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開けエレベーター
最近ちょっと気になってる事がある。
まぁ、大したことないっていえばないんだが、あまり気持ちのいいもんでもないんだよな。

「なぁ、このマンションのエレベーターってさ、ボタン押さなくても勝手にドアが開くもんなの?」
台所で無花果を煮詰めている妻にふと聞いてみた。
「はぁ?言ってる意味がわかんないんだけど」
近所の人からもらった蜜柑ジャムがとても美味しかったので、最近自分でも色々と挑戦してるらしい。けど俺は煮詰める時のこの甘ったるい匂いがあまり好きではない。
「だからさ、1階のエレベーターホールで押すボタンだよ。俺が押そうとする前にスーってひとりでにドアが開くんだよな」

いつも開くわけではない。この新築マンションに越してきて半年になるが、これまで5〜6回くらいだろうか。それも決まって残業や飲み会なんかで遅く帰った時だけ。最初は偶然か何かかと思ったが、5回6回と続くとさすがにちょっと変だなと思うようになった。朝や昼に乗る時は勝手に開く事など一度もないというのもひっかかる。
一昨日、偶然乗り合わせた管理人のおっちゃんに思いきって聞いたみたが、やはりそんな機能は付いてないと言われた。
「でも自動ドアみたいで、手にいっぱい荷物持ってる時なんか楽でしょうねぇ」
共用廊下に置くでっかい観葉植物を必死に抱えながら、おっちゃんは何となく羨ましそうに笑ってた。
ただ、非常ボタンはどうもよく誤作動を起こすらしい。イタズラかと思い監視カメラでチェックしても誰かが押してる様子もない。新築でこれじゃさすがにマズイっていうんで、理事会と業者で今後どうするか検討中だそうだ。

「でもさ、でもさ、両手にいっぱい買い物袋とか提げてる時なんかだと、かなり便利じゃない?」
勝手に開く、という事から連想するのはまず最初はそれなのか?そういうもんなのか?
実際のところ、俺はあまりうれしくない。というか、イヤだ。押そうとしたらスーって、まるで俺より先に誰かが押してるみたいじゃないか。
もしくは中から俺が来るのを見て開けてるか…。

「ひょっとして!超能力なんじゃないの?」
「はぁ!?」
「開くときと開かない時があるって事はさ、いつも集中して念じてれば必ず開くようになるかもよ!」
結婚して5年になるが、たまにこういう訳の分からない事を言い出す。しかも嬉々として。超能力?有り得ないだろう。しかもエレベーターを開けるだけの能力って。やっぱり聞くんじゃなかったな。

次の日、飲み会で遅くなった俺は、酔っていたせいか何となくあれを試してみようかという気になった。誰も来ない事を確認しながら、
「開け!」
と念じてみる。同時に、ス―ッとドアが開いた。
「マジで!?」
思わず声が裏返る。やったぞ。ほんとに開いた。こりゃ、ひょっとするとひょっとするんじゃねーか。上昇する箱の中で俺は相当興奮していた。

それからは、朝となく昼となく夜となく、乗り込む際は必ず念じるようになってしまった。だが、どれだけ頑張っても開くのはやはり夜遅い時だけだ。しかも毎回という訳ではない。何でだろう。何か法則でもあるのか?

1ヶ月ほど経っただろうか。
「開け!」
いつものように真剣にエレベーターの前で念じる。と、ひとりでにドアが目の前で開いてゆく。
「よしっ」
これで3回連続成功してる。いい調子だ!ガッツポーズを取りながら箱に乗り込む。

ブ−−−ッ!

何だ?定員オーバーを知らせるブザーが鳴った。ドアも勿論閉まらない。
試しに自宅フロアの階数ボタンを押してみる。

ブ−−−ッ!!

変わらずブザーは鳴り続ける。俺しか乗ってないのに、だ。
諦めずに連打してみる。ダメだ、動かない。こんな時間に故障かよ、と思いながらもう一度階数ボタンを押そうとしたその時、ドンッと後ろから思いっきり外に突き飛ばされた。

「ヤセロヨデブ」

若い男のからかうような声が、前につんのめって倒れそうになる俺の耳に確かに聞こえた。と同時に、誰もいないエレベーターの中からドッと大勢の笑い声が沸き起こった。愉快で堪らないという風にゲラゲラゲラゲラと大笑いしている。
呆然とする俺の前でゆっくりとドアが閉まり、大勢の笑い声と共に空の箱は昇っていった。



07:29, Thursday, Sep 11, 2008 ¦ 固定リンク ¦ 講評(12) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(5) ¦ 携帯


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面白いけど物足りない。実話ならこれも有りだが、創作であるならもう少し踏み込んだ展開を期待したい。コミカルなオチのまま終わらせるのも良いけど、エレベーターに乗ったら降りられなくなってそちら側の住人にならざるを得なくなったとか、どこか背筋が冷たくなるよう .. ... 続きを読む

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これはもう、ラストのエレベーターのブザー音と「ヤセロヨデブ」に尽きる。この辺の描写が面白いのだが、物語は前半の念じて扉を開ける方が主になっている。勿体無い。もしくは、念じて開けた時だけ、乗り込むと気分が悪くなるなどの伏線があると良かった。かなり能天気 .. ... 続きを読む

