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仕事が早めに終わり、見たいテレビ番組の為に急いで帰って来た俺は自分の家の前で立ち尽くしていた。 塀で囲まれた殺風景な庭に無花果の木でも埋めようと思い、深めの穴を掘っていたのだが、その中に1人の男がしゃがんで座っていたのだ。 男は年齢でいえば、30代後半と言った所だろうか。いでたちといえばパンツ一丁というあられもない姿だった。男の顔に見覚えは無い。不審者か?警察を呼ぶ前に恐る恐る話し掛けた。 「あなた、誰です?人の家の庭で」 男は答えた。 「あ?俺か?俺は…『貧乏神』だ」 「は!?貧乏神?」 「あぁ、この間大きな地震があったろう。それで今までの俺の住処が潰れちまってな。居場所を探してたら、ちょうどでっかい家と庭があるこの家が目に付いてな。しばらく居させてもらう事にした」 「そんな…」 普通なら、まず信じない話だろう。だが俺はこの手の話にはめっぽう弱かった。実は今日の見たいテレビのタイトルも『UMAは存在する!』という特別番組だったのだ。 UMAだけでなく、UFOや幽霊、果ては神様関連もすべて信じていた。 (やっぱりいたんだ!貧乏神!) と一瞬嬉しさを覚えてしまったが、そうも言っていられない。何せ相手は貧乏神なのだ。 こいつがいたら今の幸せな家庭も地位もお金も全て無くなってしまう。早々に立ち去ってもらわなければ…。 俺は貧乏神に手を伸ばし、出て行ってもらおうとした。すると貧乏神は 「おいおい、触るなよ。何せ俺は居るだけで力を発揮する神だぜ?万が一触ったらお前がどうなってしまうか責任は持てないぞ」 と言い出した。 確かに、考えてみるとその通りだ。しかしこのまま居座られても困る。 「じゃあ、他の住処が見つかれば良いんですよね?ほら、3軒隣のあの家、あそこはうちより裕福ですよ。そこなんてどうですかね?」 等と、色々提案したが、貧乏神は 「嫌だ、ここが気に入った」 の一点張りだった。 考えに考えた末、新しい住処が見つかるまで家にいてもいいが、その間は力を発揮しないで欲しいと頼んだ。貧乏神は「うーん」と一頻り考えた後、「まぁ、やれるだけやってみるさ」と答えた。 家に入り、慌てて妻を呼び今までの経緯を話した。 一回り以上も年下の妻は「そんな神が家にいるなんて」と嫌がったがこうなっては仕方が無い。とにかく妻にはなるべく貧乏神の姿を見ないように説得し、外出も控えるように言った。俺は早速貧乏神がいる穴の周りに囲いを作り、外から見えないようにした。 次の日の出勤も、貧乏神が視界に入らないように背中を向けて家を出た。 ところが、次の日はミスの連発だった。寝不足のせいかと言われればそれまでだが、俺は貧乏神が知らず知らずのうちに力を発揮してるのではないかと考えた。 その日もいつもより仕事を早めに終え、急いで家路に着いた。 貧乏神がいる穴を覗く。すると 頭から血を流してピクリとも動かない貧乏神がいた。どうやら死んでいるようだ。 (うそ、神様って死ぬの?) ビックリしている俺の目に飛び込んできたものがあった。 囲われた穴の横に新しく大きく深い穴が開いていた。穴を覗くと、またもや知らない男がしゃがんで座っていた。今度は、20代位の男でTシャツにジーンズといういでたちだった。 俺はまたもや聞いた。 「あなたはどなたでしょう?」 男は答える。 「あぁん?俺?俺は『貧乏神』ってもんだけど」 「じゃあ、前にいた貧乏神を殺したのは…」 「あぁ、それ、俺がやったの。だって俺もこの家気に入っちゃったし。この家に神様は二人もいらないっしょ」 「神様って死んだりするんですかね?」 「さぁね。同じ神様だから殺せたんじゃない?」 「そしたら、あなたは前にいた神様よりお強いと…」 「あぁ、そうだよ。…おっとそれ以上は見ないほうがいいぜ。何せ俺はあいつより強い力を持ってるからな」 確かに見た目も口調も今時の若者らしいが、力は前の神より強いらしい。じりじりと後ずさりをした俺に、 「そうそう、自分が大事だったら俺のことは見るな・触るな・近付くなってね」 何てことだ、前の神様がいなくなったと思ったら、今度はもっと強い神様がきてしまった。という事は、貧乏も半端ではない事になりそうだ。俺は何とかゴマを擂り、いる間は力を使わないように頼んだ。 