪う。 (苦しい…だれか…たすけて…くれ) 俺の意識はどんどん遠のいていった…。 「すみません!502号室の患者さんが…!」 若い看護師が慌ててナースステーションに駆け込んできた。 『看護主任』とネームに書かれた人が言い聞かせるように言う。 「あぁ、あの人ね。いいのよ。この時間になるといつもこうだから。もう別な看護師に対応させてるから大丈夫よ」 「はぁ、でも…」 「あなたもいつまでも新人気分でいないで、もう少し患者さんの行動と、麻薬中毒者の症状を把握して頂戴ね」 少し強い口調で看護学校を出たての若い看護師に言った。注意された看護師はしゅんとした顔で自分の持ち場の作業に戻っていった。 主任はフーッと溜息をつき、先程の患者のカルテを見る。この人は重度の麻薬中毒の状態でこの病院に運ばれてきた。幻覚が見え、精神錯乱などの症状も出ている。この人はどうやら『竹』が幻覚で見えているらしい。時折、『竹、俺の竹…』という言葉を発しているのを私たちスタッフは何度も耳にしていたからだ。毎朝同じ行動を取り、何かを掴む動作を繰り返し、夜中になると絶叫し暴れだす。 これが毎日続く。普通なら、正気に戻る時間もあるはずなのだが、この患者はここに入ってから一度も正気に戻った事は無い。多分、これからも戻る事はないのであろう。 カルテも見終わり、落ち着いた頃を見計らって502号室へ様子を見に行った。万が一の事を考えて男性の看護師にも付き添ってもらう。そっと中を見ると、どうやら鎮静剤が効いたようだ。よく眠っている。 安心して病室から出ようとした時、何かが足にこつんと当たった。 「あら?」 拾い上げると、それは一本の竹の棒だった。 (危ないわね。担当の看護師にきつく注意をしておかなくちゃ。何かあったらどうするの) そう思った途端、握り締めていた竹の棒がスーッと消えていった。
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受信: 18:19, Monday, Aug 25, 2008
» 【+1】俺の力 [遺伝記澱奇から] × 頭から竹というのは面白い。竹が崩れてくるところまではなかなか楽しめただけに,単に麻薬患者の夢としてしまうのは惜しいと思った。しかも,竹はストレスの具現化といえそうなので,集めた後に起こることをひとひねりして展開させれば,高評価につながったの.... ... 続きを読む
受信: 08:47, Thursday, Aug 28, 2008
» 【0】俺の力 [薩摩乃塩ぶろぐ/2008から] × 前半はなかなか良かった。後半は予想出来てしまったのが少々残念。どうせ竹を具現化させるのなら、主任の頭の奴を引き抜くぐらいして欲しかったかな。これはこれで余韻の残る終わり方ではあるけれど。発想 +1 描写 +1 構成 −1 恐怖 0 意外性 −1 ... 続きを読む
受信: 02:58, Thursday, Sep 18, 2008
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受信: 22:58, Thursday, Sep 18, 2008
» 俺の力 [恐怖の脳みそから] × 地震から以降の展開は、勿体無いの一語に尽きる。これは竹に埋もれた主人公の部屋のままで別のオチに持っていった方が、はるかに面白かっただろう。看護主任の説明で、主人公の行動が読み手に支離滅裂な感じを与えてしまっている。竹を抜いて回るかっこいい主人公を気の .. ... 続きを読む
受信: 13:03, Sunday, Oct 19, 2008
■講評
-長所- ・謎の竹によって話がどう動いていくのか興味をひかれる。
-短所- ・妄想や幻覚のような場面が現実とリンクする展開がありがちで、また中盤まで盛り上げた俺世界がラストに繋がる接点が小さいように感じる。 前半の俺世界での行動と、後半の現実世界で看護師達に目撃されている俺の行動には繋がりが見える。しかし、前半の俺世界では抜いた竹が実体化して、最後に俺は沢山の竹に埋まるのだが、現実世界と思しきラストでは実体化した竹が消えるという逆の現象がたった1つしか起こらない。俺世界を飛び越えて現実世界に起こった現象が単発だけではなく、2つの世界に対してもっと多くの出来事を法則性を持ってリンクさせていけば、もう少しこの話は面白くなるのではないかと思う。せっかくのアイデアを完全に活かせなかったのではと感じた。 ・話を通して語り手が一定していないので読みづらい。誰がこの話を語れば一番ふさわしいかを考えた上で設定する必要があると思う。場面転換がある以上は「俺」で語り通せないのは仕方ないとしても、終盤は「俺」が語らない三人称の語りなので混乱する。
【アイデア】0、【描写力】-1、【構成力】0、【恐怖度】0 |
名前: 廻転寿司 ¦ 17:06, Monday, Aug 25, 2008 ×
アイデア +1 描写力 +1 構成力 ±0 恐怖度 ±0
とうとう「俺」の妄想の中の竹が実体化し始めたのだろうか。 これに触れてしまった「主任」の運命は如何に、と期待を持たせる終わり方だった。 前半の「俺」が竹に埋まるまでの叙述は大変面白かったが、反面「実は入院患者なのでした」というのが定型的に思われる。もっと他の結末でも面白かったような気がする。 |
