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そんな事とは露知らず
 ジリリリリーッ…

目覚ましの音で目を覚ますと、隣に誰かが寝ていた。
「えっ」
吃驚し、布団を捲るとそこには乳白色の色をした全裸の俺が横になっていた。

(何?コレ)

乳白色の俺は髪の毛や眉毛などもリアルに生えている。ただし、全ての色が乳白色だった。
恐る恐る触れてみると、プヨプヨとした感触をしていた。反応は一切無い。

(…どうしよう?キモチ悪ぃ)

誰かのイタズラかと思い、アパートの戸締りを確認するが、全てしっかりと鍵がかかっていた。

「そうだ、会社!」と思い出すがこんなものを放っておいて仕事になどいける筈も無い。
会社には体調不良という連絡をいれ、休みをとった。

暫らくの間、横たわる俺を見つめながらどうしようかと考えていると、異変が起きた。
乳白色の俺はモゾモゾと動き出した。
慌てて部屋の隅に逃げ出し様子を窺っていると、背中を丸めるように蹲り、動かなくなった。

息を殺しながら、様子を見る。

十分程経過した頃、丸まっている俺の色が変わってきた。薄い茶色になり、段々と焦げ茶色に変化していく。
(何処かで見たなこの光景…)
(あっ、蝉だ。蝉の脱皮だ)

見るからに硬そうな丸まっている俺の背中に亀裂が走る。
(やっぱり。ということは俺が出てくるのか?成虫の?なんだそれ?)

 殻を破り、瑞々しい俺が出て来た。瓜二つ。双子だってここまでは似てない筈だ。

「なんなんだ!お前は一体!?」怯えながら問い掛ける俺をソイツは無視して、勝手に人の服を着始めた。

「おい、こら、化け物!」と声を荒げるとソイツは振り返り
「ひどいな〜。化け物はないでしょう。私も貴方なんですから、ねえ」と薄ら笑いを浮かべている。

「お前はなんなんだよ!?」と問い掛けるとソイツは
「貴方に危害は加えませんから、落ち着いて聞いて下さい」と腰を下ろして話し出した。

「私も貴方も同じ植物です」
(はあ?何言ってんだコイツ?)口を出そうとしたがソイツは遮るように話し続けた。
「貴方の言いたい事は分かります。動物と植物は違うと言いたいのでしょう。でも人間の中には植物も混じっているのです。実際に貴方から私が産まれました」

「そんな訳ないだろ!俺はちゃんと母親から産まれてるって!」と反論するが
「戸籍をきちんと調べて下さい。養子扱いになっていますよ。ご両親の記憶は私達の本部の方で操作させて頂いておりますが」
ソイツは冷静な口調で答えた。

「それにしたって、途中の蝉みたいな変化はなんだよ?」
俺の質問にソイツは丁寧に色々と答えてくれた。

蝉の様な変化は俺とソイツが属している植物の特徴らしい。
今後の生活は植物管理センターという所で登録すると、その情報操作とやらで戸籍も貰えるし、何の心配も要らないそうだ。
因みに『世の中にはそっくりな人が三人はいる』と言われる理由は植物属の人間が原因らしい。俺みたいに増えてしまって、それぞれどこか別な土地で暮らしているのだろう。
脱ぎ捨てた殻も一日もすると消えてなくなるそうだ。

(なるほど)
普通なら理解出来ないであろう話も自分の顔で説明されると、変に説得力があった。


「さて、そろそろ」と言いソイツが立ち上がる。
窓を開け、そこから身を乗り出した。

「馬鹿、ここは三階だぞ!」と声を掛けると、ソイツは空中に全身を放り出した。

慌てて窓に駆け寄り、ソイツの姿を探すと上空から声がした。

「言い忘れていましたぁ〜。貴方も私もタンポポ属ですぅ〜」
ソイツはタンポポの綿毛の様にフワフワと飛んでいった。



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受信: 00:13, Monday, Nov 24, 2008

■講評

なんだかほのぼのする話ですね。
自分は何も知らないのに、生まれたてのもう一人の自分は何故細かくここまで知っていたのでしょう?
生活する上で忘れていくものなんですかね?
折角丁寧に説明してくれてるので、この辺もフォローしてもらえると良かったかなぁと思います。

