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胡桃のグリップ桜のストック
広野レポート最終回。
戦争にロマンを感じては不謹慎なのでしょうが、木をテーマにして近代戦争を見つめるという企画のトリは、歩兵です。
と言うか、歩兵の携帯武器としての木について、どのような係わりがあったかと言う事で、弓削木工の前社長、弓削健(ゆげ・たける)さんに、お話を伺ってきました。

―昔はどのようなお仕事をなさっていたんでしょうか。
「うちは代々、武器作りを生業としておったようです。大昔は、弓矢ですとか、槍ですとか。其のうちに銃砲の台座ですね、銃床や銃把を作ってましたよ。」
―具体的には?ご苦労とか。
「拳銃の握りですか。あれは胡桃材を使うんですが、網目を着けるのに、親父なんかは彫刻並に拘ってましたね。尤も、戦前に親父は亡くなっていましたから、お袋や姉が、兵器廠で働いてた頃には、段々と彫り込み加工もしなくなったようですが。」
「あとは銃床ですか。桜を使うんですが、これが結構堅いんですよ。ある程度は機械で出来るんですが、微妙な曲線や仕上げは手作業になりますから。其の分、悪戯というか、落款の様に銘を入れたりしましてね。刀の菊一文字に倣って弓型を刻んでたようです。」
―現在はどのような製品を。
「主にボウガンとスポーツライフルのストック、まあ銃床の特注製作が殆どですね。競技用ですから一般の認知度は殆ど無いでしょうが、カスタムビルダーからの注文も多いですよ。」
―子供の頃から跡を継ごうと。
「いや、一時期は人殺しの道具を作るのは嫌だ、なんぞと思ってましたが、あることで見方が変わりましてね。」
―それは?
「命を奪う道具ではなく、守る道具なんだって事に気付いたんですよ。まあ、長い話になりますが、聞きたいですか?」

 うちのお袋って人は、良い所のお嬢さんで、当時は珍しく女学校出でしたから、行儀作法から薙刀、弓道まで修めててね。
 そんな人だから、親父が亡くなっても其の後、自分で仕事を受け継いでね。女手ひとつで私らを育ててくれましたよ。
 だから、姉さんも私も、学校を出ると仕事を手伝ってた。
 いつだったか近所の神社の境内にある、大きな桜の木の天辺近くまで登って、もう直ぐ頂上だってとこで滑ってね。墜っこっちゃった事があって。
 途中で何本もの枝を折ったのがクッションみたいになってかすり傷だけで済んだんだけど、「木に謝りなさい!」って。
 叱られたね〜、あの時は。
 私が折った枝を掴んで叩くんだけど、武道をやってるんで、手首の返しが効いてて痛い事痛い事。あれは参ったね。
 戦争が始まると、其の桜も供出されて、お袋も、姉さんと一緒に兵器廠で働き始め、私も直に召集されましたよ。
 訓練と編成が終わって南方に向う時に、装備改変で、新品の歩兵銃を支給されて、まあ其れは、新九九式は旧三八式より重かったんで体力のある若者に優先配備したってとこらしいけどね。
 「コーノさん、戦争ってのは、あんたが考えてる程、かっこいいもんじゃないんだよ。」

 始めの内こそ補給が有ったものの、其の内に輜重が止まって、弾薬はおろか食料まで現地調達になってきてね。
 そうなると戦闘どころじゃなくなって敵さんから逃げ回るのがやっとこだ。
 あても無く、山の中を敵に見つからないように隠れて逃げて、奥へ奥へと進んでいく。本当は後退してるんだけども、転進だな。
 山と言っても熱帯のジャングルだから、常にジメジメしてて、食べられる木の実も殆ど無いしね。
 空きっ腹を抱えて、銃を杖代わりにして、只唯歩いて、そして眠るだけ。
 目が覚めるたびに、仲間が減っていく。
銃弾に倒れることも無く、栄養失調と空腹とで、眠ったまま逝っちまう。
 起きると銃を突き、幽霊のようになって彷徨い歩いて、一人、又一人といなくなって、とうとう最後は二人だけになって。
其の頃には、見つかろうが何しようが、どうでも良くなってね。川沿いを歩いて、水を飲んで草を食べて、木の下で寝るしかなくてね。

いつもの様に、銃を木に立て掛けて、身体を丸めて並んで寝たんだよ。
心地よく眠っていると、背中を誰かが叩いているんだ。
「健!起きなさい!健!」って、怒鳴りながら叩いているようで。
あまりに痛いので目を開けると、お袋が桜の枝を持って立っている。
「健!起きなさい!」
ハッと気付いて目を覚ますと、立て掛けてあった銃が倒れてきて、背中に当たってたんだよ。
隣を揺すりながら声を掛けたけど、とうとう起きなかったね。

 銃とお袋に起こされなかったら、自分も・・・と思って銃床を良く見ると、有ったんだよ。

 うちの弓印がね。




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戦争体験の一つ、という感じだろうか。申し訳ないが、それ以上でもそれ以下でもないといった印象。実話ならそれなりに高い評価をしたかも知れない。違和感を感じた箇所が一つ。母親に「木に謝りなさい!」と折れた桜の枝で叩かれた、というエピソードを語っているが、「 ... 続きを読む

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タイトルはとても良いのだが…。個人的にこれは、怪奇小説とも不思議小説とも読めなかった。実話怪談なら不思議な話というところか。内容は興味深いが、作者が書きたいこと「だけ」を書いているような感じが拭えない。胡桃のグリップ桜のストックアイデア +0描写力  .. ... 続きを読む