貧乏神の答えは「じゃあ、前の奴の死体を片付けるのを条件に、飽きたら出て行ってやる」との事だった。 俺は、死んでいる貧乏神に土をかぶせ、穴に埋めた。神様なら多分土に返ってくれるだろう。そして死んだからには力も発揮されないだろうから、庭に埋めても大丈夫だ、と思った。貧乏神を埋めた穴には、以前から用意していた無花果の木を植えて誤魔化した。 これならどこに埋めたのか一発で判るし、間違って死体の上を歩く事もないだろう。 家に入り、またもや妻に事情を説明した。 妻は気味悪がったが、相手が飽きてくれるまでの間という事で何とか納得してくれた。 あまりにも突拍子がない話を素直に信じる妻を見て、尚更愛情が深まったのはいうまでもない。 次の日の昼下がり、若い貧乏神が家に入ってきて男の妻と楽しげに話している。 「あなたでしょ?前の人を殺したのって。主人から人相を聞いてたからすぐ判ったわ」 「だってよ、まさかお前が俺の他にも男がいるなんて思わなかったからさ。ダンナはしょうがないけど、浮気は俺だけだと思ってたのに。ダンナがいないのを見計らって行ったら、あいつがいたからカッとなって殺しちまった」 「お遊びよ、お遊び。だってあなた、いつも来てほしい時に来れないでしょ?暇つぶしの相手みたいなものよ。あの人ったら、主人が帰ってきたと判った途端、慌ててパンツ一丁で飛び出して行ってしまうんですもの」 「しかし、よく考えついたよな、前の奴。『貧乏神』なんて嘘つくなんて」 「あら、それで良いのよ。だってそう言っておけば顔もじっくり見られなくて済むし、浮気はばれないし良い事づくめじゃない。まぁ、主人があの日、テレビ見たさで早く帰ってさえ来なければ、こんな嘘をつかなくても良かったんだけどね」 ピーッ 玄関先に取り付けた、防犯用の機械警備が作動し、インターホン越しの警報と共に、来客が来た事を知らせた。 監視カメラで確認すると、つい最近付き合ったばかりの新しい浮気相手だった。 若い貧乏神と新しい浮気相手が鉢合わせし、乱闘になった。 その結果、若い貧乏神は転んだ時に打ち所が悪かったのか、あっけなく死んでしまった。 蒼ざめている新しい浮気相手に妻が囁く。 「大丈夫よ。庭にある穴に放り込んでくれれば、後はうちの主人が勝手に死体を埋めてくれるわ。あなたは、その横に新しい穴を掘ってちょうだい。そして一日だけ我慢して穴に入っててくれればいいの。後は主人の言う事に適当に話を合わせてくれるだけ」 最後に妻は付け加えて言った。 「あ、そうそう。最初に主人に名前を聞かれたら、『貧乏神』って答えてね」
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受信: 16:57, Monday, Nov 10, 2008
■講評
おもしろかったね〜〜 良く書けてる。 2転3転する意外な展開が気持ちいい。
4点目は加点制なので残念ながら私の気に入るお話ではないんですが、この調子でまた楽しませて下さい。
これといって付け加えることはないんだけど、もしもどうしてもといわれたら、この登場人物の中で好きになれそうなのは主人公の男性だけなので、彼をもうちょっと引き立ててやると気に入ってくれる人が増えるかもしれません。
【アイデア】+1 【描写力】+1 【構成力】+1 【恐怖度】 0 |
名前: ユージーン ¦ 19:24, Thursday, Aug 28, 2008 ×
あっと、そう来たか。 なるほどなー。 じゃあ、やっぱり仕事のミス連発は偶然? 主人公がいくらなんでも素直過ぎる気もしますが、面白かったかと思います。
【アイデア】+1 【描写力】+1 【構成力】 0 【恐怖度】 0
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名前: PM ¦ 20:11, Thursday, Aug 28, 2008 ×
-長所- ・夫の趣味が、庭で出会った変な男の正体にうまく関連づけられていて、その仕掛けが巧みで面白い。 ・穴は果たしてこの二つで済むのか、妻の様子を見ていると何だか今後も薄ら寒さを感じさせる。
-短所- ・作品全体はよく出来ていて面白かったが、後半の種明かし以降が少し分かりづらかった。一人称の「俺」を使わないで全て三人称で通した方が分かり易いと思う。