【アイデア】+1 【描写力】+1 【構成力】 0 【恐怖度】 0

名前: PM ¦ 18:12, Sunday, Aug 31, 2008 ×


 いいねえ。
 最後の一言が。
 ここまで理不尽で意味不明で、それでいて気持ちがいいなんて。
 おみごと。

 最後の一言がなければ退屈で死にそうな話なんだよね。
 文章って不思議だよね。

【アイデア】+1 【描写力】+1 【構成力】+1 【ふんわり度】+1



名前: ユージーン ¦ 21:10, Sunday, Aug 31, 2008 ×


アイデア +1
描写力 +1
構成力 +1
恐怖度 +1

なかなか面白かった。
邪悪な結末が待ち受けているかと思ったら「言い忘れていましたぁ〜。貴方も私もタンポポ属ですぅ〜」で和んでしまった。
(始めは3点で書いていましたがやっぱり4点差し上げたくなりました)

名前: くりちゃん ¦ 21:18, Sunday, Aug 31, 2008 ×


なるほど(笑)読んでいる途中ではどう収拾つけるのかと思っていましたが、そうかい。そのオチかい、と。
作品としては、淡々と進んでいたがラストのオチで一気に収拾づけた感があります。(脱力系オチなんですが)ただ、それを意図してここまで書かれたと考えると成功ですね。ショートショート系としては面白かったと思います。

【アイデア】+1、【描写力】+1、【構成力】+1、【恐怖度】0

名前: 茶毛 ¦ 22:12, Sunday, Aug 31, 2008 ×


-長所-
・『世の中にはそっくりな人が三人はいる』の解釈や植物管理センターの設定などが細かくて笑える。

-短所-
・作品自体が主人公と謎の男の二人だけで閉じているので、あまり発展がない。変なものを見て変な話を聞いただけで終わらずに、周りで誰かが似た体験をしているのを目撃したとか、自分の存在が気になって仕方ないと感じるくらいの出来事がもう少し仕掛けられていれば面白くなっていたかと思う。この作品内で、謎の男の他に、謎の男の言う事を証明できないという点が弱いように感じた。

【アイデア】0、【描写力】0、【構成力】0、【恐怖度】-1

名前: 廻転寿司 ¦ 22:22, Sunday, Aug 31, 2008 ×


なんだろな〜、総合すると可も無く不可も無しになっちゃうんだよね〜。

【アイデア】0、【描写力】0、【構成力】0、【恐怖度】0

名前: 尚休 ¦ 18:07, Tuesday, Sep 02, 2008 ×


あまりにも突拍子がない話。
でもオチは結構好きです。

【アイデア】+1、【描写力】0、【構成力】0、【恐怖度】0

名前: 華鹿 ¦ 21:43, Saturday, Sep 06, 2008 ×


生まれたばっかの方がベラベラと事情を
しゃべるのは何ともご都合主義だなぁ…。
最後の「タンポポ属ですぅ〜」には
和みましたが(^^;)
そこに一点。

名前: ちゅん ¦ 22:15, Monday, Sep 08, 2008 ×


フワフワと飛んで行く自分自身を眺めるラストが、それまでの
展開をいい意味で帳消しにしている。設定が突拍子もない
とどこで終わらせるか難しいと思いますが、絶妙なラストだった
と思います。

【アイデア】+1 【描写力】±0 【構成力】 1 【恐怖度】 0

名前: 蓮 ¦ 09:36, Sunday, Sep 14, 2008 ×


まぁなんて爽やかなエンディング(笑)
多少の矛盾点や疑問点など、それこそタンポポの綿帽子のように吹き飛んでいきました。

発想・1 文章・1 構成・1 恐怖・0

名前: 暗沌子 ¦ 18:18, Tuesday, Sep 23, 2008 ×


予想だにしなかった展開に驚きです。分身の説明がちょっとくどかったかな。


【アイデア】+1 【描写力】+1 【構成力】+1 【恐怖度】0

名前: 猫塚イスマ ¦ 23:01, Friday, Sep 26, 2008 ×


 追記:
 よく読むと、コピー人間が最初は不気味な存在として登場して、最後の一言でのんきないい奴に転換してる。
 主人公の気持ちも最初は当惑と恐怖であったのが、最後に窓から身を投げるコピー人間を見て思わず心配するようになっている。
 短い中にもちゃんと展開があるんですよね。
 ん〜〜ん、何度読んでもいい話だ。
 (^^

名前: ユージーン ¦ 19:47, Thursday, Oct 02, 2008 ×


アイデア+1 描写ー1 恐怖ー1
オチが不満。
タンポポが脱皮するのは何故かとか、飛び去ったらだいぶ人目を惹きますよとか、ツッコミどころは色々あるが、内容的に怖い話にするよりこの方が良かったというのはわかる。
ただもっと展開のしようはあったと思われる。同じ植物にしても、他にももっといても良い。
菌類とか食虫植物とか。

名前: 戯作三昧 ¦ 10:45, Friday, Oct 17, 2008 ×


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