名前: くりちゃん ¦ 17:15, Monday, Aug 25, 2008 ×
竹を抜くってアイディアがいいね。 笑っちゃいました。
まあ、抜いて良い事があれば裏で悪い事が起きてるってのが定番の展開でしょうが、もうひとつ何かあるとおもしろかったと思いますね。 いわゆる夢オチの一種になっているのがもったいなかったかな。 こういうバカっぽい展開ではじめたらオチも思い切ってバカになって良かったと思いますよ。
文章のリズムがとってもいいですね。 読んでて気持ちがよかったです。
【アイデア】+1 【描写力】+1 【構成力】 0 【恐怖度】 0 |
名前: ユージーン ¦ 18:29, Monday, Aug 25, 2008 ×
追記: 主人公はコミカルなんだけど、表層を剥ぎ取るとその核は「スーパーマン」なんですよね。 そこでヒーローに特有の悲哀を持ってくると、それがまた逆に笑いを誘っておもしろかったかもしれません。
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名前: ユージーン ¦ 18:34, Monday, Aug 25, 2008 ×
ん? 途中まで面白く読ませていただいたのですが、最後、主人公はどうなってしまったのでしょう? 最初から妄想だったのか、崩れた竹に埋まったために入院する事になってしまったのか、もう少し、この辺の関連性を表現出来ていれたらなぁと思いました。
【アイデア】+1 【描写力】 0 【構成力】 0 【恐怖度】 0
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名前: PM ¦ 18:43, Monday, Aug 25, 2008 ×
なるほど。竹を頭から抜くという突拍子も無い発想をどう纏めるのかと思ったら、麻薬中毒患者という展開でしたか。で、幻想オチかと思いきや看護師も竹を確認するということで、どちらとも取れる纏め方にした、と。テンポが良い状態で書かれているので、看護師にも怪異が移り、それに悩まされるという所まで書いても良かったのかも。まぁ、読み易い作品だったとは思います。
【アイデア】+1、【描写力】+1、【構成力】0、【恐怖度】0 |
名前: 茶毛 ¦ 14:27, Tuesday, Aug 26, 2008 ×
前半を膨らませた方が楽しめそう。
【アイデア】+1、【描写力】0、【構成力】-1、【恐怖度】0
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名前: 尚休 ¦ 16:28, Tuesday, Aug 26, 2008 ×
オチがもうちょい。 麻薬中毒以外になにか思いつかなかったかなーと思うともったいない。
【アイデア】+1 【描写力】+1 【構成力】 0 【恐怖度】 0 |
名前: 華鹿 ¦ 20:43, Wednesday, Aug 27, 2008 ×
途中までは面白かったのですが、 ある意味「麻薬中毒患者」だと 何でもありな気がしてせっかくの アイデアが埋もれてしまったような…。 ジャンキーだもん、そんな幻覚もありだよね、 って…。 そこに、−2点。 |
名前: ちゅん ¦ 12:17, Wednesday, Sep 03, 2008 ×
竹のアイデアはとてもよかったと思います。コミカルな展開も そのアイデアにぴったりと合っていました。 ただ、中毒者オチがどうにも…。その必然性がいまいち感じ られないまま終わってしまい残念でした。
【アイデア】1 【描写力】1 【構成力】−1 【恐怖度】0
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名前: 蓮 ¦ 02:34, Monday, Sep 15, 2008 ×
場面転換が上手く行ってないのでしょうか、少し曖昧な後味になりました。
発想は面白いので惜しい気がします。
発想・1 文章・0 構成・−1 恐怖・0 |
名前: 暗沌子 ¦ 01:28, Sunday, Sep 21, 2008 ×
予備校をサボって竹を抜いて回る主人公が良かったです。後半失速ですね。
【アイデア】+1 【描写力】+1 【構成力】0 【恐怖度】0
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名前: 猫塚イスマ ¦ 19:36, Thursday, Sep 25, 2008 ×
アイデア+1 構成ー1 なあんだ、ジャンキーだったのか、残念。 竹の山が倒れてくるところから面白くなくなってしまった。 抜いた竹を割ったり燃やしたりしたらどうなるかとか、もっと色々竹で遊べた気がする。 怪異が面白かっただけに、ありきたりな展開で落としたのはもったいないと思う。 |
名前: 戯作三昧 ¦ 05:13, Tuesday, Oct 14, 2008 ×
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