【アイデア】1、【描写力】0、【構成力】1、【恐怖度】0 |
名前: 廻転寿司 ¦ 22:44, Thursday, Aug 28, 2008 ×
そうかぁ、貧乏神かぁ(笑)これは使えますね。男性諸君、不思議好きな旦那のいる家庭は狙い目ですよ(笑) 作品について言うと、二転、三転しておきながら上手く纏めたように思います。主人公のご主人の素直さというか、子供っぽさが好感持てました。丁寧に書かれた部分でそういう印象を与えた所が上手かったと思います。しかしこの奥さん、タチ悪いな〜。あと何人貧乏神が増えるんでしょうね?まぁ、楽しめたという事で、この点数で。
【アイデア】+1、【描写力】+1、【構成力】+1、【恐怖度】0 |
名前: 茶毛 ¦ 01:30, Friday, Aug 29, 2008 ×
なんだ〜、前半の貧乏神のあたりはやられたな〜と思ってたのに。自分的にはなんだか肩透かしを喰らった様で・・・。
【アイデア】+1、【描写力】0、【構成力】-1、【恐怖度】-1
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名前: 尚休 ¦ 21:44, Friday, Aug 29, 2008 ×
なるほどな展開で面白かったです。 ただ、なんか急に現実に戻されたような感じ。 人間そうそう簡単に、『貧乏神』なんて言われて信じるかな・・・ いくらその手の話に弱いといっても。
【アイデア】+1 【描写力】+1 【構成力】+1 【恐怖度】 0
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名前: 華鹿 ¦ 03:27, Saturday, Aug 30, 2008 ×
アイデア +1 描写力 +1 構成力 +1 恐怖度 ±0
あははっ、女の人ってしたたかですね。 とても面白かったです。
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名前: くりちゃん ¦ 22:15, Saturday, Aug 30, 2008 ×
女って怖い…。 ってか、庭にその調子でドンドン死体が増える のが怖いです…。 ぜひ、続きでこの奥さんに天罰を当てて欲しい ところですが(^^;) 思わずニヤリとさせられました。 ネタ、アイデア、文章力に1点づつ。 |
名前: ちゅん ¦ 14:58, Thursday, Sep 04, 2008 ×
貧乏神だと信じさせる(実際にあるとかなりイタイですが)アイ デアが面白かったです。 後半、奥さんの種明かし部分から急に説明くさくなる描写が 気になりました。
【アイデア】1 【描写力】±0 【構成力】±0 【恐怖度】0
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名前: 蓮 ¦ 15:58, Sunday, Sep 14, 2008 ×
全く説得力がありません。 創作だからどうとか言う気はありませんが、この手の話に弱いというだけで、何の力も見せていない相手を貧乏神と信じるでしょうか。 その辺りが巧く処理されていないので、説得力に欠けるのだと思います。
発想・0 文章・−1 構成・0 恐怖・0 |
名前: 暗沌子 ¦ 01:34, Tuesday, Sep 23, 2008 ×
手堅くまとまってますね。結局、人間がいちばん怖いということでしょうか。
【アイデア】+1 【描写力】 0 【構成力】 +1 【恐怖度】 0
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名前: 猫塚イスマ ¦ 12:03, Tuesday, Sep 23, 2008 ×
アイデア+1 描写ー1 構成+1 面白かった。やけに物わかりのいい妻だと思ったらそういう事か。 ただ主人も信じやす過ぎるし、格闘になったからと言って前の浮気相手があっさり死んでしまうという事が、都合よく連続して起こるというのは違和感がある。 |
名前: 戯作三昧 ¦ 03:50, Wednesday, Oct 15, 2008 ×
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