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■講評

ん?
割と良い雰囲気で進んでいたのですが、最期、よく解りませんでした。
死因は睡眠なんですかね?
寝たら死ぬ? 雪山みたいに?
なんで起きなければならなかったのかがちょっと説明不足のような印象を受けました。
〆方的にも、前半のコーノさんがどっか行っちゃってるので、最終回らしく、コーノさんの語りで〆て欲しかったところです。

【アイデア】+1 【描写力】 0 【構成力】 0 【恐怖度】 0

名前: PM ¦ 20:49, Saturday, Aug 30, 2008 ×


-長所-
・軽妙な語り口で武器に関する知識も読みやすい。
・長い語りによって作品に厚みを持たせようとしているところは良い。

-短所-
・話が長い割にはオチが小さかった。作品全体としては細かいエピソードも盛り込まれていて良かったので、展開がもっと練られていれば良かったと思う。しかしながら、たった一つのオチの為に、これだけのネタを入れて引き延ばし、読者に何かあるのではと期待させるような書き方としての戦略であれば、良く出来ている、のかもしれない。

【アイデア】1、【描写力】0、【構成力】0、【恐怖度】-1

名前: 廻転寿司 ¦ 21:58, Saturday, Aug 30, 2008 ×


うーん。どうも私的にコーノさんが出てくると、今までの印象のせいか、あまり良い印象が…。
それを度外視して講評しますと、硬い感じで書かれている文章が小さなオチに向かっていって、そのまま終わった。というのが第一印象でした。正直言うと、戦争ものの話は結構目にして来ましたが、その中の一つの体験談と言われてしまえば、それまで。という内容でした。
それ以外だと、最後の起こされるシーンで、疑問が。途中で熱帯のジャングルと書かれているので、冬という設定(凍死)ではないと思われます。空腹の上で眠ったまま亡くなった方は実際にいらしたようですが、起こされただけで助かったというのはちょっと違和感を感じてしまいました。起きた目の前に食糧や水を指し示すように銃が倒れていた、というオチなら納得できるのですが。最後に、空腹を母親の力でしのげたという描写があると、また違った評価になっていたと思います。

【アイデア】0、【描写力】0、【構成力】-1、【恐怖度】0

名前: 茶毛 ¦ 01:25, Sunday, Aug 31, 2008 ×


アイデア +1
描写力 +1
構成力 ±0
恐怖度 ±0

「コーノさん、戦争ってのは…」以降「弓削」さんの口調が変わるのはなぜ?
終わり方が唐突で、尻切れ感がある。

名前: くりちゃん ¦ 14:04, Sunday, Aug 31, 2008 ×


極限や限界を体験した事の無い一般人には、理解できない表現があるかも。盲人に赤といっても、太陽の色といってもわからないのと一緒で普通の人には不親切ですかね。

【アイデア】+1、【描写力】+1、【構成力】0、【恐怖度】+1

名前: 尚休 ¦ 17:23, Sunday, Aug 31, 2008 ×


 こんな事を書くと叱られるかもしれませんがタイトルがものすごく気に入りました。もうそれだけでお話が好きになるくらい。
 冒頭のインタビューもちょっと長いけど苦にならなかったし。
 中盤まで雰囲気が明るいのもいいね。

 しつこいようですがこうだろうと思ったら全然違ったってひねりがないのが残念でしたね。
 もうひとつアイディアが欲しかったかな。

【アイデア】 0 【描写力】+1 【構成力】 0 【タイトル】+1

名前: ユージーン ¦ 19:25, Sunday, Aug 31, 2008 ×


あっ。
これは逆に、最後に聞き手が出てこなくて
びっくり(^^;)
それはそれでヘンな感じだなぁ…。
ごめんなさいね。でも、好き勝手言えるのが
ここの良いところって事で(^^;)
終わり方がもうちょっと処理されてたら
好きな話で4点付けたんですが…。

名前: ちゅん ¦ 14:52, Friday, Sep 05, 2008 ×


前半ぐいぐいと引き込まれた。
最後がちょっとよくわからなかった。

【アイデア】+1 【描写力】 0 【構成力】 0 【恐怖度】 0

名前: 華鹿 ¦ 21:29, Saturday, Sep 06, 2008 ×


このレポートは音声?または報告書形式なのか?
冒頭の言い回しのいい加減さがその後に続く銃の説明も
疑わしく感じられ、作品に入っていきづらかった。ラストも
見えてはいるが嫌いではない。それだけにもっと丁寧さが
ほしかった。

【アイデア】±0 【描写力】−1 【構成力】 0 【恐怖度】 0

名前: 蓮 ¦ 10:35, Sunday, Sep 14, 2008 ×


良い話と言い切れない胡散臭さがあります。作者は銃の知識が豊富な方のようで、その部分の描写は文句無しです。
ただ、木に謝れと言いながら、その木で叩いたり、妙な文章も多い。
オチも、一行空けて含みを持たせるほどの物でも無いと思います。

発想・−1 文章・−1 構成・0 恐怖・0

名前: 暗沌子 ¦ 02:36, Tuesday, Sep 23, 2008 ×


お話はじんわりとしていいものでした。

構成の根本に関わるけどインタビュー形式じゃない方が良かったんじゃないかと思いました。

名前: 猫塚イスマ ¦ 19:53, Friday, Sep 26, 2008 ×


アイデア+1
軽快な語り口で雰囲気がある所は良いが、急にフレンドリーなタメ口になる弓削木工の前社長、弓削健(ゆげ・たける)さん。
まあそれもキャラクターと捉えればかえって味わいも増すというものだが、やはりオチの弱さ。
極限状態に追い込まれている事を考えると、起きただけでは問題の根本的な解決には至らないと思われる。
その先の、命が助かった要因に怪異を絡めたほうがよかったのではないだろうか。

名前: 戯作三昧 ¦ 11:33, Thursday, Oct 16, 2008 ×


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