受信: 21:15, Wednesday, Oct 01, 2008

■講評

アイデア +1
描写力 +1
構成力 ±0
恐怖度 ±0

前半部がちょっとしつこい。
怪異が小粒だが、「ヤセロヨデブ」なんて幽霊らしからぬ台詞が可笑しい。

名前: くりちゃん ¦ 09:49, Thursday, Sep 11, 2008 ×


普通は、管理人より先に妻に聞くだろう、と思ってしまった。更に、妻が超能力という展開にもって行くと否定をしていた筈なのに、あっさりと試して終いには浮かれる。結局、夫婦似た者同士ということか?
軽い感じで書かれているので、オチの印象も軽い感じに受け取れてしまう。前半から中盤までの部分でも同じような事をちょっとくどく書かれている印象を受ける。それならば、その辺を整理して最後の怪異にインパクトをつけた方が良かったと思う。

【アイデア】0、【描写力】0、【構成力】-1、【恐怖度】0

名前: 茶毛 ¦ 12:55, Thursday, Sep 11, 2008 ×


ああ…、これが実話なら良かったのに…。
結局、成功率がまちまちな理由とか、見えない誰かが何のためにわざわざ扉を開いてあげていて、何で急に突き飛ばされるはめになったのか等、展開的にも色々と気になるところ満載でした。

【アイデア】 0 【描写力】+1 【構成力】 0 【恐怖度】 0

名前: PM ¦ 20:10, Thursday, Sep 11, 2008 ×


ヤセロヨデブと笑いの大合唱には
笑いましたが…。
ちょっと、読みづらかったです。
幽霊に追い出された主人公に1点。

名前: ちゅん ¦ 23:14, Thursday, Sep 11, 2008 ×


う〜ん、ちょいとくどい。素直に笑えない。

【アイデア】0、【描写力】0、【構成力】-1、【恐怖度】0

名前: 尚休 ¦ 16:07, Saturday, Sep 13, 2008 ×


 実話臭くて実にいいねえ。
 こういうなにげない話って逆にこね回しちゃってなかなか書けないですよね。
 定員オーバーのブザーで理由はわかるんだけど、それがどう明らかになるのかって瞬間の緊張感がいい。
 また、主人公のバカバカしい能天気さがいきなり暗転するのもいいし、おばけが陰気な顔で出てこないのも良かった。
 適当に書かれているようで、実は丁寧にあれこれ考えられたんじゃないかと思います。

 たぶんね、冒頭の方に何にかこう、一滴、恐怖と言うか毒のエッセンスが落ちてると完璧だったんだよね。
 それが何かと聞かれても困るんだけどね。
 エレベーターの前に何か妙な物が落ちているとか、ドアが自然に開いた時には吐き気がするような何かのこげるような臭いがしたとか。
 この作品に渾身のアイディアをそそぐべきポイントはそこなんだよね。
 そこが成功すれば大成功になる。
 難しいけどね。

【アイデア】+1 【描写力】+1 【構成力】+1 【恐怖度】 0

名前: ユージーン ¦ 21:06, Wednesday, Sep 17, 2008 ×


前半がちょっと、くどいと思います。
「開け」と念じる当たりが妙に阿呆っぽいせいか、軽い仕上がり。
「ヤセロヨデブ」は面白かったのですが。
エレベーターでの怪異は実話では結構あると思うので、これは創作ということでもう一歩といったところでしょうか。

【アイデア】 -1 【描写力】+1 【構成力】 0 【恐怖度】 +1

名前: 華鹿 ¦ 21:21, Wednesday, Sep 17, 2008 ×


-長所-
・実話怪談風の展開で、話についていきやすいとは思う。

-短所-
・実話怪談でもエレベーター話はよく見かけるし、その内容も凄まじいものがあったりするのに対して、「開けエレベーター」ではそれらを上回る、創作ならではのオリジナルさがあまり見られなかったのが残念だった。
・主人公が酔っていた時点でのエピソードでは客観性に欠けるので、酔っていない時で話を進めた方が無難であったと思う。また、酔っていなくてもエレベーターが勝手に開く事自体が、大の大人が熱中するほどに不思議に見えないので(後半は変化が見られるものの)、この内容で話を盛り上げることが、やや困難であるように感じた。

【アイデア】0、【描写力】0、【構成力】0、【恐怖度】-1

名前: 廻転寿司 ¦ 16:06, Thursday, Sep 18, 2008 ×


完全にもてあそばれてたんでしょうね。期待させておいて叩き落とす。マスコミみたいだ。
読んで怖さはないけれどそんなエレベーターは乗りたくないな。

【アイデア】±0【描写力】±0【構成力】0【恐怖度】0

名前: 蓮 ¦ 01:07, Monday, Sep 22, 2008 ×


面白い。オチをこれにするのなら、恐怖がもっと欲しい。実話怪談ならこれでも通用するのですが。
折角の創作ですから、怖がらせて怖がらせて、最後に落とす、というのが読みたいですね。

発想・0 文章・0 構成・0 恐怖・0

名前: 暗沌子 ¦ 23:40, Friday, Sep 26, 2008 ×


エレベーターに閉じ込められるお話かと思ったら乗せて貰えなかったんですね。

もうちょっと絞った方が良かったかも。


【アイデア】+1 【描写力】0 【構成力】0 【恐怖度】0

名前: 猫塚イスマ ¦ 20:14, Saturday, Sep 27, 2008 ×


アイデアー1 構成+1
実話風の怪異を丁寧に書いてあり、それなりに面白さもあるのだが、やはり創作という点でがっかりしてしまう。

名前: 戯作三昧 ¦ 03:50, Sunday, Oct 26, 2008 ×


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